「患者さんのためになる臨床に直結した研究報告を」木下博之先生(東京都立墨東病院)
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木下先生の研究分野とその成果を英語で発表する意義について教えて下さい。
研究分野は老年病学および内分泌代謝学です。加齢に伴う内分泌代謝の変化はこれからの社会にとって重要性が高いと思っています。また現在の医学分野における公用語は英語ですので、医学的に貢献度のある内容であっても、それをきちんとした英語で発表しないとその成果を多くの人に役立てる事はできません。このためには自分が英語を勉強するのも大切ですが、洗練された英語については専門の英文校正者にお願いしております。
先生は医師としてお仕事をされながら同時に研究活動を行っていらっしゃいます。医師として、最新の研究論文を読むことはどのような意味があるのでしょうか。
臨床を行うに当たっては教科書的な記載のみならず、論文を検索して今後の方針を立てる時があります。この時は、基本的には論文に記載された結果が患者さんに再現される事を期待して今後の方針を立てます。近年は多くの論文が出版されるようになり、また論文をまとめたガイドラインも増え、それらが入手しやすくなりました。結果として現在の医療従事者は、患者さんの問題に応じて文献を検索し、その内容を吟味した上で今後の方針を立てるという機会に恵まれるようになりました。
私もこの恩恵を受けて文献検索をしていますが、臨床と文献を往復する中で、結果の再現性に乏しい論文が多いと感じるようになりました。それでも1990年くらいまでの論文は、細かい所で体裁に不備があっても大筋は正しく、結果の再現性は高いのですが、それ以降の論文は一見すると体裁は整っていても、結果の再現性が低いというのが私の印象です。このため最近の論文の成果をまとめたガイドラインも、臨床に直結しない部分があると感じるようになりました。また1990年頃から薬の副作用の論文が減ったのも、最近の傾向と言ってよいと思います。
既存の研究を参照するだけでは、臨床を行う上で十分とはいえなくなってしまったわけですね。
そのように感じるようになりました。そして私としては臨床に直結し、患者さんのためになる報告をしようと思うようになりました。また現在の医学分野における公用語は英語ですので、成果を発表する場合は英語で報告しないと、その内容が医学的に貢献度のある内容であっても多くの人に役立てる事ができないという結果になってしまいます。
このため医学に寄与しようと思った場合は、ある程度の英語の勉強が必要だと思います。しかし研究者は英語の勉強に時間を費やすよりも、研究の内容に重点を置いた方が、結果として多くの人に貢献する仕事ができることになると思います。このため研究者としては、英文校正者に理解してもらえるレベルの英文を書ければ良いのではないでしょうか。
木下博之先生のプロフィール:山梨大学医学部を卒業し、東京大学大学院の医学系研究科・医学部にて医学博士を取得。東京都健康長寿医療センター病院勤務、米国ハーバード大学マサチューセッツ総合病院留学等を経て、現在は東京都立墨東病院で医師として活躍中。Who’s Who in the World 2011を受賞。出版論文多数。
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