オルトメトリクスを利用して研究の影響力を示す:ケーススタディ
今回のケーススタディは、Scholastica とAltmetricの共同出版による無料電子書籍、「The Evolution of Impact Indicators: From bibliometrics to altmetrics(インパクト指標の進化:ビブリオメトリクスからオルトメトリクスへ)」から取り上げました。本書は、学術的議論や公共政策でオルトメトリクスを活用し、研究者が自らの研究の全体像をより包括的に表すための方法について説明しています。
本記事は、Altmetric
のマーケティング部長キャサリン・ウィリアムズ(Catherine Williams)氏と、Scholasticaのダニエル・パドゥラ(Danielle Padula)氏の共同執筆によるものです。
事例: テリー・モフィット(Terrie Moffitt)氏は、デューク大学の教授(Nannerl O Keohane University Professor)です。モフィット教授は、国立衛生研究所(NIH)と医学研究審議会(MRC)の各プログラム担当官に対して、自身の研究の幅広い影響力を示すために、自分の研究に関する注目度やオンライン上の評判について理解を深めた上で、そうした情報をレポートに含めるかどうかを検討することにしました。
対応:オルトメトリクスのデータを利用してみて、モフィット教授は、自分の研究を取り巻く多くの動きをこれまで見過ごしていたことに気づきました。2つの主要団体が発行した政策文書に自分の論文が引用されていることが分かったのです。このことについてモフィット教授は、「研究者ではない、立法や医療、教育面で実生活に影響を与え得る人々が、私の研究を仕事で利用していることを如実に示すデータ」であると考えました。それまでは、自分の研究がどれほどの範囲に広まって報道等で取り上げられているのかも、オンラインでどれほどシェアされているのかも全く分かっていなかったと実感しました。特にツイッターでは、現場の人々が自分の研究について議論していたため、「自分の研究インパクトの示し方を再考するべきでは?」と考えるに至りました。
モフィット教授の報告書を受け取ったプログラム担当官からは、オルトメトリクスを利用して別の切り口で研究の影響力を見出したことに対し、非常に肯定的なフィードバックが寄せられました。NIHのプログラム担当官は、「[このオルトメトリクスのデータは、我々の]予算報告書にとって有益な情報です」とコメントしています。
まとめ: オルトメトリクスを利用して自分の研究の影響力を示すことで、モフィット教授は時間を節約できたばかりでなく、自分の研究がどれくらい広まり、どのような媒体を通して拡散されているのかを知ることができました。この情報を使って将来のアウトリーチ戦略を改善することもできるでしょう。科学界で自身の研究がどのように受け止められているかを知る際、著者は統計や被引用数(統計が出るまでには長期間かかる)をダウンロードするか、他の研究者からのフィードバックに頼るのが一般的です。オルトメトリクスでは、以下のような点から、一歩踏み込んだ対応が可能となります。
- オルトメトリクスを利用することで、自分の研究に対する研究者からの反応だけでなく、より幅広い一般社会からの反応を知ることができる。
- 論文が発表された直後から情報が集められるので、被引用データが蓄積されるのを長い期間待つ必要がない。
- どれぐらいの人数が自分の研究を話題にしているかということだけでなく、その内容まで知ることができる。
AltmetricのOutreach & Engagement Manager、ステイシー・コンキール(Stacy Konkiel)氏は、エディテージ・インサイトのインタビューで、オルトメトリクスの利用による効果を以下のように的確にまとめています。
- 「社会的な影響力を知る目安としては、容易ではありませんが、その研究が政策立案者に参照されたか、あるいはマスコミに広く取り上げられたかということが挙げられます。また、自分の論文がツイッターやFacebookなどのソーシャルメディアでどのように取り上げられているのかを見れば、一般の人々が自分の論文をどのように受け止めているのか、そして人々に影響を与えているのかどうかを知ることができます」
- 「自分の研究がその研究分野にどのような影響を与えているかを知りたければ、自分の研究に対する査読や、他の科学者がブログであなたの研究について語っている内容、また引用された文脈を見てみるとよいでしょう」
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