アムジェン社、ネガティブな研究結果を公表して科学の自己修正力を向上

アムジェン社、ネガティブな研究結果を公表して科学の自己修正力を向上

米カリフォルニア州に本社を置く多国籍製薬企業アムジェン(Amgen)は、今年2月4日のプレスリリースで、期待通りの結果が得られなかった3つの研究を公表すると発表しました。このネガティブな結果は、(論文評価サイト)F1000(Faculty of 1000)が新たに立ち上げたプラットフォーム、Preclinical Reproducibility and Robustness(前臨床における再現性・頑健性)で公開されます。同社研究開発部門シニアバイスプレジデント(SVP)のサーシャ・キャム(Sasha Kamb)氏はこの決定の背景にある主な目的ついて、プレスリリースの中で「未公開の実験が繰り返し行われて心許ない研究結果を残すという無為な状況を減らし、真のブレイクスルーに注力することで、基礎的発見を新薬に応用する過程を効率化・迅速化したい」と述べています。


従来の公開方法では時間がかかるため、キャム氏が選んだのは、編集者が論文の内容を確認した後、査読の前にオンライン公開されるタイプのOAジャーナル、F1000Researchでした。これらの研究は、公開査読を経た後に査読者の推薦が得られれば、データベースに採録される可能性があります。F1000Researchの諮問委員会メンバーであるブルース・アルバーツ(Bruce Alberts)氏によると、Preclinical Reproducibility and Robustnessを開設したのは、公開されないことの多いネガティブな結果を研究者が共有することを促す意図があったと話しています


アムジェンは以前、再現性に関する議論の渦中にありました。同社の研究者は2012年、癌に関する画期的な論文53本のうち、47本が再現できなかったと断定しました。キャム氏は、今回の公開対象である3研究は、これらの論文とは関係ないものであることを明らかにしています。ネイチャーの記事にあるように、「1つ目の研究は、以前サイエンス誌に掲載された、癌治療薬がアルツハイマー病の治療に利用できる可能性を示唆した論文に対する批判論文を補強するもの、2つ目の研究は、ある遺伝子とマウスのインスリン感受性を関連づける過去の研究結果(アムジェンの研究者が行なった研究も含まれる)に異議を唱えるもの、3つ目の研究は、ある特定のタンパク質を抑制すると、神経変性疾患に関連する他のタンパク質の分解を増幅させるとするネイチャー論文への反論」ということです。キャム氏は、他社もアムジェンに追随してネガティブな研究結果を公表し、科学の進歩が促進されるようになることを望んでいます。

この取り組みには、支持を表明する研究者もいれば、懸念を示す研究者もいます。スタンフォード大学で再現性に関する研究に取り組むジョン・イオアニディス(John Ioannidisu)氏は、科学コミュニティはネガティブな結果や追試研究に対して依然としてオープンであるとは言えないと指摘しています。アムジェンの取り組みが成功するかどうか、今後が注目されます。


参考文献

If you fail to reproduce another scientist’s results, this journal wants to know (accessed February 5)

Biotech giant publishes failures to confirm high-profile science (accessed February 5)

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