オープンアクセス出版について:著者、エディター、学会、協会と共に

オープンアクセス出版について:著者、エディター、学会、協会と共に

キャロライン・サットン博士は、様々な分野を扱うオープンアクセスの学術出版社Co-Action Publishingの共同設立者です。出版社や図書館の団体とグローバルなネットワークで結ばれているサットン博士は、オープンアクセスの賛同者として有名で、専門家として活動もされています: オープンアクセスに関し数多く関わる中で、博士は、欧州委員会(European Commission)のような組織へ参加しており、報告者(Rapporteur)を務めています。博士はCo-Action を通じ、一流の研究グループや研究者と議論し、共同で多くのプロジェクトに取り組んでいます。ルンド大学図書館本部(Lund University Libraries Main Office)と共にOAジャーナル出版の成功事例ガイド(the Best Practices Guide to OA Journal Publishing )を開発しました。
博士はスウェーデンにあるウプサラ大学で社会学のPhDを取得しています。インタビューの最後の部分で博士は、オープンアクセスの出版社としてコミュニティの中で行動することについて細かく話しています。

 

オープンアクセスの出版社は、学術コミュニケーションに関する公的な論議の中で、以前は発言権に欠けていましたが、今では、以前よりずっと認められるようになっています。こうしたことが起こった、決定的な要因とは何だとお考えですか?  

この点に関しては、Open Access Scholarly Publishers Association (OASPA) の設立が重要なターニング・ポイントだったと思っています。当初、オープンアクセスの出版社は極めて少なく、私たちは学会の総会やその他の会議でお互いを探し出していました。コーヒーを飲みながら、うまくいっていること、いってないことについて話し合ったこともよくありました。オープンアクセスとそれを私たちがいかに定義しているかについて、学者やその他利害関係者に意識させるのを目的とした支援運動に、自分たちが深く関わっていることは認識していました。OAの市場を作る必要もありました。同時に、激しい議論が続けられ、その中で一般に出版社は均質だととらえられていることもわかっていました;私たちは、自分たちとはまったく別の意見・主張を表明している団体と一緒くたにされていました。2008年、主として公的な論議で発言力を得るために、OASPAが立ち上げられました。さもなくば出版社と研究機関の間に分裂の高まりが生じてきているときに、OASPAはその分裂を乗り越え、オープンアクセスを前進させるため資金提供者や図書館と協働することができたのです。

誰もが競争に参加し、オープンアクセスの定義とその実践の仕方を決める権利を持とうとしているため、発言力を持つという課題は今でも残ったままです。たとえばOASPAは様々な理由からクリエイティヴ・コモンズ・ライセンス(CC licenses)の使用を推奨していますが、他の団体は別のライセンスを導入しようとしています。

 

サットン博士と、もうお2人の方がCo-Action Publishingを設立されました。オープンアクセスの需要に早くから応えた団体のひとつとして、これは選び抜かれた名前だと思います。Co-Action Publishing についてお話していただけますか?
他の
OAジャーナルとはどこが違うのですか?

実際のところ、団体名については長いこと苦心して考えたものです。この春夏のインターナル・ブランディング計画を受けて、私たちは今もなおこの名前を選んで良かったと思っています。本社の使命は、最高のオープンアクセス学術出版の良い手本になることです。
つまり、綿密で、影響力があり、真剣に取り組み、適応力が高く、研究を通じて良い影響を世界に与えるため献身している著者や学会と提携する、そんな出版社になることです。本社は著者、エディター、学会、研究機関と共に行動することにより、この使命を実現させる、そうした認識を持っているということをCo-Action Publishingという名前によって、表現したいと思っています。

オープンアクセスがブームになる中で、多くの出版社が「大手になる」ことを選んでいます。これはおそらく、市場の一部を独占しようとするだけでなく、スケールメリット(規模の経済)を活かそうとする努力の一環として行われているのでしょう。本社は、全く異なる選択をしてきました。設立後約8年で出版したのは34タイトルのみです。小さな出版社だからこそ、有利な点がたくさんあります。中でも一番は、著者やエディターへサービスの提供ができるということです。これは、研究をその研究から利益を得るコミュニティに届くようするとき、本社が関与していることを示すものです。このことは、ウェブサイト今年の終わりに立ち上げる予定になっている新サービスで、もっとはっきりとするでしょう。

最後になりますが、本社は北欧の会社です。私たちが社内で、またビジネス・パートナーや著者とどのようにやり取りしているかは、北欧の企業文化の影響を受けています。フレンドリーで素直で、平等主義で、正直だと評されています; 長所と弱点をストレートにお伝えしようと思っています。品質に注目しているのはもちろんですが、実用的ですし効率も重視しています。

本社のもともとの設立者は、オーナーとして残っています。出版したタイトルが比較的少ないのは、私たち3名がそれぞれのタイトルの作業状態を良くわかっているということですし、ジャーナルやその編集チームとの間に、何百ものジャーナルを出版していたので持つことのできないような関係を築いているということです。

 

Co-Action での仕事や社外での仕事によって、オープンアクセス出版で活発な役割を果たしていらっしゃいます。読者に教えたくなるような興味深いプロジェクトは何かありますか?

学術出版界は非常に刺激的な時を迎えています。オープンアクセスへの「闘い」に多かれ少なかれ勝利した今、私たちはオープンアクセスを超え、学術出版とコミュニティのために新しい生態系とインフラを作ろうと努力しています。現在の仕事の大部分が、インフラ問題に向けられています。

親しいビジネス・パートナーのひとつにPublic Knowledge Project(PKP)があります。PKPと共同で、最近は PLOS のarticle level metricsをOJSのユーザー用にすることに関わっています。これの拡張として、Co-Action PublishingとPKPは、article level metricsのデータと報告基準(reporting standards)の共通ソーシングを試すためOASPAが始めたプロジェクトに参加しています。また、PKPと共同で we are also involved in the Dataverseネットワーク・プロジェクト (http://thedata.org)にも参加しています。これは、出版、引用、データ分析・保存ができるウェブ・アプリケーションです。プロジェクトを率いているのはハーバード大学のThe project is headed by the Institute for Qualitative Social Scienceです。

Co-Action Publishingは、最近立ち上げられた非公式のESACイニシアティヴの一部になっています。ESACとはEfficiency and Standards for Article Chargesを表しており、 現時点ではCopernicus Publications、ドイツ 研究振興協会(German Research Foundation)、マックス・プランク基金(Max Planck Foundation)、ビーレフェルド大学図書館(Bielefeld University Library)、Co-Action Publishing、Public Library of Science (PLOS)の代表が加盟しています。利害関係者全員にとって効率の良い総合的なシステムへとつながる論文処理費を管理するため、共通の基準をつくり実践する必要があるのではないかとESACの設立者間で議論がなされたのに続き、プロジェクトが開始されたのでした。

個人的には、Infrastructure Services for Open Access、つまりIS4OA (www.is4oa.org)にも関わっています。IS4OAはDirectory of Open Access Journals (DOAJ) とOpen Citations Corpus(OCC)を運営しています。IS4OA はアルマ・スワン、ラーズ・ビョルンスハウゲと私で、2013年の終わりに設立しました。DOAJ とOASPAを通じて、私は質的コントロールの問題と透明性について深く考えるようになりました。

 

 

サットン博士、ありがとうございました。

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