ジョー・ロイスリエン氏:「生物統計学者には最高の時!」

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ジョー・ロイスリエン氏:「生物統計学者には最高の時!」

ジョー・ロイスリエン氏は、テレビやラジオ、雑誌などのメディア全般に頻繁に登場している世界的に著名な科学領域のコミュニケーターです。
彼は、複雑なトピックや知識の普及、彼自身の研究を伝えるために講義をおこなっています。彼は、ノルウェー最大の国営放送局NRK1で、数学と統計学に関するシリーズ番組“Siffer”のホスト役を務め、ディスカバリーチャンネルでもいくつかの科学シリーズのホスト役も務めました。彼はまた、ディレクターのクリスチャン・ホルム‐グラド氏と一緒に独立系映画会社ブルドーザーフィルム「世界最大の数を追う」という数学に関連する短編映画を製作。Gullruten賞のベストニューシリーズ部門とベストライフスタイルシリーズ部門の2部門にノミネートされたNRK 1の数学シリーズ番組 “Digits” にも出演しました。

ロイスリエン氏は、数学に関する記事やテキストを多く執筆しており、その中には「今年の最も美しい本賞」を受賞し、ノルウェー医師会のジャーナルで「統計本の小さな宝石」と称賛された「数の物語」(2013年)という本もあります。


ロイスリエン氏はノルウェー人数学者であり、バイオ統計学者であり、医学研究者でもあります。また、ノルウェー科学技術大学(NTNU)の石油工学・応用地球物理学部卒の地球統計学博士でもあります。リスクホスピタル大学病院の研究アドバイザーを経て、オスロ大学の生物統計学科のポスドク研究員、及びノルウェー航空救急財団の主任研究員を歴任しました。ロイスリエン氏は、統計コンサルタント及び研究者として、ベストフォール病院トラストの肥満治療センターやスナアスリハビリ病院、ノルウェー公衆衛生研究所などの機関と数多くの医学研究プロジェクトに参画して来ました。現在は、スタバンゲル大学保健科学科の准教授で、オスロ大学の麻薬中毒研究センターと生物統計学部も兼務しています。
このインタビューは、3部に分かれており、最初の部分では、データと統計分析の特性に関する有意義な洞察が述べられています。

 


ロイスリエン氏が関心を持たれている研究領域は何ですか?
また、何がその領域に関心を惹きつけたのか、お話いただけますか?

「方法論」の章は、いかなる研究出版であれ最も重要な章です。それは明白です。結論は直接結果に基づいており、結果は適用した方法論と直接的に関係しているからです。そんなわけで、学究的な討論は殆どの場合結果についてではなく、むしろ方法論についてなのです。もしも方法論が成り立たないと、結果には何ら価値がないということになります。

私は統計学者として、いつも方法論を大切にしています。私は結局は医学研究者になったのですが、私が若かった頃は決して医学に惹きつけられていたわけではありません。
私は工学、数学、情報科学、統計学を学びました。10年前、地球統計学と石油エンジニアリングで博士号を取ったあと、私の妹はオスロ大学病院で統計調査アドバイザーの職に応募するようすすめてくれました。
私は机に座って、ある問題に取り組んでいた最初の頃のことをまだ覚えています。それは、実際に生と死に関する方程式が書かれた紙が机の上に散乱していて、それが突然私を襲ってきたのです。それは強力でした。私は、全く振り返ることはありませんでした。


医学と統計学に関する色々なトピックで多くの医学研究プロジェクトに参画して来ました。そして、私の研究に対する興味は徐々にデータの時間的分析に向かっていきました。それは例えば、複数の個人のための複数の時間的測定があれば、それを如何にして適切にデータ分析をするかということが最大の関心事でした。また、それだけでなく、長期の非線形的な増加や季節的影響、および週毎の効果の組み合わせなどのように、同時に時間的効果の多層モデリングを作ることも含まれていました。こういった解決すべき課題は、ノルウェー公衆衛生研究所、ノルウェー麻薬中毒研究センター、およびノルウェー航空救急財団などとの共同研究の中から発生しました。

医学研究分野も年を経るにつれて、情報収集もより洗練されて来ました。全てが無作為抽出の比較試験でテストすることは出来ないので、因果関係を樹立するためには、今では、研究デザインがとても複雑なデータとなって来ています。データ分析に必要な多くの統計モデルが、簡単すぎるか、或いは存在しないということで、この分野の研究方法論には色々な問題があるのです。それは生物統計学者にとっては好機到来と言えるでしょう。

 

生物統計学の領域における、今日のデータの特質についてその概要を教えていただけますか?

医学の領域で統計学者として働くことはとても素晴らしいことです。解決すべき課題のタイプは極めて様々で、遭遇することができるデータも様々です。
例えば、研究室における6匹のマウスの研究、50人の人々を2つのグループの内の一つに分けて実施する小さな無作為臨床実験、何千人もの個々の人々のための数十の時間的測定ポイントでの潜在的な健康リスクの大型観察による長期検査、無数の変数で測定する何百万人もの個々のレジストリー研究、2次元及び3次元の幾何学的空間でのがん細胞の放射線画像の分析、10,000もの異なる側面でのゲノミクスのデータ…といったものです。

医学の領域においては、データは、単にデータ収集のために収集されるものではありません。通常、私達は、テストしたい仮説や答えが欲しい疑問を持っています。従って、殆どの場合、情報収集は非常に具体的です。そして、殆どの場合、大変に時間がかかるものなのです。博士課程の研究生たちが、実際に分析のことを考え、結果を導き出すに至るまでに、データを収集するためだけで最初の何年かを費やすことになるでしょう。私は明らかに、増大するデータへのアクセスに関するするプロです。しかし、あなたが受ける側である場合は、容易にプロになれます。あなたが疑問に思っていた具体的な問題に対する答えを出すために、あなたの人生の何年もの年数を掛けてデータを収集しても、みんなとすぐにデータを自由に共有しなかったからと言って、保守的だとか利己的であると人々に言われるだけです。それは、研究データを如何にフェアーに公にするかということとは明らかに異なります。

データを収集するということが、大変に挑戦的であったとしても、「いかにして」という正にその手順自体は研究フィールドであると言えるのです。私は現在、病院での治療以前の医療に関する知識を深めるためにノルウェー航空救急財団と共同研究をしています。そこでは、データを収集することが中心的な問題です。甚大な事故のあと、最初にヘリコプターで現場に到着したとき、あなたが最初に取る行動は標準的な書式に様々な可能性のある交絡因子を書き留めることでもなく、患者の血液の中の様々なバイオマーカーの一連の基準値測定をすることでもないし、そんなことはとても出来ることではありません。しかし、患者が病院に着いた後になってこれらを測定し始めるということは、あなたは、患者が最初に病院にコンタクトをした時から病院に到着するまでの間、何も情報を持っていなかったということになります。それで、その間に行った処置が良かったのかどうかをどうやって知ることが出来ますか?

 

何を測定するのかとか、どのように測定するのかを見つけ出すためには、エンジニアや分子生物学者など、様々な研究領域の人々とのコラボレーションが必要なのです。それも、リアルタイムで、時には継続的に必要なのです。これによって、体がどのように色々な介入に反応するかについて解明する可能性を劇的に拡大させることでしょう。我々は、時間が極めて重要であるということを知っていますが、それが正確にどれだけ重要なのか分かっているでしょうか?

 

研究者のための一般的データマイニングについて、何か課題や危惧をお持ちですか?

チャンスはおかしなものです。チャンスは、我々自身が納得するよりもっと多くの仕組みからなっているのです。従って、私は、データマイニングの話になったら、警告を示すときに指を掲げようとする人々のグループに属します。統計分析は、「データの中にパターンを見つける」ことではないのです。データには常にパターンがあります。小さなパターン、大きなパターン、単純なパターン、複雑なパターン。より詳細に見れば見るほど、より多くのパターンを見つけることになるでしょう。

したがって、問題はあなたがデータを掘り返し始めた時にパターンを発見するかどうかではなく、むしろ、あなたが見つけたパターンがデータの中の実際の構造物を反映したものなのか、それとも単なる偶然なのかが問題なのです。統計分析は、不規則パターンから実際のパターンを識別する行為なのです。単なる偶然からの真の関係性。そして、最も重要なことは、統計は、あなたの結果に託する確信のレベルを定量化するのです。または、その逆でもあるのです。

私が2013年秋にオスロでTEDxの講演を依頼された時、私にとっては選りすぐりのトピックであった「十分の逆説」と題した講演をしました。この逆説とは、あなたが大きなデータセットの中から、偶然により多くのパターンやより複雑なパターンを発見するだろうというものです。しかし、同時に、我々は、大量のデータがあったというだけで、大きいデータセットの中から見つけたパターンを信頼してしまっているのです。

あなたが、データの中から掘り起こして分析するということは、何もしないことよりも弊害となる可能性があるということに気づくでしょうし、それには、総計学や科学的研究方法の勉強をそれ程する必要もないでしょう。今日の最大の課題は、データ不足ではなく、むしろ優れた分析が不足しているということです。

最近、ノルウェーにおいて、大きなデータセットのための統計手法を開発することを目標とした”BIG INSIGHT”と呼ばれる研究イニシアチブが進行中です。私はその成果に大いに期待をしているのです。

 

研究やジャーナル出版、基礎研究と応用研究、研究の再現といった様々な課題に対するジョー・ロイスリエン氏の見解が述べられている2番目のインタビュー記事も是非お読みください。 

 

 

 

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