研究を滞らせないために:壁を打ち破るためのヒント
自室で椅子に座っていることころを想像してみてください。デスクはきれいに片付き、目の前にはパソコンがあって、カフェインのおかげで頭もスッキリしています。静かな環境で、気が散るような雑音もありません。取り掛かる条件は完璧に整っています。それでも、あなたは論文を書き始めることができません。
頭の中をさまざまな想いがよぎります。何から書き始めればいいのか?アイデアはいくつもあるのに、どれもピンときません。手は動かず、頭の中は「?」でいっぱいです。「この問題に取り組むべきか?課題の一部がすでに解決済みなら、それとの違いを打ち出すことはできるだろうか?研究デザインはこれで十分か?研究テーマはそれほど有意義なものだろうか?そもそも私は本当にこの論文をまとめたいのか?」
もしあなたが「創造性の壁(creative block)」または「モチベーションの壁(motivational block)」と呼ばれるこうした状況に陥っているのなら、それはよくある現象で、対処法もあることを知っておきましょう。選ぶ対処法は、この現象の原因によって異なります。
具体的な対処法を以下で説明します。
目標を分割する
目標を持つことは重要ですが、出版やその後のことに気を取られていると、目の前のタスクに集中できず、かえって逆効果になる場合があります。それより、現時点でやるべきタスクに集中する方が効果的で現実的です。そのためには、目標を実現可能で無理のない量に分割して、少しずつ進めていきましょう。
「活性化エネルギー」を下げる
別のヒントとして、「活性化エネルギー」、つまり「行動に要する労力」を減らす方法があります。例えば、Google Scholarがまだなかった頃には、文献を探すために図書館へ足を運ぶことが1つの壁となっていました。つまり、資料を手に取りやすく研究しやすい環境を整えることで、行動への抵抗感をある程度減らせるということです。
そこでご紹介したいのが、研究者にとって必要なものがそろったプラットフォーム、Researcher.Life(リサーチャーライフ)です。文献検索、学習コース、原稿チェック、英文校正などのさまざまなサービスやツールにアクセスできるので、時間や手間を省きながら研究目標の達成を目指すことができます。
ワンストップの便利なプラットフォームを、日々の研究にぜひお役立てください。
「選択の麻痺(choice paralysis)」に対応する
研究に着手する前に、「選択の麻痺」に陥ってしまう可能性もあります。利用できるリソースが増え、オープンなデータベースがあり、前例のない事象がグローバルに起きている現在、研究テーマを絞ることは難しくなっているからです。
この段階で重要なのは、1つの研究が次の研究につながることを忘れないようにすることです。研究の理論的土台は、先行研究のレビューに基づいて築かれるものです。過去の文献を調べてみて初めて、自分なりの仮説が浮かび上がってくるのです。研究には、新しい条件やデータを用いて他者の研究を再現するものもあります。また、先行研究の結果によって関心の対象や方向性が変わることもあります。とにかく、始めてみないことには道筋を描くことはできないのです。始める前から明確にしようとしないことが大切です。
まずは探索的方法から始めることをおすすめします。これは、調査を進めて根拠がないことが分かってきた理論にこだわってしまうことを避けるためです。こだわってしまうと、本当に注目すべき理論に集中できず、大きな犠牲を払うことになってしまいます。
また、必要以上の労力をかけていないかも確認しましょう。データ収集、調査、校正・出版支援などのサポートを受けることも考慮に入れれば、研究者としての本領が発揮できる領域に集中できます。
状況に応じた戦略を立てる
モチベーション不足は感情面の問題なので、事実を検討してみても効果は得にくいでしょう。事実は論理的なものですが、その対極にある感情は論理をしのぐものだからです。そこで、研究に取り組む理由は何なのかを自分に問いかけてみましょう。学術界に貢献することが理由なら、その貢献が自分にとってどう役立つのかを感情面から検討してみる(つまり、その貢献を自分がどう感じるのかを考えてみる)のです。
煮え切らない感情があるなら、キャリア上のメリットといった論理的側面から考えるよりも、その感情について考えてみる方が、(抵抗感が完全には消えないまでも、)研究を進めやすくなるでしょう。なぜなら、論理的側面は自分に限った事柄ではなく、その時点で共感できる事柄かどうか分からないからです。
研究に参加してくれる集団を見つけるといった課題は研究の初期段階に多く見られますが、それによって「なぜ」(=研究を行う目的)を忘れてしまうことがあります。そんなときは、例えばこれまでのキャリアの助けになった研究者リストといったものが、当初の目的を思い出させてくれるでしょう。
望ましくない結果が出ること恐れる感情も、いたって自然なものです。仮説に思い入れを持てば、帰無仮説の棄却を望むでしょう。しかし、一見つまらなく思える結果が出て、帰無仮説が棄却されなかった場合も、科学の発展にそれなりの役割を果たします。パターンの欠如や有意なパターンが見つからなかったことを立証することで、今後の研究が誤った方向へ進むことや、存在しないパターンを仮定することを防ぐことができるからです。
オープンアクセスが普及して論文ページ数の制約が少なくなったことで、ジャーナルは新規性よりも方法論の健全性を重視するようになっています。これは多くの著者にとって「創造性という重荷」を軽減することにつながっています。しかし、あなたの研究が画期的なもので、「モチベーションの壁」と「創造性の壁」が付いて回るのであれば、実際的な側面に集中しましょう。例えば、収集データの分析ではなく計算などの単純作業に集中し、「壁」にひとまず背を向けておくのです。そうすれば、壁が消えたときにより複雑な作業に取り組むことができるようになるでしょう。
燃え尽き症候群を防ぎながら研究に創造的エネルギーを注ぎ続けるには、がむしゃらに頑張るだけでは乗り越えられないことがあります。研究者のためのツールとサポートを提供するResearcher.Lifeは、目標達成に向けて効率よく作業を進めるのに役立ちます。また、生産性を向上させ、出版のチャンスを高め、著名科学者から学べるなど、幅広い用途にご利用頂けます。Researcher.Lifeを活用して、#PowerOfMORE―もっとの力をぜひ体験してください!
―「メンタルの壁」や「創造性の壁」を打破するためにどのような戦略を取っていますか?皆さんの対処法を、コメント欄からぜひ教えてください。
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