論文の謝辞セクションの書き方
研究論文の中で、謝辞はもっとも書きやすいセクションです。そのため、論文執筆の指南本でも触れられていないことがよくあります。とはいえ、実際に執筆するときには慎重になる必要があります。謝辞で触れなかった人から怒りを買うケースや、謝辞の述べ方に不満を持たれるケースもあるからです。また、多大な支援を受けた場合に、謝辞を述べるか著者資格を与えるかの判断が難しいこともあります。
この記事では、謝辞の目的について説明するとともに、対象とすべき人、除外すべき人、書き方などに関するヒントを紹介します。
なぜ謝辞を述べるのか?
アカデミック・ライティングでは、業績を紹介することで謝辞とする伝統的な方法がありますが、これは研究論文では適切ではありません。論文の謝辞では、研究・論文執筆・論文出版のプロセスで受けた援助について記します。これは、論文の信頼性を高めることにもつながります。つまり、例えば研究計画や結果の分析で統計学者から支援を受けたことを記せば、ジャーナル編集者や査読者からの信頼を得やすくなりますし、校正者への謝辞を述べれば、言語、スタイル、形式にも注意を払っていることを示せるからです。
誰に謝辞を送るべきか?
謝辞を送るべき人は、おおまかに言うと、通常の職務範囲を超えて助けてくれた人、研究を進める上で不可欠だった人、自分に不足している専門性を提供してくれた人です。その中には、同僚やメンター(研究監督者)のほか、学生が含まれることもあるでしょう。助成金を受け取った場合は、それに対する謝辞も述べます。一部の助成機関は、論文で資金提供について言及する際の具体的な方法を規定しているので、既定がある場合はそれに従ってください。また、無料で利用できる資料やリソースを謝辞の対象とすることもあります。査読コメントが原稿の大幅な改善に役立った場合は、たとえ匿名でも、査読者を謝辞の対象としてもよいでしょう。
謝辞で言及した人には、表現に問題がないか確認してもらうことをお勧めします。書き方によっては、論文の内容を承認していることを意味する場合があるからです。
また、利害の衝突に関する声明で言及した対象については、謝辞で重複して言及することは避けましょう。
謝辞の対象とすべきではない人
一般的な書籍で見られる献辞や謝辞とは異なり、研究論文の謝辞には、(正当な貢献がない限り)両親、家族、友人は含みません。同様に、通常の業務の一環として作業を行なった人(検査技師やフィールドアシスタントなど)も除外します。 部門長や研究所長なども、形式的に謝辞を送る対象ではないので、謝辞を述べるのは、通常の範囲を超えて支援を受けた場合のみとします。
謝辞の書き方
事実に基づいて書き、大げさな表現は避けましょう。「The authors thank John Smith for advice on experimental design and statistical analysis(研究計画と統計分析にアドバイスをくれたジョン・スミスに感謝します)」のような書き方が適切です。Mr.、Ms.、Dr.などの敬称は基本的に使用せず(ジャーナルの規定を確認してください)、役職や称号にも触れません。「kind help(温かい支援)」、「eternally grateful(心から感謝する)」、「greatly indebted to(お世話になった)」などの表現は避けましょう。特定の著者による謝辞の場合は、「JS thanks ...」のように、イニシャルを使用するのが通例です。
謝辞を述べる順序は、知的貢献、技術的サポート、執筆サポートとなります。財政支援については最後に触れましょう。
謝辞の形式
通常、謝辞は5~6行程度の単一の段落として書きますが、ターゲットジャーナルの規定を確認してください。見出しは太字か斜体か、見出しの後にそのまま続けて書くか改行するかなども確認しましょう。また、論文本文の見出しに番号が振られている場合がありますが、謝辞のセクションには番号を振りません。特殊な書式は使わないようにしましょう。
謝辞は、論文の本文が終わることを示すものです。その後に続く参考資料は、また別のセクションということになります。
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