(2) EURAXESSなどの組織を活用して日本で共同研究を促進する方法とは

(2) EURAXESSなどの組織を活用して日本で共同研究を促進する方法とは

前記事(1)では、日本の状況を統計から概観しました。本記事では、日本(及び他国)の研究者たちが協力関係を築くためのネットワーク作りを目指す組織について、見て行きます。

 

今日、自分たちのネットワークを拡張して海外の研究者と共同研究をしようと考える研究者が増えています。このような研究者の成功は、自らの努力だけでなく、国や地域の支援体制にかかっています。日本の場合、共同研究の乏しさが問題であることが分かっています。日本の研究者には、共同研究者候補や潜在的機会に関する情報ルートが欠落しているのです。このため、流動性を高め、自分たちの国際グループを作るのに役立つ助成金を探すことも困難になっています。このため、研究者が流動性を高めるのにふさわしいフェローシップを探したり、高度な専門技術を持つ人材を募集したりする支援システムが欠如している現状は、日本の研究の進展を大きく阻んでいます。

このような場合、Euraxessのような組織が介入することで、日本と海外の研究コミュニティで、情報をより共有しやすくなります。EURAXESS – 移動する研究者は、研究者が、共同研究や助成金に関する情報にアクセスしやすくなるように、それぞれの専門に合わせて、個人のニーズに即した解決方法を無料で提供します。EURAXESSは、分野を問わず(社会科学も含む)、あらゆる職位(博士課程以上)、あらゆる国の研究者に、情報及びネットワークに関するサービスを提供します。

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日本がヨーロッパに注目すべき理由とは?

 

日欧の協力促進により、日本の研究が利益を受ける理由が、いくつかあります。

 

1.  ヨーロッパには確立された研究ネットワークがある。

2.  研究のための優れた基盤(インフラ)が存在する。(例えば、自然科学分野では最新の機器、社会・人文科学分野では大学院や研究所の枠組み、医学分野では著名な研究センターや病院、その他分野では研究グループなど)

3.  日本の研究者は、EU-28(欧州連合加盟国)及びヨーロッパ(例えば、Horizon 2020European Research CouncilMarie Skłodowska-Curie ActionsErasmus Mundus Programme、更にヨーロッパ諸国の国別のその他の助成金プログラムで、EU加盟国及び関連国向けのもの全て)双方の枠組みから、特別助成金プログラムに申し込む資格がある。

4.  日本がヨーロッパと共同研究を行うと、その他の国とも共同研究を行うことが可能になる。その結果、日本は研究基盤、スキル、才能という巨大なネットワークに直接アクセスできるようになる。

5.  欧州連合は28ヶ国の集まりであるため、文化的に日本と似ているところがある。日本の伝統的な決議プロセスとよく似た、合議による決議プロセスを好むところなどが、それに当たる。

 

EURAXESS Links Japan

EURAXESS Links Japanは、日欧の研究者が、日欧共同研究プロジェクトに適した助成金を探すこと、地域のネットワークを構築すること、世界を移動しながらキャリア・アップを図るための支援を受けることを目的とした、誰もが無料で利用できるプログラムです。研究者なら、あらゆる職位、分野、国籍が対象となります。EURAXESSは、駐日欧州連合代表部(Delegation of the European Union to Japan)、各EU加盟国と関連国大使館の科学技術部(Science and Technology divisions, S&T)、及び各種関連事務所や研究者団体と万全の協力体制をとり、日欧間協力の相乗効果を最大限に引き出そうと考えています。EURAXESS Links Japanの発案した取り組みのいくつかを以下でご覧ください。

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月刊ニュースレターとウェブサイト

このニュースレターは、毎月、科学技術関連のニュースや動き、助成金やフェローシップに関する重要情報、仕事と移動の機会に関する情報、更に研究者、管理者、そして日欧共同研究の出資者向けのイベントなどの概要を掲載しています。

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毎月、EUの加盟国と関連国(計40ヶ国)が主催するプログラム、及び日本のプログラムを応募期限と共に取りまとめ、リストにして提供しています。リストには、日本の研究者が参加できる(ヨーロッパの)プログラム、あるいはヨーロッパの研究者が参加できる(日本の)プログラム、また日欧の移動の機会やフェローシップの募集に的を絞った情報が掲載されています。ニュースレターには、毎号約50件ものプログラムが掲載されています!

ニュースレターを通じ、研究者はいつでも問い合わせをすることが可能です。新しい助成金政策に関する情報、研究機関での面白そうなイベント、あるいは求人に関する情報も探せる、双方向型(インタラクティブ)ツールになっています。

EURAXESS Links Japanのウェブサイトには、研究者の移動と助成金政策、研究関連動向、求人、今後のイベントなどに関する最新情報、そして将来の共同研究者検索など、研究者としての流動性を高めるのに役立つリンク集も掲載しています。

 

The EURAXESS Links Japanのイベント

EURAXESS Links Japanは、日本でのイベントも企画しています。イベントは、研究における日欧間の協力を促進するための、ネットワーク及び情報交換の場となっています。イベントには、年齢、専門、国籍を問わず、研究者であれば誰でも参加できます。ヨーロッパのプログラムや共同研究の機会に関する情報を得たり、グローバルな経験を積んだり、助成金申請書を書いたり、共同研究政策を申請した研究者の報告を聞いたり、あるいは打ち解けた雰囲気でネットワーク作りをしたりと、様々な機会が程よくミックスされています。求められている情報やネットワークに関するサービスを提供することで、研究者が自分のキャリアと研究プロジェクトを大きく発展させていく助けとなることを目指しています。

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定期的に開催されているイベントに、EURAXESS Science Slamがあります。これは、日本を基盤とする研究者のための科学コミュニケーション・コンテストです。同イベントでは、出場者は自分の研究を楽しくかつためになるような形で発表し、参加者による投票で勝者を決めます。勝者には、日欧共同研究に関連した賞品が授与されます。(ヨーロッパ旅行など)

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また、EURAXESS Shareという定期イベントもあります。これは、東京以外の地方(関西、九州など)で、研究者が他の研究者や管理者、あるいは共同研究者となる可能性のある人々と出会い、プロジェクトについて重要な情報を交換することを支援するイベントです。

最後に、Euraxess Links Japanは、日欧の様々な学術機関で、研究における日欧協力と研究者の流動性に関するセミナーも開催しています。

 

Euraxess Links Japanは、日本とヨーロッパの研究者が、より幅広いネットワークを構築し、共同研究、流動性、そして助成金などに関する最新情報を得ることを目的とした、Euraxess発案の取り組みです。しかし、その成功は、研究者自身の努力によるところが大きいといえます。研究者は、流動性を高め、より影響力を持つ国際的な共同研究グループで研究する機会を、自ら進んで開拓していかなければなりません。

更に詳しい情報は、japan.euraxess.orgをご覧ください。

 

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