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論文を投稿するジャーナルの選び方
論文の原稿の準備が済んだら、次は論文を掲載するジャーナルを選ぶ番です。ジャーナルを選ぶときには、正しい読者ターゲットにベストな形で研究成果を伝えられる査読付きジャーナルを選ぶことが重要です。これまでどんなジャーナルに論文を掲載してきたかが、直接的であれ間接的であれ、研究者のキャリア形成、職業上の評判、 研究費の獲得に影響を与えることは言うまでもありません。
どの査読つきジャーナルを選んで論文を投稿するか決めるにあたり、重要となる基準をいくつか挙げましょう。
論文の テーマとジャーナルの基本方針とが一致しているか?
ジャーナルが論文を不採択と判断するよくあるが避けられる原因は、論文とジャーナルの基本方針とのミスマッチです。
何といってもまずは、論文のテーマがターゲットとするジャーナルの テーマと合っているか判断しなければなりません。そのジャーナルが 焦点を絞っているのはどんなタイプの研究なのか考えましょう。理論研究 (Acta Biotheoreticaなど) なのか、応用研究 (Annals of Applied Biologyなど) なのか?ジャーナルが求めている論文の幅は広いのか、それとも非常に狭いのか?
アドバイス
「ジャーナルの基本方針」に目を通し、最近掲載された論文のタイトルとアブストラクトをよく読みましょう。そうすれば、そのジャーナルが関心を持っているトピックを絞りこむことができます。
通常、ジャーナルは、扱うテーマ領域について具体的に説明しているものです。さらにそのテーマ内でも、ごく一部の面に焦点を当てているでしょう。たとえば、HistopathologyとThe Journal of Pathology はどちらも評価されているジャーナルですが、同じ病理学というテーマでも別の側面に焦点を当てています。Histopathology は、外科・診断にかかわる組織病理学者にとって、実用的な面で役に立つことを目的としてきました。一方、the Journal of Pathologyには、ヒトの病気を引き起こす病態生理学的・ 病原論的メカニズムに関する論文が掲載されています。
最後に、自分が投稿したいタイプの論文がそのジャーナルで募集されているか確認しましょう。たとえば、論文が事例報告である場合、ジャーナルに事例報告が掲載されているかチェックするのです。そのジャーナルが自分が書いたタイプの論文の投稿を受け付けていないと、投稿しても100%の確率で不採択になってしまうでしょう。
アドバイス
ジャーナル数冊に目を通し、掲載されている論文の著者の所属機関がどこか確認します。あなたが東アジア出身の研究者だとしたら、執筆者のほとんどがアメリカ人であるジャーナルよりも、執筆者が様々な国から集まっているジャーナルのほうが、掲載される可能性が高くなります。
読者層、ターゲット層とは何か?
次の点を考慮しましょう
- 学際的ジャーナル。たとえば、公共政策に関する論文、もしくは看護師が患者をケアする方法を変えるような内容の論文である場合、広く、専門家ではない読者層をかかえているジャーナルを選びましょう。
- 専門誌。非常に専門的な論文の場合は、小さいジャーナルであっても、特殊な読者層をかかえるジャーナルを選びましょう。ぴったり合った読者に読んでもらえることが、広い層に読んでもらうよりも重要であることも時にはあります。
- 同じ分野の研究者の間でそのジャーナルはどのくらい知られているでしょうか?ベテランの同僚 に聞いてみると、そのジャーナルが研究者の間で広く読まれているか判断できるでしょう。
アドバイス
お気に入りのデータベースを使いキーワード検索を行いましょう。検索結果の一番上に、そのジャーナルが出てきますか?
目立つジャーナルか?
論文が掲載されたら、他の研究者があなたの論文を探しやすくなければなりません 。この点で、ジャーナルの知名度が重要な役割を果たします。
- 電子データベースに入っているジャーナルでしょうか?トムソン・ロイターのWeb of Science の索引に載っていますか?その分野固有のデータベースではどうでしょうか(EconLit、PsychINFOなど)?ジャーナルがこうしたデータベースで取り上げられていると、研究の知名度は上がりますし、論文の被引用数も増えるでしょう。
- そのジャーナルはインターネットで閲覧できますか?紙媒体で流通しているだけのジャーナルに掲載されても、研究に気づく人、読んでくれる人の数は非常に限られてきます。
アドバイス
大まかに言うと、一流のジャーナルの論文の不採択率は約90%で、平均的なジャーナルの場合は50%程度です。ただし、不採択率は誤解を招く恐れがあります2 3 。たとえば、掲載の可能性が高いのではないかと考え、 低めの層の ジャーナルに投稿する研究者は多いです。ところが、そうしたジャーナルも、投稿の数が増えるに従い不採択を多く出すようになり、不採択率も上がるのです。
そのジャーナルに掲載した論文を業績一覧に加えることで評判が上がるか?
ジャーナルの評判を重視する研究者もいます。考慮したほうが良い要因をいくつか挙げましょう。
- 編集委員会の委員。一流のジャーナルの編集委員会には、たいてい著名な研究者がいます。ジャーナルのサイトを見て、編集委員の名前を確認しましょう。その分野でよく知られている人がいるでしょうか?
- ジャーナルのスポンサー。その分野で有名な学会が所有・後援しているジャーナルですか?
- ジャーナルのインパクト・ファクターはどのくらいか?インパクト・ファクターは分野によって様々な値を取るので、インパクト・ファクターそのものを見るだけではだめです。同じ分野の他ジャーナルと比べてどうかを考慮しましょう。
- 年長の、ベテラン研究者と話をしましょう。彼らがいつも読んでいるのはどんなジャーナルですか?彼らは、レベルの高い論文が掲載されているのはどのジャーナルだと思っているでしょうか?
アドバイス
オンライン投稿システムがあるジャーナルは、郵送での投稿を求めるジャーナルよりターンアラウンド・タイムが早いものです。自分と同じ分野の研究者に、特定のジャーナルでの経験を尋ねてみましょう。それぞれのジャーナルがどんな仕組みになっているか、内部事情を知ることができます。
ターンアラウンド・タイムはどのくらいか?
- 査読期間。そのジャーナルは1年間に何号発行されていますか?月刊のジャーナルは、1年に1回しか発行されないジャーナルに比べると、迅速に査読してもらえる可能性が非常に高いです。投稿日と採択日を掲載しているジャーナルもあります。この2つを比べると、おおよそのターンアラウンド・タイムがわかるでしょう。
- 掲載までの期間(Publication delay)。オンライン版のジャーナルの場合、一度掲載が決まれば、そのジャーナルは論文をインターネット上に掲載しますか?そうだとすると、あとで紙媒体で発表される場合であっても、採択されてすぐに論文がオンラインで発表されるということです(事実上、発表論文とみなされます) 。早急に発表しようとしている方にとっては、オープアクセスが最善の選択かもしれません。
チェックリスト
投稿するジャーナルを選ぶときは、次の点に気をつけましょう。
論文のテーマは、ジャーナルが焦点をあてているテーマと一致しているか? |
投稿したい論文のタイプは、そのジャーナルが受け付けているタイプのものか? |
ターゲットとしたい読者層が読んでいるジャーナルか? |
同じ分野の研究者や同僚が一流と認めているジャーナルか? |
論文が掲載されるまでのターンアラウンド・タイムはどのくらいか? |
ジャーナルの発行は年に何回か? |
掲載料はどのくらいか? |
論文の長さと構成は、ジャーナルで認められているものか? |
まとめ
論文を投稿するジャーナルを慎重に選べば、不採択になる可能性を大幅に減らすことができます。準備段階としてどのジャーナルに投稿するか決定したら、投稿規程を読み、論文のフォーマット、語数、引用スタイル、写真の規程、掲載費用など、ジャーナルが課す制約を知っておきましょう。最終的にどのジャーナルにするか決定を下すのにきっと役立ちます。
参考文献
1. Ali J (2010). Manuscript rejection: Causes and remedies. Journal of Young Pharmacists, 2(1): 3-6. doi: 10.4103/0975-1483.62205.
2. Schultz DM (2010). Rejection rates for journals publishing in the atmospheric sciences. Bulletin of the American Meteorological Society, 91(2): 231-43. doi: 10.1175/2009BAMS2908.1.
3. Aarssen LW, Tregenza T, Budden AE, Lortie CJ, Koricheva J, Leimu R (2008). Bang for your buck: Rejection rates and impact factors in ecological journals. The Open Ecology Journal, 1(1): 14-19. doi: 10.2174/1874213000801010014.
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