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誠意はジャーナル編集者のためならず―著者への5つのヒント
[本記事はウォルターズ・クルワー(Walters-Kluwer)社の著者向けニュースレター、Author Resource Reviewに掲載されたものを、許可を得てここに再掲載したものです。
本記事は、Eye & Contact Lens誌の編集長を務めるテリー・モナハン(Terry Monahan)氏(文学修士)が執筆したものです。モナハン氏は、雑誌・学術誌の執筆と編集に30年以上携わり、マグロウヒル・ヘルスケア出版社(McGraw-Hill Healthcare Publications)とPLOS(Public Library of Science)で10年以上に渡って編集長を務めました。]
学術誌の編集者や査読者は、自分たちの仕事に誇りを持ち、論文の質を高めるために日々尽力しています。そのような専門家でも、複数のタスクを抱えて時間に追われる中でいい加減な論文を目にすると、うんざりしてしまうことがあります。そのような落胆が先入観になり、編集者にそれ以上論文を見てもらえなくなる ― そんなリスクを負いたい人はいないはずです。しかし、ジャーナルは容赦しません。
Eye & Contact Lens 誌は、論文の執筆訓練がまだ不十分な若手研究者や博士課程の学生からの投稿を積極的に受け付けています。論文が査読にたどり着くまでには、指示を含むコミュニケーションが3回程度繰り返されることもありますが、この過程を辛抱強く乗り越えた著者は、多くを学ぶことができます。ジャーナル側にとっては手間のかかる作業ですが、査読のプロセスがスムーズに進行することにもなるので、全員にメリットがあると言えます。論文が最終的にアクセプトされなかったとしても、次に書く論文は、格段に質の高いものになるはずです。このような先行投資は、ジャーナルに投稿する著者のすそ野を広げることに繋がり、論文の質の向上も見込めます。
とは言え、このような取り組みが必ずしも功を奏すとは限りません。ジャーナルの投稿規定や修正(リライト、校正、編集)の要求をことごとく無視する著者は、編集者に悪い意味で記憶されることになり、「この著者の論文は無視するように」との通達が共有される可能性もあります。最初の段階で編集者を味方に付けておくことは、何よりも重要なのです。
以下のヒントを参考にして目の前の壁をできるだけ低くし、出版への道を開きましょう:
1. 正しい英語を使う
英文誌に投稿する場合、丁寧な文章で書かれていて、句読点の誤りがなく、英語が校正済みであることは最低条件です。非英語ネイティブの著者なら、投稿前にネイティブスピーカーや英語編集者、英語校正サービスの力を借りて、レビューと修正を行う必要があります。どれほど内容が良くても、言語が不明瞭な論文は、ジャーナル編集者から優先順位を下げられてしまう場合があります。
2. 論文の価値をアピールする
編集者は、投稿された論文がなぜ重要なのかを知りたがっています。研究や視点の独自性がどこにあるのかが、カバーレターやイントロダクションで明確に述べられていますか?テーマが難解なら、そのように伝えるべきですし、その妥当性を説明する必要があります。臨床研究であるなら、その新規性と妥当性を明確に説明しましょう。編集者から新規性がないと判断された論文はリジェクトされてしまう可能性がありますが、その判断が間違っている可能性もあります。カバーレターとイントロダクションで、自分の考えを可能な限り盛り込むようにしましょう。
3. 編集者に論文を読んでもらえる努力をする
ジャーナルは、扱っている対象範囲、テーマ、論文の種類や、著者向けの詳しい投稿規定を用意しています。ターゲットジャーナルとの関連性を示す魅力的なタイトルやキーワードを使用することで、編集者の興味を引くことができるでしょう。ただし、編集者は、本文を読むまでもなく、質の悪い論文を見抜けるものです。たとえば、参考文献のフォーマットが不適切であれば、その論文は真っ先に弾かれてしまいます。ジャーナルの投稿規定に従っていない論文は、リジェクトの筆頭候補に挙げられます。
投稿規定は、論文執筆時のガイドとして、また投稿前の最終チェックリストとして活用しましょう。何か問題があれば、編集者に連絡を取り、その都度解決するようにしてください。編集者の連絡先は、ジャーナルの投稿ページの投稿規定に記載されています。
4. 自己剽窃に注意
「剽窃(盗用)」は、他人の成果物を自分の成果物として提示することとして広く知られています。一方、「自己剽窃」は、剽窃と同様に研究不正とみなされる行為でありながら、その認知度は決して高くありません。
多くの学術雑誌(Eye&Contact Lens誌を含む)で使用されている剽窃防止ソフトを提供するiThenticateが発表した白書では、「自己剽窃とは、自身の過去の論文の全体または一部を再利用すること」と定義されています。つまり、著者が自分で自分を「剽窃」することです。自己剽窃の問題は、原著論文を保護する著作権法から生じるほか、原著論文とその関連論文が未出版であることを著者が出版社に保証することから生じます。
この問題は、あくまで「引用」の範囲として認められる場合と、「剽窃」として出版社への著作権侵害に該当する場合の線引きが難しく、多くの課題が残っています。明確に定義することができないため、出版社と編集者の間でも、どれくらいのテキスト量を認めるべきかについて意見が異なっています。著者が自著論文を引用する場合は、その量を制限するなどして慎重に行う必要があるでしょう。出版社は、剽窃検知ソフトを使用して、(自著論文であるか否かに関わらず)過去の論文からの過度の引用の発見に努めています。これを踏まえて、論文は慎重に執筆し、リジェクトされるリスクを軽減しましょう。
剽窃と自己剽窃の詳しい情報については、出版規範委員会(COPE)のウェブサイトをご覧ください。著者と編集者向けの、検索も可能な便利なリソースです。テキストの再利用の限度やオーサーシップに関しては、Chicago Manual of Styleをご覧ください。
5. 査読者の各コメントに丁寧に対応する
査読プロセスは、研究の進め方、結果の示し方、そしてその結果の意義を明確に説明して学術的価値を付与する最善の方法を示してくれる、豊かな情報源です。査読に回されるのは、編集者が価値を見出した論文だけです。そして、編集者が査読を依頼するのは、論文を慎重に評価できる専門性と能力を持つ、信頼のおける査読者です。
論文の修正を依頼されたら、査読者からのコメントの1つ1つに丁寧に対応しましょう。修正を加えた箇所を具体的に示し、そのテキストをハイライトしましょう。修正した論文が編集者にとって分かりやすいほど、著者への信頼は増し、追加の修正なしでアクセプトされる可能性が高まります。
何より重要なのは、できる限り編集者の興味を引き付けること、編集者を尊重する意味で論文を丁寧に執筆すること、査読で指摘された点を真摯に受け止めることです。これらのことを守れば、アクセプトまでの道もスムーズになり、胸を張って論文出版にこぎつけられるでしょう。
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