助成金獲得のチャンスを高めるための11のヒント

助成金獲得のチャンスを高めるための11のヒント

研究資金をめぐる競争は苛烈です。どうすれば激しい争奪戦を勝ち抜いて助成金を獲得できるでしょうか?過去の記事では、レビュアーが助成金申請書のどこを見ているかについて説明しました。今回は内容をさらに掘り下げて、助成金獲得のチャンスを高めるための11のヒントを紹介します。

 

ヒント1: 募集内容を精査する。どれほど優れた技術があっても、募集内容に合っていなければ即時却下となり、資金の提供を受けることはできません。助成金の募集要項には、求める研究像が詳しく書かれています。その説明をよく読んで、自分の研究アイデアが募集内容にふさわしくないと思われる場合は、応募を控えましょう。ふさわしいと判断した場合は、自分のアイデアが募集要項のどの部分にどのように対応しているかのを、申請書の中で詳しく説明しましょう。

そもそも、資金調達の機会はどこで見つければいいのでしょうか。米国に拠点があれば、「grants.gov」で募集一覧を確認できます。国立衛生研究所(NIH)、国立科学財団(NSF)、航空宇宙局(NASA)などの各機関のWebサイトでも確認できます。国や地域の機関を調べて、まずはどのような募集あるのかを把握しましょう。Google検索で、「funding for female chemists(女性化学者向けの助成)」、「grant opportunities in pesticide detection(農薬検出のための助成)」などのフレーズで調べる方法もあります。

どのような募集があるのかが分かったら、申請期限とともにリストアップして、どれに応募するかを決めましょう。申請は一度に1つにすることをおすすめします。複数の申請書に同時に取り組むと、混乱、燃え尽き症候群、ストレスにつながり、結局どれも通らないという結果を招きやすくなるからです。

 

ヒント2: 募集担当者に相談する。申請書を書き始める前に、募集の担当者に相談してみましょう。担当者の氏名と連絡先は通常、募集要項に記載されています。事前に相談するメリットは、自分では募集要項に合っていると思っている研究アイデアが、実際にそうなのかどうかを判断してもらえる点です。また、募集内容応じて研究を微調整する方法について、ヒントが得られることもあります。コツとしては、できるだけ担当者に多く話してもらい、アドバイスによく耳を傾けることです。担当者として「こう書いてください」とか「これは書かないでください」などと直接的なことは言えないはずですが、「この分野に注目すると面白いかもしれません」とか「この応用方法が関連しているようですね」といった助言を引き出すことができるかもしれません。最初はメールで連絡するのがベストです。研究アイデアを簡潔にまとめたもの(1ページ未満)を記載し、募集要項とのマッチングについて電話で相談したい旨を述べましょう。対面での相談が可能なら、より理想的です。担当者は各分野の主要な会議に出席することも多いので、そうした場での面会を設定することも一案です。

 

ヒント 3: 実際の助成を受けた研究の申請書をチェックする。応募を考えている助成団体から実際に資金を得た研究の申請書を探して読んでみることを、強くおすすめします。こうすることで、申請書を作成するときの勘所が分かり、どのような研究に資金提供が行われるのかの傾向を把握することができるからです。資金提供を受けた申請書の要約版は、オンラインで見つけることができます。申請者本人に連絡すれば全文を入手できるかもしれませんが、知的財産や研究アイデアを外に出したくないと考える研究者も多いので、全文を入手することは難しいかもしれません。

 

ヒント4: 申請手順をよく理解する。このステップは非常に大切です。申請書が受け付けられると、まずはレビュー以前の問題がないかどうかがチェックされます。募集要項に沿っていなければ、レビューに至る前に却下されてしまいます。このような状況を避けるためにも、募集要項はよく読み、すべての指示に従いましょう。

 

ヒント 5: オンライン申請の準備を早めに行う。オンライン申請のための設定に手間取るケースがあります。多くの場合、grants.govやresearch.gov(米国を拠点とする場合)からの申請が可能ですが、NSF Fastlane (https://www.fastlane.nsf.gov /)やNIH website for eRA Commons (https://public.era.nih.gov/)といった個別の機関ウェブサイトも必要になるケースがあります。助成金申請においては、内容以外の準備にかかる時間を約30時間とする試算もあります。やや大げさな試算かもしれませんが、初めての申請ではこれくらいかかることを想定しておきましょう。

 

ヒント 6: 所属先の支援部門に相談しながら現実的な予算を立てる。所属機関の研究支援部門が、助成金募集のための予算作成で豊富な経験を持っていることがあります。説得力のある妥当な予算を作成するために、そのような部門があれば、ぜひとも力を借りましょう。支援スタッフは多くの研究者をサポートしているので、時間に追われず丁寧な予算作成ができるよう、早めにコンタクトすることをおすすめします。研究以外の側面(略歴の書き方や、施設やリソースおよび機関についての説明など)でも有益な助言をもらえることがあるので、アドバイスを求めてみてください。機関独自の対応として、助成団体への申請期限よりも早い提出期限を定めてサポートしていることもあるので、期限があれば必ず守りましょう。

 

ヒント7: 割り振りが不適当な場合は担当者に連絡する(NIHの場合)。NIHは、提出された申請書がどの研究セクションで審査されるかを知らせてくれます。割り振られたセクションが自分の研究にふさわしくないと思ったら、担当者に連絡を取り、なぜそのセクションが適切ではなく、別のセクションがふさわしいと考えるのかを説明しましょう。資金提供を受けられるかどうかは、審査を行う部門にも大きく左右されます。適切な決定が下されるよう、あらゆる機会を逃さないようにしましょう。

 

ヒント 8: 再提出時は前回のフィードバックに対応する。再提出の場合は、初回の提出で受けたすべてのフィードバックについて十分な検討を行なってください。NIHの場合は初回と同じレビュアーが担当する場合が多いようですが、他の機関では、別のレビュアーが担当するようです。いずれにせよ、指摘されたすべての点を十分に検討し、それらにどのように対処するかを決定する必要があります。変更点は、下線や欄外の注を使うか、もしくは変更箇所をまとめた別紙を用意するなどして、何らかの方法で示します。(変更箇所を示すために赤色のフォントを使うことはおすすめしません。)再提出時のレビュアーが初回と違う場合も、初回で出された指摘は有効です。もしも新しいレビュアーが前回の指摘に同意しなかったとしても、フィードバックに真剣に対処したことを示すことが、助成の決定につながります。

 

ヒント9: レビュアーのことを考える。レビュアーは一度に多くの申請書(8~15件程度)を担当することが多いため、膨大な作業に追われることになります。疲労のせいで重要なポイントが見逃されることのないよう、レビュー作業を楽にする配慮をしましょう。たとえば、一般的でない略語の多用は避けましょう。見慣れない略語が多いと、その意味をいちいちチェックしなければならないからです。また、レビュアーが申請者のウェブサイトにアクセスして出版物をチェックすることはないので、レビューで必要な情報はすべて申請書の中に含めるようにしましょう。文献や過去の作業を参照する場合は、資料に当たってもらうことを期待するのではなく、参照先の結果を簡潔にまとめましょう。専門的内容のすべての目的について、1) 期待される結果、2) 科学の進歩にどう貢献するか、3) どのような応用例が考えられるか、がレビュアーに伝わることを心がけましょう。提案内容が科学の進歩にどう役立つのかをレビュアーに考えさせるのではなく、申請者自身がしっかり考えていることを示し、明快な言葉で述べましょう。

 

ヒント10: レビュアーになる。多くの機関では、キャリアの浅い研究者にもレビューを行う機会を与えています。これらの機会を利用して、実際の審査がどのように行われているのかを直接学びましょう。経験に勝るものはなく、そのような経験が資金調達の可能性を高めます。

 

ヒント11: がっかりしすぎない。助成金申請が却下されても、落ち込みすぎしないようにしましょう。そもそも、却下される申請が大半なのです。資金調達の機会は他にもあり、また応募することは可能です。また、多くの場合、フィードバックに対処してから再提出することができます。くじけずに挑戦し続けてください!

 

参考資料
https://report.nih.gov/success_rates/Success_ByIC.cfm 

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