ニュートリノと原子核の相互作用を初めて検出
私たちは、ニュートリノと呼ばれる何兆もの微細な粒子に囲まれています。粒子の中でもっとも謎が多いとされるニュートリノは、絶え間なく地上に降り注ぎ、光速で私たちの体を通り抜けたかと思うと、跡形もなく宇宙空間に舞い戻っていきます。この粒子の相互作用の可能性について、40年前から多くの物理学者が予測していましたが、現在に至るまでそのエビデンスは得られていませんでした。そんな中、この相互作用を検出できる新たな方法が発見されました。オークリッジ国立研究所(ORNL)の研究者らが40年前の予測を実験的に証明することに成功し、その結果をScience誌で発表しました。
さらに興味深いことに、この相互作用の検出に使用されたのは、巨大な検出器ではなく、壺程度のサイズの装置でした。研究では、3種類のニュートリノ(電子、ミュー、タウ)が原子核に跳ね返ることが確認され、3種すべてが異なる相互作用を示すことが明らかになりました。これらの相互作用は稀にしか起きませんが、ニュートリノを観測するための唯一の手段となっています。
この発見を、多くの物理学者が歓迎しています。マサチューセッツ工科大学の理論物理学者で、ニュートリノ原子核コヒーレント弾性散乱(coherent elastic neutrino-nucleus scattering)理論の提唱者であるダニエル・フリードマン(Daniel Freedman)名誉教授は、「私の43年前の理論が実証されたことにとても興奮している」と述べています。今回の発見は科学の大きな進歩であり、より高度な研究、ダークマターの探索、核不拡散防止の土台となるものです。
DOI: 10.1126/science.aao0990
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