引用測定はどのように研究のインパクトを測るのに役立つか

引用測定はどのように研究のインパクトを測るのに役立つか

近年では、多数の研究グループが、出版した論文のインパクトを測る引用測定を発展させるための取り組みに自主的に取り掛かってきました。 ジャーナル・インパクト・ファクターは、ジャーナルの評判を測るためのよく知られた測定方法です。しかしながら、世界中の科学者にとって重要な質問である「どのようにして研究者の影響力と研究のインパクトは測れるか?」ということについては答えていません。これに関する最も重要な大発見の1つは、発明者であるJorge Hirschの名前がつけられたh指数 (h-index) の導入の達成です。
 

研究者のh指数は、他の論文に引用された回数が少なくともn倍ある出版論文の数nのことを指します。たとえば、もし研究者が出版した23つの論文のうち、16の論文がそれぞれ16回以上引用されたとしたら、その研究者の指数は16になります。

 


どのようにしてh指数は算出されるか?

下記のフローチャートはh指数を測定するための簡単な方法を示しています。

 

研究者Aのh指数の測定例です。10の論文を出版したAの指数はこのようになります。


 
 

この表では、シリアル番号が引用回数よりも低くとどまっているか、もしくは同等である8になり、これが1番高いポイントとなります。このポイント以外に、シリアル番号が引用回数を超えれば、その論文は後に少数のみの被引用がなされた、もしくはインパクトが低いということを意味します。このような論文は、全体的な研究者Aのインパクトに著しい貢献をしなかったとされ、軽視されます。このように、研究者Aのh指数は8です。



さらに詳しいh指数についての説明

良い研究者は高度なアウトプットと影響力を持つべきという原理とともに、h指数は研究者のアウトプット(論文出版)の最適なバランスと、インパクト(被引用回数)を獲得しようとします。引用算出のように、h指数は完璧ではありません。次のリストはこの賛否両論をあげたものです。2

 

長所短所
h指数は客観的で、尺度を測りやすいh指数は研究のアウトプットと引用パターンにおいて、専門分野に基づいたバリエーションの義務を
負っているので、科学者は専門分野をこえて比較することに使用できない
ジャーナル・インパクト・ファクターよりもさらに研究のインパクトを正確に測るアウトプットとインパクトの両方は時間の経過をともなうので、若手研究にとっては不都合
引用総計、論文あたりの引用数、高い引用数の論文などのような単独の数を計算できる。なぜならアウトプットとインパクトは連携しているからすべての著者には平等の評価が与えられるので、共同研究者と彼らの個々の貢献の数を見落とす
引用回数が低い論文は除外されるので、不正確な誇張されたスコアをもたらさない自己引用を無視できないので、誇張されたスコアへ導くことがある
シニア研究者にとっては強い論文記録となるので役立つ。研究者の研究とインパクトの最もポジティブな観点を示す高い被引用回数の論文を軽視するので、高いインパクトの論文を持つ研究者は、多数の低いインパクトの論文を持つ研究者と似たh指数を持つことになる


 

 


研究者のインパクトのための引用算出の代用

h指数に本来備わっている短所を克服するために、h指数とは異なる別の指数も提唱されています。これは単独またはh指数スコアと連携して使うことができます。いくつかの測定の概要と、どのように使用すればいいのかを下記に示しました。

  • g指数: Egghe3 は、gとして受理された被引用回数が少ない順番から位置づけられた論文をg指数として定義しています。少なくとも、g2の引用回数を持つトップのg論文が最も高く位置づけられたのがgです。 h指数とは違い、g指数は高い被引用回数の論文により比重を割り当てるので、「一度、トップのh指数の論文に属すれば、その後の引用はもはや数えられない」という問題を克服しています。4g指数の不利な点は、かなり高い被引用回数をもつ単独の「強い影響を与える論文」が、相当の価値をつりあげるという点です。
     
  • hg指数: この指数はh指数とg指数の幾何学的な意味として算出したもので、両方の個々の測定の平均として捉えることを定めています。また、h指数あるいはg指数の個々よりも粒度を先導しています。5
     
  • m 指数: h指数とともにHirsch1 によって提唱されたm指数は、科学者の初の論文以降の年数によって分割したh指数スコアのことです。

上記に加えて、個々の研究者のアウトプットの尺度を測るために提唱された、異なったアプローチを採用したe指数6、The Individual h-index7、R-AR指数8などの他のいくつかの指数もあります。しかしながら、特定の単一数測定基準のための、一般的なコンセンサスは今のところありません。

 

引用測定を使いこなしましょう


引用指数を計算するとき、自分が出版した論文と、様々なデータベースを使って探した引用データをリスト化することを覚えておきましょう。もし、1つのデータベースのみを使ったなら、低いh指数が生じるかもしれません。なぜならそれぞれのデータベースは異なったレベルの指数を持っており、いくつかの引用研究は自分が参照したそのデータベースには現れてはいないかもしれません。

引用分析に必要なデータは、アカデミック論文を指し示し、引用文献を明確にする無料のデータベースGoogle Scholarから抜き取ることができます。研究基準の正確な描写を提供し、個人の測定基準の限界を無効にするため、測定基準の組み合わせを使ってみましょう。無料の「Publish or Perishソフトウェア」9はGoogle Scholarから回収された引用データを分析し、様々な引用測定基準を計算するためにそのデータを使用します。

一度、科学的なパフォーマンスを測定したら、被引用回数の測定基準をアップデートすることが重要です。もし新しい引用が自分の論文に追加されたなら、定期的に関連する引用トラッキングデータベースでチェックしましょう。10引用記録をアップデートすることは、やってもやらなくてもいい研究活動の一部ではありません。今日ではむしろ研究者の採用や雇用期間、研究費を決定するために必要不可欠な情報となっています。


インパクトの追加測定

上記にあげた引用測定基準とはまた別に、論文レベルの測定基準はますます有名になりつつあります。Public Library of Science(生物医学研究がメイン)や、ArXiv(物理学研究がメイン)などの出版社は、HTMLページビュー、PDFダウンロード、XMLダウンロードの観点から、各論文のオンライン・トラフィックの無料データを供給しています。また、CiteULikeやConnoteaなどが提供するソーシャルブックマークやコメントも、質的な研究インパクトの指標として使うことができます。

結論

あなたの研究者としての立場は、行っている研究のインパクトによって決まります。また、世界では研究のインパクトを測定する新しい方法を探し続けています。科学の引用や、その他のインパクトの測定における新しい発達に遅れずについていけば、あなたにとって最高なメリットとして使うことができるでしょう。

  • JE Hirsch (2005). An index to quantify an individual’s scientific research output. Proceedings of the National Academy of Sciences USA, 102: 16569-16572.
  • S Alonso, FJ Cabrerizo, E Herrera-Viedma, F Herrera (2009). h-Index: A review focused in its variants, computation and standardization for different scientific fields. Journal of Informetrics, 3: 273-289. 
  • L Egghe 2006, Theory and practise of the g‐index. Scientometrics, 69: 131‐152.
  • L Bornmann, R Mutz, H Daniel (2008). Are there better indices for evaluation purposes than the h-index? A comparison of nine different variantsof the h-index using data from biomedicine. Journal of the American Society for Information Science and Technology, 59: 830-837.
  • S Alonso, FJ Cabrerizo, E Herrera-Viedma, F Herrera (2010). hg-index: a new index to characterize the scientific output of researchers based on the h- and g-indices. Scientometrics, 82: 391-400.
  • Zhang C-T (2009). The e-index, complementing the h-Index for excess citations. PLoS ONE 4: e5429. doi:10.1371/journal.pone.0005429. 
  • Batista PD, Campiteli MG, Kinouchi O (2006). Is it possible to compare researchers with different scientific interests? Scientometrics, 68: 178-189.
  • Jin BH, Liang L, Rousseau R, Egghe L (2007). The R- and AR-indices: complementing the h-index. Chinese Science Bulletin, 52: 855-863.
  • Harzing AW (2007). Publish or Perish, available from http://www.harzing.com/pop.htm. 
  • Dodson MV (2008). Research paper citation record keeping: it is not for wimps. Journal of Animal Science, 86: 2795-2796.

学術界でキャリアを積み、出版の旅を歩もうとしている皆様をサポートします!

無制限にアクセスしましょう!登録を行なって、すべてのリソースと活気あふれる研究コミュニティに自由に参加しましょう。

ソーシャルアカウントを使ってワンクリックでサインイン

5万4300人の研究者がここから登録しました。

Found this useful?

If so, share it with your fellow researchers


このコンテンツは「論文の出版後」ステージに属しています。

論文が出版されましたか?無料の個別コーチングで今後の対策を立てましょう。