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インパクト・ファクターがすべてか?
インパクト・ファクターは引用の尺度として一番古く、間違いなく一番広く使われている尺度ですが、かつての栄華はいくぶん失われています。近年、インパクト・ファクターの欠点に対しかなり厳しい批判がなされており、学術研究のコミュニティは、研究の質を示す指標としてもっとよいものはないか、積極的に探してきました。それが、h指数、アイゲンファクター・スコア(Eigenfactor score)、論文がソーシャル・メディアでどのくらいシェアされているかにもとづく論文レベルでの諸尺度につながっています。
さて、インパクト・ファクターの妥当性はますます疑問視されています。事実、アーカイヴ(arXiv)で無料閲覧できる最近のある研究は、私たちの知っているインパクト・ファクターの時代が完全に終わりつつある、とする証拠を示しています。この研究で著者たちは、100年間(1902-2009)にわたり、あるジャーナルのインパクト・ファクターと、そのジャーナルに掲載されている個々の論文が引用された数との関係を調べました。両者の関係は、特に1990年代以降なくなっていくだろうという仮説を立て、研究者が興味のある論文を見つけるためにジャーナルの論文をすべて読まねばならない時代には、インパクト・ファクターは重要であったという健全な議論によって、この仮説は支持されました。図書館司書がどのジャーナルを蔵書に入れるか判断するときには、インパクト・ファクターを考慮するでしょう。けれども、学術出版界もデジタルの時代に入り、研究者はオンラインでキーワード検索を行うだけで、探している論文を見つけることができます。ですから、研究者がジャーナルを一冊全部読む必要がなくなるとともに、ジャーナル自体のインパクト・ファクターもそれほど重要ではなくなったのです。
著者たちの仮説通り、ジャーナルのインパクト・ファクターと論文ごとの実際の引用との関係は、ここ20年で減少傾向にあることがわかりました。同じ結果が分野を通じて確認されました。さらに興味深いことに、よく引用される論文の上位5–10% のうちどのくらいの論文が、(インパクト・ファクターにおいて)上位5–10%のジャーナルに実際に掲載されていたかを調べたところ、その割合は20年で著しく減少していることが明らかにされました。
このように、インパクト・ファクターの力は(上で挙げた研究が示しているように)文字通り減少しているとともに、研究者の心の中でも重要性が弱まってきています。資金提供委員会は今でもなお、研究者からの助成金申請を査定する時、その研究者の論文を掲載したジャーナルのインパクト・ファクターを考慮するかもしれませんが、インパクト・ファクターが助成金決定の唯一の判断基準になるとは思えません。
Dr.Eddyは以前の記事で、研究者のクオリティを測る尺度として、インパクト・ファクターよりh指数の方がいかに信頼性が高いか述べていました。研究のクオリティを正確に表し、インパクト・ファクターの低いジャーナルに掲載された論文が資金提供委員会の査定者に与える悪い印象に対抗するために、h指数やその他の論文レベルの尺度など、引用尺度を組み合わせて挙げることで、申請書の力を強くしなければなりません。強い目的意識をもち、研究に対する確かな専門性があるならば、インパクト・ファクターがすべてではないことは明らかでしょう。
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