eLifeの「計算上、再現可能」な論文で表示データを変更

eLifeの「計算上、再現可能」な論文で表示データを変更

生物医学および生命科学分野のオンライン科学誌eLifeが、初の「計算上、再現可能」な論文を発表しました。この論文では、独自の基本コードを使って読者が結果の正当性を確認することができます。論文内の図には、「図の生成に必要なソフトウェア、データ、計算環境」が含まれており、読者は、基本コードを変更することで別の結果を生成することができ、研究内容をより深く理解できるようになります。


この進化した論文が従来のフォーマットで最初に出版されたのは、2012年でした。この研究は、がん細胞の変異遺伝子がほかの遺伝子の挙動にどのような影響を与えるかを検討するもので、がん研究の再現性検証プロジェクトの一環として実施されたものです。


eLife Reproducible Document Stackと呼ばれるオープンソース・ツールによって作成されているこの論文は、一見すると通常の論文と変わりません。しかし、論文内の各図には青い矢印が表示されており、アイコンをクリックすると、図の生成に使われたプログラミングコードが表示される仕組みになっています。ユーザーは、コードを変更することで、図をアップデートし、表示データを変更することができます。


eLifeの論文では、ほかのソフトウェアとは違ってインストールが不要で、読者は論文を読みながら直接コードを閲覧・変更することができます。ペンシルベニア大学医学大学院(フィラデルフィア)の生物情報学者、ケイシー・グリーン(Casey Greene)氏は、この論文では、エラーバー付きの棒グラフを使用してデータの一部をまとめていることを確認しています。ユーザーは、プロットを編集して傾向をより効果的に示すこともできます。


研究者たちは、eLifeのこの再現可能論文が、単に結果を示すだけの論文がインタラクティブなリソースに変わるための大きな一歩になると確信しています。ジョージワシントン大学(ワシントンDC)の機械工学/航空宇宙工学者で再現性の専門家でもあるロレナ・バーバ(Lorena Barba)氏は、「eLifeの取り組みは、研究論文を、単に言葉で書かれただけのものではなく、データやコードを不可欠な要素として含む多面的なコミュニケーション媒体にアップデートするためのもの」と述べています。


F1000Research誌やGigaScience誌をはじめとするジャーナルも、コードとその実行環境を実装したインタラクティブなウィジェットというフォーマットで論文を発表していますが、コードを論文の一部に組み込んだのはeLifeが初めてです。ロックフェラー大学(ニューヨーク)の神経生物学者、コーリ・バーグマン(Cori Bargmann)氏はこの論文を、「未来の論文」と称しています。


現状では、ユーザーは図や論文に自分のデータを追加することはできません。eLife(英ケンブリッジ)の製品およびユーザー体験部門責任者を務めるジュリアーノ・マシオッチ(Guiliano Maciocci)氏は、「我々は、ユーザーが自分のパソコンに論文をダウンロードし、著者のコードを使って自分の研究結果を分析することができる機能の開発に取り組んでいます」と述べ、また、「論文はオープンソースのソフトウェアで作成されており、それを使うことに関心のある出版社に公開されます」と説明しています。さらに、今現在この論文に欠けている参考文献リストや補足的な図のセクションも、近日公開予定であるとしています。


この論文の著者で、オープンサイエンス・センター(COS)ディレクターのティム・エリントン(Tim Errington)氏はeLifeの論文について、研究論文のフォーマットの進化を象徴するものと考えており、「私が行なってきたすべてをありのままに見せる可能性を秘めています」と述べた上で、この技術をよりよく機能させる方法も開発していく必要があると強調しています。


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参考資料:

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