研究後発国の研究者は査読を信頼しているか?
研究に関するソーシャルメディアを見ていると、査読プロセスへの不満や苛立ちが綴られている投稿をよく目にします。難解なコメントや不適当なコメントへの不満を述べている人もいれば、感情的で辛辣な査読者から過度に批判的なコメントが届いたという経験談をシェアしている人もいます。このような投稿は欧米諸国だけで見られるものではなく、中国、ブラジル、日本、韓国、インドといった研究の後発国でもよく見られます。とは言え、ネガティブな言葉だけが飛び交っているわけではありません。査読を称える声や、査読者からの建設的なフィードバックによって研究が改善されたと感謝する声も、少数ではありますが上がっています。好むと好まざるとに関わらず、査読が学術出版に欠かせない要素であることは事実であり、著者は、査読と付き合っていく術を学ぶ必要があるのです。ピアレビュー・ウィーク2020の今、ここで確かめておきたいことがあります。研究者、とくに研究後発国の研究者は、査読というプロセスを信頼しているのでしょうか?
査読へのよくある不満とは?
フェイクニュースがあふれている世界において、新たに公開される知見は、専門家の検証を受けたものでなければなりません。ハーバード大学の社会学者、ミシェル・ラモン(Michèle Lamont)氏は、査読の分析を行なった著書『How Professors Think: Inside the Curious World of Academic Judgment』(2009年)の中で、知識は民主的なものではないと指摘しています。つまり、新規性や意義は、分野の専門家にしか評価できないということです。この意味で、査読は、研究を検証し、それが高い基準を満たしていることを保証するために欠かせないステップであるとともに、研究者に広範な学術コミュニティで協力しあう機会にもなっています。しかし、学術出版界が進化を遂げる中で、査読プロセスは300年以上前からほとんど変化していません。このことが近年、査読への批判の高まりにつながっているのです。
査読プロセスへの批判が高まっている理由の1つは、世界中で論文数が増加の一途をたどっていることだと考えられます。論文投稿数の急増は、研究者が論文出版への強いプレッシャーを受けていることに起因します。これは、研究にとっては素晴らしいことと言えますが、それに伴う査読プロセスの質や透明性の低下、査読期間の遅延といった問題が、不満の高まりを招いています。Publonsの調査によると、毎年1370万本の論文が査読されており、全査読者のうち、わずか10%の査読者で50%の論文を処理しています1。論文数の増加は査読者の負担を増やし、すでに負荷のかかっているシステムの処理速度を、さらに低下させています。また、従来からの秘密主義的な査読プロセスには、透明性が欠如しています。査読がどのように進められていて、どれくらい時間がかかるか、どの程度掘り下げた査読が行なわれているかなど、ほとんどのことが不透明なのです。この不透明性には、ミスや不当な結果を招くリスクがあります。
これらの欠陥は、Sense about Science とエルゼビアが2019年に実施した、査読に関する共同調査でも浮き彫りになっています。この調査では、非倫理的な研究慣行、査読者によるバイアス、研究の公正性を維持する上での課題が、査読プロセスへの信頼を損なっていると指摘されました2。また、ハゲタカジャーナル(その多くは査読プロセスが不透明)の増加は、再現不能または無価値で「悪質」な科学の蔓延につながっており、査読システムへの信頼をさらに低下させています。
研究者、とくに研究後発国の研究者は、査読をどのように受け止めるべきか?
エディテージは2018年に、世界中の研究者から意見を募るグローバル調査を実施し、中国、インド、ブラジル、韓国、日本から多くの回答を得ました。回答者6853名のほとんどが、査読コメントの質に満足していると回答する中、コメントへの対応や査読プロセスの一部に不満を表明する回答も多く見られました。
回答者の60%が査読コメントの有益性を認めており、44~45%が、コメントは明確で建設的であると答えています。一方、46~47%が、難解な査読コメントが寄せられたことがあり、追加の研究を求められるケースが多いと回答しています。これは、著者の70%が査読コメントへの対応に苦労している理由の1つでしょう3。
図1: 査読コメントに対する著者の印象
出典:『学術出版に関する著者の視点:グローバル調査報告書2018』(エディテージ)
地域別に見ると、中国の研究者の62~79%が、査読コメントを有益、分かりやすい、建設的と感じている一方で、60%以上が、査読者間のコメントの矛盾や難解さ、複雑で時間のかかる追加研究を求められるケースが多いことに不満を持っていました3。この調査では、総じて、査読の価値に対する考え方や査読経験後の印象について、意見が大きく分かれていることが明らかになりました。また、回答者の多くが、ジャーナルや査読者が直面する課題を認識しており、査読プロセスへの信頼を高めるには変化が必要であると述べていました。
査読プロセスの信頼性を高めるにはどうすればいい?
以上の2つの調査では、査読の信頼性を強化する方法についての提案も寄せられました。そのうち、エディテージの調査で研究後発国の研究者から寄せられた提案は、次の通りです:
- 客観性、公平性、説明責任を強化し、査読者のバイアスや自己防衛のためのリジェクトを排除する。そのためにはダブルブラインド・ピアレビュー(二重盲査読)が有効。
- 査読者への感謝、報酬、インセンティブによって査読の質を改善し、査読期間を短縮する。
- ジャーナル編集者による査読コメントへの評価・フィードバックによって、査読の質を高め、研究への明確かつ建設的なコメントを保証する。
- 査読者の選定プロセスを変更し、査読者に基本的なトレーニングを課すことで、コメントの質の高さを担保し、自分たちのコメントに責任を負わせる。
Sense about Scienceの調査でもこのような意見が寄せられ、多くの回答者が、査読者へのサポートと理解度を改善することが査読の質を高める上でのカギだと考えていました。また、興味深いのは、回答者の76%が、論文のデータや補足資料の品質管理も重要だと考えているということです2。この場合、AIを用いて論文の質をチェックするサービスがあれば、すでに手一杯の査読者の負荷を軽減する解決策になるかもしれません。
査読へのさまざまな不満の声を受け、トップジャーナルは、バイアスを排除するためのオープン査読(ブラインド・ピアレビュー)のほか、より迅速で効率的なプロセスのための出版後査読や独立査読サービスなど、すでにさまざまな査読モデルを試行しています。しかし、これらは査読の質の問題に対応するものではありません4。ジャーナルが透明性や査読システムを改善するための動きを見せる中、査読の負荷を軽減するために著者ができることはあるでしょうか?プロセスを確実に合理化し、アクセプトの可能性を極限まで高めることができる方法の1つが、R Pubsureによる論文チェック機能を活用することで、論文出版の基準をすべて満たした論文を投稿することです。
R Pubsure で査読プロセスを加速させよう
R Pubsureでは、数多くの研究者との18年以上にわたる交流の中で得られた知見に基づき、AIによる安全、迅速、正確、包括的な論文チェックを行います。それぞれの論文を、言語の質、倫理事項の順守、引用文献などのキーファクターに注目して評価し、問題のあるエリアをR Pubsureレポートで指摘して、原稿の改善方法を提案します。ハイスコアの論文には、論文が投稿できる状態にあることを証明するR Pubsure証明書が発行されます。この証明書をジャーナル編集者に見せれば、編集・査読プロセスをスピードアップすることができるでしょう。投稿プロセスを合理化するためのこのようなソリューションによって、査読者の時間や労力の負荷を軽減し、論文の粗探しではなく、内容そのものに集中することが可能になります。
査読は科学コミュニケーションの大事な要素であり、品質管理のために欠かせないものですが、欠陥がないわけではありません。査読の価値を向上させるためにジャーナル側にできることはまだまだたくさんありますが、学術出版プロセスの各関係者がそれぞれの役割を誠実に果たさなければならないということも、心に留めておく必要があります。著者としての役割を果たすために、今すぐR Pubsureにサインアップして、自分の論文が投稿できる状態にあるかどうかを確認しましょう。
参考資料:
- Global State of Peer Review 2018, Publons. Retrieved from https://publons.com/static/Publons-Global-State-Of-Peer-Review-2018.pdf
- I. Syed - Quality and trust in peer review: An overview of Sense about Science 2019 survey. Editage Insights, 2019. Retrieved from https://www.editage.com/insights/quality-and-trust-in-peer-review-an-overview-of-sense-about-science-2019-survey?refer-type=article
- Author Perspectives on Academic Publishing: Global Survey Report 2018. Editage. Available online at https://campaign.editage.com/global_survey_report_2018/
- J. Patel, et. al. – Do peer review models affect clinicians’ trust in journals? A survey of junior doctors. Research Integrity and Peer Review, BMC, 2017. Retrieved from https://researchintegrityjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s41073-017-0029-8
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