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中国はSCIへの依存から脱却すべきか?
過去数年で、世界的研究における中国の貢献度は、着実かつ顕著に高まっています。国際的ジャーナルに論文が掲載される中国人研究者の数も増加しています。実際、中国は科学研究・出版においてグローバル・リーダーへの道を歩んでいるといえるでしょう。中国の存在感がこのように増してきた主な理由のひとつに、Science Citation Index (SCI)を重視した科学評価システムがあります。このシステムでは、中国人研究者がSCIにインデックス登録されたジャーナルに論文を投稿することが奨励されています(時に、必須とすることさえあります)。国際的ジャーナルで、中国人研究者による論文の掲載が増加しているのは、このためです。この方法は、1980年代に南京大学で初めて採用され、やがて中国のほぼ全ての学術機関に採用されました。
南京大学学長のチュウ・チンユエ(Qu Qinyue、曲欽岳)教授によると、中国が1984年、SCIに登録されたジャーナルからの出版を重視するに至った理由は主に二つあります。(1)中国の研究及び出版システムに、統一された客観的評価基準がなかったこと、(2)査読に適した人材が不足していたため、専門分野の査読プロセスがうまくいっていなかったこと。その結果、中国の研究成果は、海外の同水準の国々と比べて劣っていました。SCIに登録されたジャーナルに掲載された論文を基準とすることの主な目的は、国際的ジャーナルから出版しようとする研究者のために、統一された量的指標を提供することでした。
やがて、SCI収載論文(SCIに登録されたジャーナルに掲載された論文)は、研究者が学術的な専門家として生きていく上でのあらゆる側面(例えば資金助成、昇進、学位授与に至るまで)に影響を与えるようになって行き、ついにはSCIに収録されたジャーナルでの掲載そのものが第一の目的となってしまいました。各機関も、選考の際、あるいは政府からの助成金を確保しようとする際、SCI収載論文を基準とするようになりました。こうして、SCI登録ジャーナルで論文が掲載された経験のある研究者は、助成金申請の際の評価が有利となり、SCI収載論文が多いほど、機関の信頼性も増すことになりました。しかし、SCIにばかり頼るようになったため、問題も出てきました。政府からの支援を増やそうと考えた機関は、影響度の高いSCI登録ジャーナルでの論文掲載数で研究者を評価する際の基準を、引き上げたのです。このため、出版に対するプレッシャーが高まり、ついには研究者が非倫理的な出版行為に走る結果を招きました。更に、SCI収載論文の増加をやみくもに追及した結果、研究の質に影響が出ることとなり、中国の科学研究の成果を疑問視する声が世界中から上がりました。
過度なSCI収載論文への依存は将来的に危険であるという認識の下、2014年11月22日、北京大学の保健科学センター(Health Science Center)で行われた“SCI論文と医療教育”と題した全国シンポジウムに、医学研究者や医療関係者が集いました。シンポジウムでは、著名な医者や研究者33名が、SCIに重点を置いた中国の評価システムを認めないことを表明しました。彼らの主張は、医者、研究者、教員の質を、SCI収載論文の数に基づいて定め、価値を加えるという行為により、SCI収載論文の本来の性質や目的、役割に対する見方が歪曲されてしまったというものでした。彼らはまた、「SCI収載論文や医療、そして医療教育を正しい方法で取り扱う」ことを提唱した宣言に署名しました。このシンポジウムで、北京大学人民医院心血管疾患研究所(Institute of Cardiovascular Diseases)の胡大一(Hu Dayi)博士は次のように指摘しています。
SCIは中国の学術発展を支え、中国の研究が国際的に認知される機会を増やしました。しかし、助成金の申請、昇進、研究者の評価、あるいは組織の実績などの評価にSCI収載論文のみを基準として利用したため、プラスというよりもマイナスの結果をもたらしました。教育機関と病院の最も重要な目的は、最高品質の教育と医療を提供することであり、国家もその点を最重要視すべきです。
医師たちの宣言を反映し、中国の研究機関、中国科学院Chinese Academy of Sciences (CAS)は、「The grief and anxiety of SCI(SCIの悲しみと心配))と題した論文を紹介しました(2011年11月、High-Technology & Industrializationから出版されたTian Baozhong(田保中)博士による論文)。この中でTian博士は、中国のSCI収載論文偏重をなくすため3つの解決方法を提案しています。
1. 中国国内の学術及び科学コミュニティに関わるすべての人員が、SCI収載論文やインパクトファクターなどの評価方法の意味を理解すべきである。これにより、研究成果の質に重点を置いた評価システムの必要性が分かるはずである。
2. 中国政府は研究者及び助成金に関する、より公正で包括的な評価システムを考案すべきである。
3. 中国政府はまた、中国のジャーナルがSCIに収録されるよう努めることを奨励すべきである。
SCI収載論文は、研究の質の評価基準として機能するようにと考えられたものですが、年月を経て、誤用や乱用を招きました。その結果、中国の研究成果の質や、研究者としての誠実さに懸念がもたれるようになってしまいました。中国は、科学研究の質の高さを保つために、あるいはグローバルな研究の舞台における中国の存在感をより高めていくために、SCI登録ジャーナルでの論文掲載が何よりも大事だという思い込みから脱却する必要があります。
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