中国政府、研究不正行為に厳格な措置
複数の不正行為事案に中国人研究者が関与していたことを受け、中国政府と中国の主な助成機関がこうした事例の阻止に乗り出しました。
中国は、科学研究に大きく貢献する存在として躍進してきました。それにもかかわらず、最近は研究と出版における不正行為の増加という事態に見舞われています。その結果、中国における研究結果の整合性に疑問が持たれるようになり、中国人研究者が執筆した多くの論文が撤回されることになりました。直近では、シュプリンガー(Springer)社の論文64本が撤回された事例がありますが、その論文のほとんどが、中国人研究者が執筆したものだったようです。
倫理違反の広がりを把握して問題を解決するため、中国科学技術協会(China Association for Science and Technology、CAST)は、詳細にわたる調査を開始しました。研究者との話し合いの場を設け、研究者の意見も検討の対象としました。中国人研究者が不正行為に関与していたことが明らかになりましたが、調査委員会は、「撤回された論文の著者の大部分は、第三者機関に投稿支援を依頼していた」と説明し、代筆サービスを提供するなどの不正行為を蔓延させている第三者機関の存在を強調しました。調査では他に、「第三者機関における『科学サービス』の明確な規定」が欠如していると報告されました。英文校正サービスの適正な業界基準を規定するため、編集校正サービスを提供する6社が、中国英文科学編集連盟(Alliance for Scientific Editing in China)を結成しました。
科学誌サイエンス(Science)に掲載された記事によると、2015年11月初旬、中国国家自然科学基金(the National Natural Science Foundation of China、NSFC
)は、不正行為による論文撤回に関与した研究者に対する助成金を取り消すことを発表しました。NSFC代表理事のヤン・ウェイ(Yang Wei)氏は、「不正行為を行なった研究者を雇用する機関は、これまでに使った金額にかかわらず、助成金全額を返還しなければならない」と述べました。ウェイ氏は、研究者が非倫理的な研究や出版行為を行なった場合は、例外なく厳重に罰する必要があると強調しました。研究不正や非倫理的出版行為は、グローバルな問題です。しかし、最近の報道で大きな注目を集めた撤回事例では、残念ながら中国人研究者とその論文にスポットライトが当たる結果となりました。さらなる不正を防ぐために中国が厳しい措置をとっていることは、良い報せと言えるでしょう。中国の学術界は、研究の質より量に重きを置く「出版しなければ消え去るのみ」という現状を脱し、変化していく時期に来ているのかもしれません。
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