学術界の外でのキャリア:研究者をサポートする仕事(EMBO副機構長へのインタビュー)

学術界の外でのキャリア:研究者をサポートする仕事(EMBO副機構長へのインタビュー)

欧州分子生物学機構(EMBO)副機構長のGerlind Wallon氏(ドイツ出身)は、ブランダイス大学(米マサチューセッツ州)で生化学の博士号を取得した後、欧州分子生物学研究所(EMBL)のハイデルベルク本部で4 年間ポスドク研究員として勤務しました。EMBOではEMBO Young Investigator Network、EMBOコースおよびワークショップ、Women in Scienceを担当し、リーダーシップ育成のためのEMBOラボ管理コースの開発に携わっています。また、EMBO での採用における選考プロセスと性別の影響について論文を執筆し、学術界におけるクォータ制に関するレポートを作成しました。
 

Q. これまでの職歴と、学術界の外で携わった仕事について簡単にお聞かせ頂けますか?

化学工学の学位を取得した後、ブランダイス大学で生化学の博士課程に入る前に、Shell Oil Companyで1 年間化学エンジニアとして働きました。この経験で、産業界の仕組みを学ぶことができました。ブランダイス大では、X線結晶構造解析を用いてタンパク質の安定性に関するさまざまな問題を調査し、論文の大部分を自分で仕上げるという貴重な経験をしました。その後ハイデルベルクのEMBLでポスドク研究員になり、EMBLでの4 年間に2人の子をもうけ、EMBOポスドクフェローシップを受けました。

 

残念ながら私の研究プロジェクトは順調に進まなかったので、主任研究者に応募するのはやめ、他の職に応募したところ、2件のオファーがありました。1つはスタートアップ企業での仕事で、もう1つがEMBOでEMBO Young Investigator Programmeを立ち上げる仕事です。2 人の子を育てながら研究室で働くのは無理があると感じたので、EMBO で働くことに決めました。キャリアのさまざまな段階にある研究者たちを支援する仕事では、大きな充実感を得られます。私の場合は、研究室で働き続けていたよりも、この仕事の方が学術界に貢献できていると思います。

 

Q. 博士課程やポスドク時代に得たスキルと経験は、科学者向けトレーニングプログラムの作成にどのように役立っていますか?

一番役に立ったのは、アカデミックな環境を直接知っていて、さまざまな研究室や環境での経験があることです。そのため、Young Investigator Programmeで現在取り組んでいるような、若手研究者の弱みや希望や特殊な状況について、深く理解することができています。

 

スキルについて言えば、科学者が学ぶもっとも重要なことは、分析的に考えるということだと思います。課題を特定し、問いを立て、(可能な) 解決策を考え出すことを学びます。自分の仕事の筋道を立てるだけでなく、他の人にアドバイスやフィードバックを求めて耳を傾けることも学んでいるかもしれません。研究室での仕事は一人ではできないので、助言を得てそれを取捨選択することを学んでいるのです。

 

Q. 転身を後押ししたものは何ですか?何か障害はありましたか?

一番ありがたかったのは、プログラムの開発作業を一任され、完全に自由にやらせてもらえたことです。後に、EMBOのコースとワークショップの責任者にもなりました。このタイミングと職場環境だったからこそ、実験も続けることができました。EMBO Lab Leadershipコース (現在は子会社のEMBO Solutionsが提供) を開発し、EMBO PhDコースを通じて科学的スキルのトレーニングを開発し、個人的に興味のあるトピック(なぜ女性は学術界で男性と同じ速さで昇進しないのか)にも取り組むことができました。このトピックについては何度か会議を開催し、EMBOポリシーにも取り組み、調査プログラムに関する研究発表も行いました。

 

EMBOではヨーロッパ内外の一流の科学者たちと共に働くことができ、非常にやりがいがあります。

 

障害は特に思い浮かばないですね。少なくとも、科学者として受ける類の教育で克服できないものはないと思います。

 

Q. 博士課程の学生やポスドク研究者にとって、学界の外にはどのようなキャリアの機会があるでしょうか?

世の中には本当にさまざまな職業があるので、機会は豊富にあるでしょう。考えられるのは次のような職業です。
 

  • 研究資金助成機関(助成プログラムの運営に携わって管理業務を担う)
  • 科学誌の編集者
  • 大学の管理業務
  • 特許、コンサルティング
  • 産業界の研究開発、品質管理、生産管理

 

Q. 博士学術界の外でのキャリアを模索するときに大事なポイントは、ご自身の経験から、どのような点だと思われますか?

次の4点を挙げたいと思います。
 

  • 補助的な立場を超えて直接的な経験を積む:例)会議や学会の開催を手伝う、授業をする、他の学生に教える、発注業務などのラボ業務を担う、助成金申請を行う、学生活動に参加する。
  • 博士課程で得たスキルを活かすことを考えてみる:プロジェクトの整理、背景調査の実施、問題解決策の発見、コラボレーションの立ち上げと維持などのスキルを一覧表にまとめてみましょう。
  • 応募書類は、職務で要求されるすべての点に配慮しながら書く:できれば年長者にチェックしてもらい、複数の人にフィードバックを求めましょう。インターネット上にあるサンプルやヒントも調べて参考にしましょう。
  • 検討中の職業に就いている人にコンタクトを取って経験談を聞き、応募に関するアドバイスを求める:展示会や見本市で出展者と話をするのもよいでしょう。

学術界でキャリアを積み、出版の旅を歩もうとしている皆様をサポートします!

無制限にアクセスしましょう!登録を行なって、すべてのリソースと活気あふれる研究コミュニティに自由に参加しましょう。

ソーシャルアカウントを使ってワンクリックでサインイン

5万4300人の研究者がここから登録しました。