ブラジル政府が科学予算の半分近くを凍結―危機にさらされる研究者たち
ブラジル政府は2019年3月29日、終わりの見えない経済危機のために、国の科学予算の42%を「凍結」せざるを得ないと発表しました。ブラジルの研究者たちは、この決定が国の科学の発展に大きな損害を与えることを懸念しています。
10年以上に渡る経済停滞にあえいでいるブラジルは、経済が立て直されるまでは支出を抑えることを余儀なくされています。このため、研究開発に充てられる予算にも直接的な影響が出ています。この数年、ブラジルの科学予算は縮小し続けており、研究者たちは現在、過去15年間でもっとも少ない研究費で活動しています。
科学省の予算22億ドルが凍結されることになった今回の決定は、さらに大きな痛手となりそうです。リオデジャネイロ連邦大学の物理学者であるイルデウ・デ・カストロ・モレイラ(Ildeu de Castro Moreira)氏は、「今回の件は、すでにパンクしたタイヤで走っている我々から、タイヤまで奪うということです」と述べています。
研究者たちは、予算の制限によって、公衆衛生管理や気象監視などの重要施設の機能が損なわれることを懸念しています。凍結が続けば、国の代表的な研究助成機関である科学技術開発審議会(CNPq)は、年末までに奨学金を支給することができなくなる見込みです。ブラジルの代表的な科学研究プロジェクトであるシンクロトロン光源「シリウス」の開発も、予算の大半が凍結されている現状では、危機に陥る可能性があります。
ブラジル科学界は、競争力を失うリスクとは別に、頭脳の海外流出についても懸念しています。リオデジャネイロ連邦大学の物理学者でブラジル科学アカデミーのルイス・ダビドビッチ(Luiz Davidovich)会長が「我々の最良かつもっとも賢明な選択は、国を発つことです」と述べているように、若手研究者や学生は、ブラジルの科学界が置かれている現状を踏まえ、海外で就職する道を選び始めています。
このような中にあっても、研究者たちは、ジャイル・ボルソナロ大統領が科学技術への投資を優先させ、国の科学情勢に深刻な被害が及ぶ前に予算の凍結を廃止する方向に舵を切ることを期待しています。
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