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懐疑的な研究者へのオープンアクセスガイド
キャロライン・サットン博士は、様々な専門分野をカバーするオープンアクセスの国際的な学術出版社である Co-Action Publishing の共同設立者です。出版界やライブラリ・コミュニティとグローバルなネットワークを持つサットン博士は、オープンアクセス出版の著名な提唱者であり、積極的に普及活動をしている専門家です。
彼女は、オープンアクセスに関して様々なところで活動しており、報告者として活躍していた欧州委員会などのような機関にも参画していました。サットン博士は、主要な研究グループや研究者と Co-Action を通じて、数多くのプロジェクトで議論し、討論し、取り組み続けています。彼女はルンド大学図書館と共同で、オープンアクセスジャーナル出版のためベストプラクティスガイドを作成しました。サットン博士は、スウェーデン・ウプサラ大学の社会学の博士です。 (彼女の詳細な経歴に関しては、本インタビューの最初の部分をご覧ください)
オープンアクセスジャーナルで出版する際に、著者はどのようなことを危惧しているのでしょうか? また、それは何故ですか?
先にお話しましたように、オープンアクセスへの取り組みが遅れているグループがあります。芸術や人文科学や社会科学の分野では、懐疑的な研究者が多くいるのです。これらの分野で注目されるのは、本の方がジャーナルよりも大きな役割を果たす専門領域であるということです。オープンアクセスモノグラフは、議論のテーマや出版フォーマットとしては注目されていますが、オープンアクセスジャーナルの論文には遅れをとっています。 これまでに幾つかの大変に興味深くてクリエイティブな解決策が立ち上がっていますが、オープンアクセスモノグラフをサポートするファイナンシャルモデルの実施となると中々難しいのです。これらのモデルでは、著者にロイヤルティが払われないのが一般的です。モノグラフの著者で、本の売上によって多額なお金を得ている人はほとんどいませんし、著者の誰もそのような機会を失うことは望んでいないのです。
社会科学や芸術や人文科学の研究者にとって2番目に大きな関心事は帰属に関することです。オープンアクセスとは、コンテンツへの自由なアクセスだけでなく、オリジナルソースが適切に明記されている限り、ユーザーが見つけたものはどれでも自由に再生使用することが出来ることを意味します。白、黒がハッキリしているSTM(科学・技術・医学)分野での帰属は極めて単純明快です。定性的な研究や芸術や人文科学では、著者が議論する際には記事の全体またはモノグラフを持ち出すことになりますので、帰属に関してハッキリさせることは中々難しくなります。 まもなくOASPA(オープンアクセス学術出版協会)が発表する帰属に関する一連のガイドラインの作成に私も参画しています。これによって、この分野での懸念のいくつかが緩和されるであろうというのが、今の私達の希望です。
最終的に、著作権と使用許可が確立されたシステムは、特に芸術や人文科学の分野におけるオープンアクセス出版の障害になることもあります。例えば、絵画またはイメージを分析する美術史家は、出版物の中で、イメージを再生する必要があるでしょう。多くの場合、そのイメージには著作権があるでしょうし、使用許可を得なければなりません。使用許可には、どれだけのコピーを流通させることが出来るかの定義も含まれます。オープンアクセスの場合は、こういった再生使用に関してコントロールすることができません。これらの問題(再生されるイメージに関わる異なるライセンスを使うなど)に役立つオプションはいくつかありますが、標準的なやり方を確立するためには更にこの分野での取り組みが必要です。
オープンアクセスジャーナルでは、査読の質をどれだけ良く管理することが出来るのでしょうか?
まだある課題はどのようなものですか?
最近、オープンアクセスジャーナルと査読に対して大いに注目が集まっていますが、オープンアクセスジャーナルの査読を管理することに関する課題はすべて理解しておくことが大切です。定期購読のジャーナルに関連して、査読に関したスキャンダルが頻繁に暴露されています。真面目な出版社にとっては、オープンアクセスジャーナルと定期購読ジャーナルの間には査読に関する違いはありません。真の課題は、少数のジャーナルが、故意または世間知らずのために、私達すべてが適切であると考えている基準を満たさないやり方や方針で実施していることにあります。これは、馴染のない出版物を信頼することができるかどうか、研究コミュニティの間ではまだ疑問が残ったままになっています。
個人的には、ブラックリストというよりもホワイトリストを作成することを支持しています。「悪者」を目録化する試みは、その基準が流動的であることと目録を作成する個人によって解釈が主観的になりやすいからです。それに、不適切で、欺瞞的な行動をすべてリストすることは出来ないからです。私たちが出来ることは、堅実な出版社が取り入れている基準がどんなものであるかを定義することです。
DOAJ(オープンアクセスジャーナルのディレクトリ)では、この冬に、その登録基準を改訂しました。その登録フォームには、DOAJスタッフと共同編集者によってレビューされる50を超える項目が含まれ、大変に厳しいものしました。DOAJに登録された既存のジャーナルも再検証され、すでにデータベースから取り除かれたジャーナルに加えて、現在登録されているジャーナルも約10%が削除されるものと思います。
OASPA(オープンアクセス学術出版社協会)も、メンバーシップの基準を厳密にし、メンバーがこれらの基準に違反していないかどうかを調査します。 これら2つの団体とCOPE(出版倫理委員会)は、学術出版における透明度とベストプラクティスに関する共通プリンシプルを出しました。馴染のない出版物を考えている人にとってよいのは、そういったプリンシプルや、DOAJまたはOASPAの名簿や基準を参考にして評価することが出来ることです。
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