85の出版社と助成機関が新型コロナウイルス関連データの迅速な共有を宣言
新型コロナウイルスに感染する人の数が、日に日に増えています。世界保健機関(WHO)は、今回のアウトブレイク(感染症の集団発生)を公衆衛生上の緊急事態であると宣言しました。今、世界中の研究者たちがこのウイルスの解明と治療法の開発に取り組んでいます。
医学研究の助成財団であるウェルカムトラスト(英国)は2020年1月30日、研究者と助成機関に対し、「公衆衛生上の対応を周知し、生命を救うため」として、新型コロナウイルス感染症に関する研究データと研究結果を、迅速かつオープンに公開するよう求めました。
これを受け、85の出版社・科学関連学会・助成機関が、新型コロナウイルスに関する最新の研究結果とデータを直ちに公開することを約束する共同声明に署名しました。この声明の要点は次の通りです:
- アウトブレイク中は、関連するすべての査読済み出版物を無料公開する。
- 研究結果および基礎データに関する情報を、プレプリントサーバーもしくはその他の論文共有プラットフォームで、査読前に公開する。
- すべての研究結果をWHOと直ちに共有する。
- 論文著者は、暫定および最終の研究データを、データ収集に使用したプロトコル・規格とともに、迅速かつオープンにWHOと公衆衛生団体および研究コミュニティと共有する。
エルゼビア、シュプリンガー・ネイチャー、eLife、The Lancet、王立協会をはじめとする複数の出版社やジャーナルが、アウトブレイク関連のデータや研究結果の即時公開に協力することを表明しています。科学界は、この動きに積極的に対応しています。米国のMOBS Lab(Modeling of Biological and Socio-Technical Systems Lab)代表のAlessandro Vespignani氏は次のように述べています。「前回のアウトブレイクでは、作業に必要な1つの情報が載った論文が公開されるまでに、数週間から数か月も待つケースがありました。(中略)今回は違います」。
ウェルカムトラストの取り組みへの協力を表明する形で、Natureは次のように述べています。「研究者へのメッセージはシンプルです:この感染症を解明して撲滅することに努めてほしい。最高水準でこの仕事に取り組み、結果を直ちに世界に伝えてほしい、ということです」。
一方、とくにプレプリントで、査読を受けていないデータが公開されてしまうことが懸念されています。科学ジャーナリストのAdam Rogers氏は、「プレプリントをダウンロードするのは科学者とは限らないので、誤解や語訳に対応する必要が出てくるでしょう」と述べています。
エディテージは、世界中の研究者と手を携え、新型コロナウイルス感染症に関する正確な情報をタイムリーに発信できるよう協力しています。そのため、エディテージは、新型コロナウイルス関連の研究に、翻訳、編集、図版作成サービスを無料で提供しています。
コメントを見る