質的医療研究を報告する際に覚えておきたい5つのこと

質的医療研究を報告する際に覚えておきたい5つのこと

医療分野における質的研究(qualitative study)は実証的研究(empirical study)ほど有益ではない、というのはよくある誤解です。質的研究は科学的厳密さに欠けるという認識もよく耳にしますが、実は質的研究には、臨床医・介添人/介護者・患者たちの、感情・経験・受け止め方へ洞察を与えるという重要な役割があります。質的医療研究の利点を最大限に生かし、科学コミュニティ外からの偏見に対抗するため、質的研究者は、徹底した量的研究と同等に、完璧で明瞭な報告を行うよう気を配る必要があります。そのためには、「質的研究報告の統合基準チェックリスト」(Consolidated Criteria for Reporting Qualitative Research (COREQ) checklist)のようなガイドラインを利用するのもよいでしょう。バランスのとれた研究報告となるだけでなく、学術誌編集者や査読者に対する論文の信頼性や説得力が増すという効果もあるはずです。

以下に、研究者が質的医療研究を報告する際に見逃しやすい5つの点を挙げます。

1. 研究方法の位置付けや理論(エスノグラフィー、現象学、グラウンデッド・セオリーなど)をただ述べるだけでなく、自分の研究のリサーチ・クエスチョン(設問)や研究目的に適用するにあたり、その方法が他より優れている点について述べる。

2. サンプリング方式(合目的的・理論的、雪だるま式など)や、参加者がどのようにして選ばれたのかについて記述する。インタビューや話し合いなどにかけた時間のほか、どのような場所で行われたかについても言及する。

3. インタビューを行なった人、フォーカス・グループ・ディスカッションの司会・進行役(ファシリテーター)を務めた人、データのコード化などを行なった人を明記する。その人が持つ、当該研究方法に関する資格や実績およびトレーニング、また関連する属性情報(例えば、乳房切除後について扱った研究であれば、研究者の性別が重要になる可能性がある)について述べる。

4. データが飽和状態に達したのか否か、あるいはどの時点でデータ収集を中止したのかについて報告する。

5.何らかのトライアンギュレーション方式(複数の理論・手法・リソースを組み合わせる研究手法)が取り入れられたかを明記する。これにより、研究結果の内的妥当性が高まる。

質的データは文脈による影響を受けやすいため、研究方法の詳細が軽視されると、研究結果の有用性が著しく狭められることがあります。これを避けるため、The BMJSocial Science and Medicineなどの知名度の高い学術誌は、質的論文の著者のために専用のチェックリスト

詳細なガイドラインを設けています。どの学術誌に投稿するにしても、これらの指針やCOREQチェックリストを参照し、可能な限り最善の方法で研究・発表を行うよう心がけましょう。

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