研究者はオープンアクセスジャーナルに論文を発表すべきでしょうか?

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研究結果はすべての人に公開されるべきであるという理想からすると、研究者は当然オープンアクセスジャーナルに論文を発表すべきですし、この質問は一見不要なものに思えます。実際、資金提供機関の中には、助成対象者にそうすることを義務付けているところもあります。同様に、Plan Sは「2021年以降、公的助成金による研究の成果である科学出版物は、準拠したオープンアクセスジャーナルまたはプラットフォームで出版されなければならない」と定めています。
※Plan Sは、資金提供機関、研究を行う国家レベルの機関(主にヨーロッパ)、世界保健機関などの国際機関のコンソーシアムです。

オープンアクセス出版の範囲とカテゴリー

オープンアクセス出版物の形態をとる研究成果の割合は着実に増加し続けており、ある推計によれば、2018年の約4.5%から2022年には15%に増加する見込みですが、その割合は依然として小さいものです。オープンアクセス出版には、以下のようなジャーナルのカテゴリーがあります。

  • ダイヤモンドまたはプラチナ - APC(論文処理料)の支払いなしでフルアクセス
  • ゴールド - APCの支払い後にフルアクセス
  • ハイブリッド - ジャーナルはペイウォールで制限されている、つまり、アクセスは購読ベースですが、APCが支払われた論文はオープンアクセスとなっています

オープンアクセスで出版するかしないか

ジャーナルの権威

インパクトファクターに反映されるジャーナルの権威が、そのジャーナルのステータス(オープンアクセスか有料制限か)と関係しているかどうかについては、研究のコンセンサスが得られていませんが、全体としてオープンアクセスの論文は、自由に利用できない論文よりも引用される頻度が高くなります。これは、オープンアクセスに有利な点ですが、完全にオープンアクセスのジャーナルは、ペイウォールで制限されたジャーナルよりも権威が低いと多くの人に認識されています。

オープンアクセス出版のコスト

ハイブリッドジャーナルでは、そのジャーナルに掲載される論文をオープンアクセスにするためにAPCを支払う必要があり、これは、特に中低所得国の著者にとっては、オープンアクセス出版のデメリットとなります。

この点は、支払いの責任を負う機関にも関係しています。研究者は通常、研究機関や大学に勤務しているため、料金を支払うことを厭わないかもしれません。結局のところ、インパクトファクターの高いジャーナルに掲載された論文は、研究機関のランキングで考慮されるため、APCを支払うことは彼らの利益となります。

もうひとつの可能性は、研究者兼著者が資金提案にAPCの費用を含めるという先見の明を持っていた場合に、APCが承認された予算の一部になるというものです。

ターゲットとする読者層

著者はまた、論文の内容と、どのような読者を対象としているのかを念頭に置く必要があります。例えば、研究結果が様々な分野の研究者の興味を引きそうなものであれば、幅広い分野のジャーナルを選択するのがよいでしょうし、専門家だけが興味を持ちそうなものであれば、専門ジャーナルの方が適しています。

キャリアアップ

研究者を、論文を発表したジャーナルのインパクトファクターや論文の被引用回数といった指標に基づいて評価すべきかどうかは議論の余地がありますが、そうした指標が広く使われているのも事実です。インパクトファクターが評価に考慮される場合、研究者は、それがオープンアクセスでなくても、インパクトファクターの高いジャーナルを好む傾向があります。一方、被引用数が基準になる場合は、研究者はオープンアクセスを好む傾向があります。

ハゲタカジャーナルまたは疑わしいジャーナル

オープンアクセスジャーナルはすべて同じというわけではなく、その多くは、迅速な出版と非常に低いAPC(多くの場合比較的国際的な取引には使われない、いわゆるソフト・カレンシーで支払われる)を提供することで著者を惹きつけようとするハゲタカジャーナルの可能性があります。しかし、そのようなジャーナルに掲載された論文はほとんど引用されないため、著者はそのようなジャーナルに掲載することで損失を被ることになります。ある調査によると、ハゲタカジャーナルに掲載された論文の60%が出版から5年以内に一度も引用されなかったのに対し、査読のある主流ジャーナルに掲載された論文で引用されなかったのはわずか9%でした。ハゲタカジャーナルに掲載された論文は、その著者に不利に働く可能性があります。

出版社としての専門学会

専門学会の活動の一環として発行されているジャーナルの多くは、必ずしもオープンアクセスではないものの、会員には無料で提供されています。これは、定義上、特定のトピックに興味を持っているという理由で、特定の学会の会員がたまたま意図された読者グループを代表している場合、著者にとって有利に働く特徴です。例えば、植物病理学を題材に考えてみましょう。いくつかの大手出版社(Springer、Wiley、Oxford Academicなど)は、この分野のジャーナルを少なくとも1誌出版していますが、American Phytopathological Society(米国植物病理学会)もジャーナルを出版しており、『Phytopathology』に掲載された論文は12ヶ月後には自由にアクセスできます。専門学会が発行するジャーナルは、必ずしもオープンアクセスやAPCが無料というわけではありませんが、その可能性が高く、著者が検討する価値があります。

結論

学術出版の複雑さを考えると、著者が常にオープンアクセスジャーナルで出版しなければならないと断言することはできません。しかし、他の要素が同じであれば、オープンアクセス運動があらゆる手段で支援され、促進されることは、著者だけでなく、学術コミュニティ全体だけでもなく、社会全体にとっての利益になるのです。


この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。

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この記事を書いた人

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