簡単に言えば、剽窃、つまり実際には自分のものではない文章を自分のものだと主張することは、出版倫理に違反する行為です。科学全体の基盤は学術出版に依存しているため、剽窃の罪は深刻です。剽窃を防ぐことができないようであれば、データの捏造や画像操作といったさらに深刻な方法を防ぐことはできないでしょう。さらに悪いことに、剽窃はまったくの無知から、知らず知らずのうちに犯してしまう可能性があります。この記事では、剽窃の危険を回避するためのヒントをいくつか紹介します。
プロの英文校正者が剽窃をチェック
剽窃の定義
剽窃の定義は組織によって異なりますが、基本的にはすべて同じです。オックスフォード大学は剽窃を以下のように定義しています。
「原著者の同意の有無にかかわらず、他の情報源から得た著作物やアイデアを自分のものとして発表し、完全な謝辞なしに自分の作品に組み込むこと。原稿、印刷物、電子媒体を問わず、出版されたもの、未発表のものはすべてこの定義に含まれ、人工知能の使用によって全体的または部分的に生成された資料の使用も含まれる」1。
最近の剽窃事例
ノルウェー政府の保健大臣であったIngvild Kjerkolが、修士論文の剽窃疑惑を受けて辞任したことは皆さんもご存じかもしれません。Kjerkolは、同様の疑惑を受けてノルウェー政府を辞任した高等教育大臣Sandra Borchと同様の道を辿りました。2 もうひとつの有名な事例では、当時ハーバード大学の学長だったClaudine Gayに非難の矛先が向けられました。彼女の論文3本に剽窃疑惑が見つかったと報じられたのですが、調査3では「ハーバード大学の研究不正行為基準に違反するものは見つからなかった」となりました。これらは有名な例ですが、ほとんどの大学やジャーナルでは、学位論文や研究論文における剽窃を検出するためのソフトウェアツールを日常的に使用しているほど、剽窃はよくあることなのです。
なぜ剽窃する研究者がいるのか?
剽窃は時間と労力を節約できるためよく行われますが、多く人は剽窃が倫理違反であることすら認識していません。例えば、実験室での手順は標準化されており、ほぼ同じ文章で記述されていることがよくあります。実際、標準化にはそのような統一性が求められるため、公開された論文からテキストをコピーして、同じ標準手順を採用した研究に基づいて執筆中の論文に貼り付ける方が簡単なのです。このような場合、コピーした文章を引用符で囲み、その文章の出典を適切に引用するだけで、剽窃の罪を簡単に避けることができます。仮に引用符や出典が抜けていても、欺く意図がないため、軽微な剽窃と見なすことができます。
一方、深刻な剽窃とは、論文を丸ごとコピーし、自分のキャリアを早く上げるために原著者の名前を自分の名前に置き換えた上で、新しい論文として投稿することです。そして、この両極端な2つのケースの間には連続性があり、Wager4は剽窃を判断するうえで以下の点を挙げています。
- コピーされた素材の独創性
- 位置/文脈
- 参照/帰属
- 意図
- 著者の年功序列
- 言語
剽窃は他人の文章を使いながら自分の文章だと主張することを意味しますが、関連する側面として、以前に発表した自分の文章をどこまで使えるかということがあります。これはテキストリサイクルまたは自己剽窃と呼ばれる行為です。
※詳しくはエディテージ・ブログのこちらの記事をご覧ください。
剽窃を避けるには
どのような行為が剽窃にあたるのかを理解できたら、剽窃の罪に問われるのは避けることができるはずです。以下はそのヒントを紹介します。
- テキストをそのままコピー&ペーストするのではなく、言い換えてください。自分の言葉を使用すれば、剽窃と非難されることはありません。
- 過去に発表された文章をそのまま使用した場合は、引用符で囲み、適切な引用によって出典を明記してください。
- メモをとる際には、出典の書誌詳細をすべて記録します。
- Turnitin、Plagaware、Quetextなどのソフトウエアを使って剽窃のチェックを定期的に行っている人は、例えば引用符内の参考文献やテキストがチェックの際に除外されることに気づいていないことがよくあります。高い「類似率」に直面した場合に、自己弁護できるように準備しておきましょう。
- ChatGPTのようなAIツールの使用を認めること。これらによって生成されたテキストは、類似性指標で高いスコアを獲得することがよくありますが、剽窃には当たらない可能性があります。
プロの英文校正者が剽窃をチェック
リアルタイムに言語と文法を修正するための提案を行い、著者がより良い文章をより速く書くことを支援するAIライティングアシスタントPaperpalには、無料版・有料版共に剽窃チェックレポート機能が搭載されています。こちらもぜひご活用ください。
参考文献
- University of Oxford [no date]. Plagiarism: Information about what plagiarism is, and how you can avoid it. https://www.ox.ac.uk/students/academic/guidance/
skills/plagiarism - https://www.politico.eu/article/second-norwegian-minister-ingvild-kjerkol-quits-amid-plagiarism-scandal/
- Harvard University. 2023. Statement from the Harvard Corporation: Our President.
https://www.harvard.edu/blog/2023/12/12/statement-from-the-harvard-corporation-our-president/ - Wager E. 2014. Defining and responding to plagiarism. Learned Publishing 27: 33–42
この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。