アカデミックライティングにおける「ヘッジ」とは？

April 25, 2024

アカデミックライティングでは、研究者や学者は、自分の発言や主張のトーン、包括性を考慮する必要があります。論点を証明しようとするあまり攻撃的になりすぎていないか、あるいは弱すぎないか、自問する必要があります。研究特有の複雑さを認識しながらも学術論文が自信に満ちているように表現するのに苦労したことがあるのなら、「ヘッジ」はまさにそれを達成するのに役立つテクニックです。

ヘッジは、主張を和らげ、研究や入手可能な証拠に基づいて著者が伝えたい不確実性または確実性の程度を表現するのに役立つ言語戦略です。この記事では、ヘッジとは何か、なぜアカデミックライティングにおいてヘッジが重要なのかを探っていきます。また、よくある間違いの回避やコンテキストの役割の認識など、ヘッジを効果的に使うための実践的なヒントも紹介します。

アカデミックライティングにおけるヘッジの重要性とは

知識や科学における不確実性の要素や程度を見過ごすことはできません。それゆえ、教育や研究の文章において絶対的な主張をすることは、暫定的なものとしての科学に対する伝統的な理解に反する可能性があります。ヘッジを用いることで、学術ライターや研究者は、別の視点や解釈の可能性を認識します。そうすることで、研究者や学者は、自分たちの発言が議論や討論の余地があるいう事実を受け入れることになります。ヘッジはまた、彼らの主張に信頼性を与えます。

次の文を考えてみましょう。

‘Eating more than four eggs a day causes heart disease’
「1日に卵を4個以上食べると心臓病を引き起こす」

‘People who rise early remain alert throughout the day.’
「早起きする人は、一日中注意力を保っている」

これらの記述は、読者に疑念の種をまいたり、多くの疑問を抱かせたりします。しかし、「probably」や「could」といった言葉を加えることで、より柔軟で議論の余地のある文章にすることができます。

修正した文章をもう一度見直してみましょう。

‘Eating more than four eggs a day could cause heart disease’
「卵を1日に4個以上食べると心臓病になる可能性がある」

‘People who rise early probably remain alert throughout the day.’
「早起きする人はおそらく、一日中注意深くいられるだろう」¹

アカデミックライティングにおけるヘッジの使い方

アカデミックライティングでヘッジを使うことは必須ですが、使いすぎてはいけません。研究者は、信頼できる研究を提供するために、ヘッジの使用法を知り、スキルを身につけなければなりません。著者は特定のヘッジ手段を利用することで、根拠のある文章を書くことができます。

これには、以下のような文法的ツールの使用が含まれます。

suggestなどの動詞は、indicateのように捉えられる傾向があります。例えば、‘Earlier studies indicate…’
may、might、can、could などの法助動詞。例えば、‘Industries can make use of …’
much、many、some、perhaps などの形容詞。例えば、‘within some micro-credit groups.’
probably、likely、often、seldom、sometimes などの副詞
That節。例えば、‘It is evident that…’
距離－主張から距離を置く。例えば、次のように提示します。‘Based on the preliminary study…’, ‘On the limited data available…’

このような手段を組み合わせて、主張の強さのバランスをとることができます。例えば、二重ヘッジでは、次のように言うことができます。‘It seems almost certain that…’

ただし、ヘッジを多用すると、主張のインパクトが薄れてしまう可能性があります。理想的には、ヘッジは明瞭さを高め、議論の場を醸成するものであって、不必要な曖昧さを作り出すものではありません。

アメリカの著名な作家エドガー・アラン・ポーは、「The believer is happy, the doubter is wise.（信じる者は幸福であり、疑う者は賢明である）」という洞察に満ちた言葉で疑いの本質を言い表しています。この言葉は、アカデミックライティングにヘッジを用いることの利点を的確に捉えています。確固とした証拠やデータが議論の基礎となる場合もありますが、ヘッジを実践することで、アイデアが自信過剰な主張としてではなく、信頼できる思慮深い視点として提示されるようになります。慎重な言葉遣いによって、アカデミックライターは敬意と開放的な雰囲気を作り出します。このアプローチは、多様な視点を認めるだけでなく、著者が反論や別の視点を受け入れる姿勢を持っていることを読者に示します。これは、より豊かで、より包括的な学術的議論を促進します。アカデミックライティングにおけるヘッジの効果的な使い方のヒントは以下の通りです。

アカデミックライティングでヘッジを活用するためのヒント

アカデミックライティングにおけるヘッジは、単に主張を和らげるだけではありません。証拠の強さを戦略的に伝え、ニュアンスのある議論を促進することが重要です。ヘッジを効果的に活用するためのヒントを紹介します。

コンテキストと適切な用法を理解する

ヘッジのみを目的として使用すると、フローが中断され、逆効果な結果を招く可能性があり、作業の信頼性に関する不必要な批判や疑念を招く可能性があります²。ヘッジの目的は、主張が自信過剰に見えたり、弱々しく見えたりしないようにバランスを取ることですから、状況を意識して適切なヘッジを行う必要があります。では、どのようにヘッジすれば慎重なトーンになるのでしょうか？　主張のトーンをバランスよく表現するためには、主張の確信度が低いものから高いものまで、ヘッジの手段を織り交ぜて伝える必要があります。例えば、確信度が低い場合は、「may、could、might」、確信度が中程度の場合は、「likely、appears to、generally」、確信度が高い場合は、「must、should、unfinitely」といった言葉を使います。すべては手元にある証拠次第です。

正確で的確な表現を使う

正確で的確な表現を使うこと、特に、持っている証拠に基づいて適切な強さのヘッジ手段を使うことが重要です。主張が弱くなりすぎて、主要な議論やアイデアが崩れてしまわないように注意しましょう。ヘッジには洗練された言語能力が必要であることを忘れてはいけません。例えば、「possibly」や「probably」といったヘッジの言葉を使う場合、その微妙な違いを理解することが極めて重要です。「possibly」は、結果が実現可能な範囲にある場合に使うべきで、「The weather data shows that it will likely rain tomorrow.（気象データを見る限り、明日は雨が降りそうだ）」となります。一方、「probably」は、「The latest weather data shows it will probably rain next week.（最新の気象データによると、来週はおそらく雨が降ります）」のように、絶対的な確実性はないものの、可能性が高いことを示します。

根拠と正当性を示す

根拠と正当性を示すと、確実性の程度をより明確に表現できるようになり、具体的でないことも認識できるようになります。裏付けとなる証拠なしに一般化したり、断定的な発言をしないよう注意しましょう。情報によって発言を実証する責任を怠ると、そのインパクトが薄れてしまいます。データを活用することで、主張に正確さと精度を与えるだけでなく、その信頼性を高めます。さらに、アカデミックライティングにおいてヘッジを用いることは、リサーチや執筆を行った時点の証拠に基づいて主張を明確に伝えるのに役立ちます。状況は変化する可能性があり、後日発見がなされる可能性があることを認めるものです。

フィードバックと査読を求める

自分の論文を第三者や同僚・教員にしっかり読んでもらうことを常にお勧めします。外部からのフィードバックや査読のプロセスにより、論文にある程度の改善や改良が必要と思われる特定の部分が浮き彫りになります。積極的にフィードバックを求めることで、アイデアに評価を求めるという明確なメッセージを伝えることができます。このような積極的なアプローチは、建設的な洞察を受け入れる姿勢を示すだけでなく、集合的な知識の追求に価値を置く学術的誠実さの模範となります。このフィードバックの手順を受け入れることで、ヘッジの実践は、学術的な厳密さの理念を維持するだけでなく、継続的な改善と成長のエコシステムも生み出します。

ヘッジとは、知識を追求する際に多様な視点を受け入れる意思を反映する言語的手段です。学識経験者がそれぞれの分野で活躍するとき、ヘッジは味方として現れ、学問の境界を押し広げるニュアンスのある議論を促進します。

参考文献