論文執筆において「英文校正」をプロに依頼するかどうか判断に悩んでいる方は多いかもしれません。 今回は英文校正の特徴と、そのメリット・デメリットをお伝えした上で、英文校正サービスの選び方をご紹介いたします。
英文校正とは?
英文校正とは、英語で執筆された文章をチェックし、英文法やスペリング、表記のゆれ、文章構成の矛盾がないかを確認し、文章を目的に適した状態に整える作業のことです。また、原稿を出版、または掲載する媒体ごとに設けられている用語や表記のルールと照らし合わせて、最終原稿がルールに準拠しているかを確認する作業も含まれます。
エディテージが携わる学術業界における「英文校正」とは、主にジャーナル投稿前の英語論文を出版に適した英文とフォーマットに整える作業のことを指します。校正作業には、英語論文の英文法やスペリングのチェックのほか、専門用語のチェック等も含まれます。また、学術ジャーナルにはそれぞれ独自の投稿規定があり、規定にそった論文になっているかが論文のアクセプトに影響を与えます。そのため、プロによる校正作業には多くの場合投稿規定に合わせたフォーマット調整やリファレンスチェック等まで含まれます。学術論文の英文校正には高度な英語能力だけでなく、対象の専門分野における深い専門知識が求められるのです。
英文校正と英文校閲の違い
日本語で言う「英文校正」と「英文校閲」にはどのような違いがあるのでしょうか。一般的にはどちらも印刷・出版前の原稿を精査するという意味では同じですが、「校正」は主に表記の統一や誤字脱字のチェックを行い、原稿の体裁を整える作業であることに対し、「校閲」は文章内容の事実確認を行い、必要に応じて内容を補うことが目的です。
エディテージを含む多くの英文校正会社が提供する「英文校正サービス」は、「英文校正」と「英文校閲」、どちらの意味も含んだサービスを「英文校正」と統一して読んでいることがほとんどです。各社でグレードや価格帯により、どこまで原稿に踏み込んだチェックを行うかが変わってきます。
たとえば一般的に「英文校正」と名乗るサービスの中でも、あくまでも英語表現・表記のチェックを行うものから、論文の文章構成に踏み込んだ校正、また論文の研究内容を科学的観点から分析し、投稿前の査読を提供するものまで存在します。自身が必要とする校正レベルに合わせてプランを選択すれば問題ありません。
英文校正会社の選び方
英文校正会社を選ぶ際に、ご予算や締め切りがある研究者の方々にとっては価格や納期が重要です。それ以外により安全でご自身に最適なサービスを選ぶために確認すべきポイントをいくつかご紹介します。
- 品質保証と情報管理
ジャーナル受理に向けて、論文がしっかりと分野の専門家による校正が行われているか、品質管理の工程も含めた校正の品質は最重要視したいポイントです。
原稿納品後のフィードバックや校正者とのやり取り、再校正等のプロセスも校正会社やサービスによって異なります。また、投稿前の学術論文は知的財産であり機密情報であるため、校正会社の情報管理のプロセスも重要なポイントです。
- オプションサービスの充実度
論文の英文校正以外に付帯するオプションの充実度も、英文校正会社を選ぶ際の判断基準となるでしょう。
英文校正証明書の発行や単語数削減といった一般的なものから、カバーレターの代筆や図と画像のフォーマット調整、剽窃チェックレポートの作成まで選べるものもあります。
予算や納期、投稿するジャーナルによって外注したい作業がある場合、検討中の英文校正会社がそれらのオプションに対応可能かどうか、納期と予算を含めて確認してみましょう。
- 再校正の料金や期間
校正が完了し、納品された原稿に後から変更や追加を加えた場合、その度に改めて校正サービスを依頼してしまうと費用がかさんでしまいます。納品後の原稿を修正した場合は再度ネイティブチェックを受けることが望ましいですが、再校正の仕組みや料金設定は、校正会社や提供するサービスによって異なります。
校正会社によっては無料で再校正のオプションが利用できる場合もあります。更には修正した論文の再校正だけでなく、査読者からのコメントと修正後の原稿を突き合わせて、漏れがないかの確認を行いつつ、査読者への返信文まで校正できるサービスもあります。
また論文投稿後のリバイスに時間がかかってしまった場合を想定し、再校正の期間が十分にとられているかどうかも、併せて確認すると良いでしょう。
英文校正サービスを使うメリット
日々、研究や臨床に励む研究者の方々は、論文執筆に十分な時間を割けず、英文校正を含めた論文執筆の計画を立てることが難しい場合もあるでしょう。英文校正サービスにはコストも発生するため、自分自身でチェックを行う、もしくは知人のネイティブの研究者などに英文チェックを依頼して、可能な限り自分自身のスケジュールで論文投稿まで進めたい、と思うかもしれません。必ずしも外部の英文校正サービスを使わずとも、国際ジャーナルに英語論文を投稿をすることも不可能ではありません。では、プロフェッショナルな英文校正サービスを使う具体的なメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
- 英語面でのエラーを、高い確率で防ぐことができる
査読者の立場で考えれば、文法やスペルミスといった最低限の英語のエラーのない論文はジャーナル掲載の最低条件だと言えるでしょう。どんなに研究内容が優れていても、英語や文法にミスがあればその時点でリジェクトの可能性は大いに高まってしまいます。
近年では機械翻訳や自動英文校正ツールも発達しているため、GrammarlyやGingerなどの文法校正ツールを使って、自分自身で最低限の英文校正をすることも可能です。しかし、AIによる校正ツールでは当然のことながらジャーナルの投稿規定に沿ったルールの設定はできず、またAIの精度によってはミスを見落とされたり、不必要な修正が施されてしまう場合もあり、分野ごとの専門用語や特別な用法などもまだまだ改善の余地があるとされています。英語面の懸念事項を確実にクリアするためには、やはりネイティブかつ分野に精通した校正者の目を通すことが望ましいでしょう。
- 時間の節約になる
ジャーナルの締切に間に合わせて論文を投稿できたとしても、英語面でのエラーが多い論文はデスクリジェクトされる可能性が高く、今度は戻された論文を別のジャーナルに投稿し直すといったプロセスが発生してしまいます。投稿前の段階で英文校正を含めた推敲のプロセスに十分に時間をかけることが、結果的に時間の節約になります。
プロフェッショナルな英文校正会社は数多くの校正者を擁しているため、短納期での校正依頼にも対応可能です。
忙しく、ジャーナル投稿まで時間がない場合でも、予算に応じた納期を指定して校正依頼をすることで、ジャーナル投稿に間に合わせるスケジュール調整をすることができます。また英文校正だけでなく、カバーレター作成や画像のフォーマット調整など上述のオプションを適宜活用することにより、さらに効率良く論文を仕上げることも可能になります。
- 剽窃・盗用のチェックができる
自身が意図せずとも、論文に先行研究論文と類似する表現が含まれていたり、引用を見落としてしまい、ジャーナルから剽窃・盗用の可能性を指摘されリジェクトの対象となってしまう可能性があります。
比較・照合すべき論文データベースの数は日々増えて行くため、最新の剽窃チェックサービスを提供している英文校正会社による正確なチェックを通せば、意図しない剽窃を高い精度で防ぐことができます。
英文校正サービスを使うデメリット
では、逆に英文校正サービスを活用することで生じるデメリットはあるのでしょうか。
- コストが発生する
無料で活用できるAIツールを除き、英文校正会社、フリーランスの個人問わず英文校正を他者に依頼した場合、当然のことですが対価を支払う必要があります。論文執筆になるべく費用をかけたくない場合、英文校正サービスの利用はデメリットになると言えます。
論文のボリューム(文字数)や依頼したい校正・サービス、オプション選択などの度合いによって金額は変動します。予算を抑えたい場合は目的に応じて適切なサービスを選択し、必要に応じて英文校正会社のカスタマー・サービスに相談してみるのもいいかもしれません。
- 意図と異なる校正になることがある
校正者はプロフェッショナルとはいえあくまでも別の人間なので、自分が思っていたような校正がなされない場合があります。校正者が著者の意図を正確に汲み取れず、本来の意図とは異なる英文校正がされてしまうことがあるかもしれません。
納品後の校正箇所に疑問が生じたり、校正の品質に納得がいかない場合、多くの校正会社ではフィードバックなどを通じて修正や再校正を依頼することが可能です。
英文校正の料金相場
上述したように、英文校正の料金はどこまで原稿に踏み込んだチェックを行うかによって異なりますが、相場は大まかに以下のように分類できるでしょう。
- オンライン校正ツール・校正アプリ:AIによる英文のチェック、修正候補の表示
- 月額利用料 2,000円~4,000円
- 人の目を通さない簡易的な校正のため、精度にバラツキがある可能性があります
- 文法・語彙を中心としたスタンダードな英文校正
- 料金相場:4.5円~12円/単語 ※当日納品:16~18円
- 文法や英語表現を中心にチェックする低価格・短納期な英文校正
- 最短で当日の納品も可能な場合があります
- 論文の構造にまで踏み込んだプレミアムな英文校正
- 料金相場:10円~24円/単語
- 論文投稿に必要な再校正などのオプションやアフターサポートも付帯されているケースが多い。
- トップジャーナルが求める高い完成度を目指す、投稿前査読を含むハイレベルな英文校正
- 料金相場:27円~34円/単語
- 査読者としての経験のある専門家が、研究内容にまで踏み込んで論文の改善ポイントを提案する。
- 専門性が高いため、提供する英文校正会社は限られています。
高品質な英語論文に仕上げて論文受理の確率を高めるために、専門分野の知識をもつプロの英文校正者が在籍する英文校正会社に依頼することには、保証やオプションサービス、校正者の分野カバー力の幅広さなど様々なメリットがあります。依頼する前に、サービスの納期や価格は執筆計画に見合っているか、自分が求めるサービスを提供しているのかなど、多角的な角度からぜひ検討してみてください。