人工知能(AI)は多くの業界を揺るがしており、専門家はAIを活用して効率と生産性を向上させることのメリットをますます実感しています。学術研究も例外ではありません。研究論文の執筆、編集、引用のいずれに使用するにしても、AIツールは研究プロセスのサポートに役立ちます。
学術分野におけるAIの利用に対する懸念が高まる中、研究者はAIが研究の質を大幅に向上させるメリットと機会を無視することはできません。
そのため、研究者はAIの利点だけではなく、学術研究にAIツールを使用する際に起こり得る問題についても認識しておく必要があります。
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研究者が最新のAIツールやテクノロジーツールを活用し、研究活動の効率化や生産性の向上につなげるための「研究支援AI・テクノロジーカオスマップ2023」。大学・研究機関や研究者が研究活動の質や効率を向上させるための最新AIツールやテクノロジーツールを網羅し、12カテゴリーに分けて紹介しています。
学術研究におけるAIの概要
AIの登場は、学術論文の執筆に革命をもたらしました。研究者はAIツールを利用して、研究助成金の申請や書籍、さらにはジャーナルの論文を執筆することができます。
また、研究者が論文を編集し、文法的に正しい英語を使うのを助けてくれるAIツールもあります。
実施した実験のデータを分析することは、研究の重要な側面です。AIを活用したデータ分析ツールは、研究者がより効率的にデータを分析し、バイアスのないプロセスを実現するのに役立ちます。
研究者は、論文の執筆やデータ分析に加え、論文に引用する科学文献を読むために数え切れないほどの時間を費やしています。毎年何百万もの新しい研究論文が発表されることを考えると、文献を追い続けるのは大変なことです。研究者は、複雑な論文を読んで要約できるAIツールを使うことで、数百時間を節約することができます。
研究者はまた、文献の引用や出典の整理にAIツールを活用することもできます。
AI ツールを使用して研究知識と文献レビューを取得する
読み取り、注釈付け、メモをとるためのAIを活用した調査ツールを使用すると、知識を得るプロセスを大幅に効率化することができます。このようなツールは、最も関連性の高い情報を強調した文献ソースからの抜粋をユーザーに提供し、その論文が読む価値があるかどうかを判断するのに役立ちます。
これにより、ユーザーは研究論文の中から関連する情報を素早く見つけ、どの段落を詳しく読むべきかを判断し、そのテーマに関するメモをまとめることができます。
このようなAIを活用したツールを最も効果的に研究に利用するためには、ユーザーは出力されたものを「真実」として受け入れるのではなく、批判的に評価し、AIが生成した要約に頼るだけでなく、原文を読む必要があります
アカデミックライティングにAIを活用する
数多くの情報源から複雑な情報を抽出し、それを独自のアイデアと共に説明することは、優れた学術論文の重要な側面です。このプロセスには、出典情報を追跡し、剽窃を回避できる効果的なメモ取り(ノート作成)システムが欠かせません。
AIツールは、論文に含めるために関連するメモを取り、整理するに役立つだけでなく、研究者が効果的に論文を書くのにも役立ちます。AIツールの中には、研究者が取ったメモから文章を言い換えるのをサポートしてくれるものもあります。このようなツールは、非英語圏の研究者にとって特に重要で、役に立ちます。
アカデミックライティングのためにAIツールを最も効果的に活用するには、研究者はメモの取り方や文章の書き方をAIだけに頼ってはなりません。研究者は、AIによって言い換えられた内容をコピーペーストするのではなく、言い換えられた内容を再定義することによって、より倫理的なライティングを実践することができます。
研究計画とデザインにAIを活用する
AIを活用した研究計画ツールは、機械学習アルゴリズムを使ってパラメーターを最適化します。実験計画プロセスを自動化することで、研究者は研究計画にかかる時間と労力を削減し、データ分析や解釈により多くの時間を割くことが可能になります。このようなAIツールは、研究開発コストだけでなく、人為的ミスも減らすことができます。
実験計画モデルの作成にAIツールを効果的に使用するためには、研究者は広範囲の変数やパラメーターを考慮してモデルを設計する必要があります。このようなモデルに特定の基準を入力することで、研究者は研究の成果を最大化する、最適なデザインを生成することができます。
データ分析にAIを活用する
従来のデータ分析手法が手作業と限られた計算能力に依存していたのに対し、AIを活用したデータ分析ツールは革命をもたらしました。このようなツールは、機械学習アルゴリズムを使用して、膨大なデータセット内のパターンを解釈、抽出、解明します。これにより、時間とコストが削減され、研究成果を生み出す効率を高めることができます。
データ分析にAIツールを効果的に使用するには、研究者はプロジェクトの目的を明確に定義し、分析を通じて達成したい具体的な洞察と成果を特定する必要があります。また、関連するデータを収集し、それがクリーンで適切に構造化されており、分析に適していることを確認しなければなりません。さらには、どのAIツールやアルゴリズムが分析目的に最も適しているかを特定し、決定することも重要です。
査読の支援にAIを活用する
査読のための投稿論文の量は増加の一途をたどっています。審査や査読にかかる時間を短縮することで、何百万時間もの労働時間が節約され、学術の生産性を高める可能性があります。AIを活用した査読ツールは、低品質または物議を醸しそうな研究にフラグを立て、査読者がそのテーマに関する専門知識に基づいた論文とマッチングできるような、半自動査読システムの可能性を生み出します1。
AIはまだ査読を行うことはできませんが、AIツールを査読プロセスにおいて効率的に使用することで、論文に適したジャーナルの提案や、投稿された論文の初期品質管理、査読者を見つけることなどができます。
学術研究におけるAI活用のメリットと機会
AIツールを正しく活用すれば、時間を大幅に節約でき、研究者が時間を効率的に管理できるようになりますし、それにより研究者の効率と全体的な生産性が向上します。また、AIを活用したツールにより、研究者は自分の仕事を批判的に振り返らせることができます。例えば、AIが生成した研究者の文章の要約は、研究者の主な発見をより明確に定式化する必要があることに気づかせてくれるかもしれません。
学術研究にAIを使うことの落とし穴
AIには欠点があり、人間の研究者に取って代わることはできません。その最もわかりやすい例が、実際の出版物を使用する代わりに学術文献を発明する生成AIです。
AIを活用したツールは、学術研究者をサポートするために使用されるべきであり、学術研究者の批判的思考能力に取って代わるものではありません。AI支援ツールは、研究者が研究を行う際の時間とリソースを最適化するために使用するのが最も効果的であり、論文や学位論文、助成金申請書を研究者の代わりに書くものではありません。
加えて、AIツールは研究者の創造性や独創性を失わせる可能性があります。AIはインプットと既存の研究知識に基づいています。科学を発展させるには、その分野の人々による独創的、創造的、批判的思考が必要です。
また、AIが生成したテキストをコピーペーストするだけでは、剽窃につながる可能性があります。
AIを効果的に使うための研究者へのヒント
研究者は、研究のプロセスを強化し、時間を最適化するために、AIを活用したツールを使う必要があります。以下のヒントのいくつかは、研究者が学術分野でAIをより効果的に活用するのに役立ちます。
・AIツールが生成したコンテンツを「真実」として受け入れるのではなく、ファクトチェックをしましょう。
・学術論文などの論文を執筆したり、助成金申請を行うのに、AIツールに依存しないでください。投稿要件に従ってオリジナルのコンテンツを編集または構成するためにAIツールを使用しましょう。
・参考文献を生成するのにはAIツールに頼らず、参考文献の管理と引用にAIツールを使用しましょう。
・AIツールによる分析に適した、関連性の高いクリーンなデータを収集しましょう。
・課題に最適なAIツールを特定し、選択しましょう。
・アルゴリズムがトレーニング、テスト、検証されていることを確認しましょう。
・研究に使用する前に、機械学習アルゴリズムから人間による意識的・無意識的なバイアスを取り除きましょう。
参考文献
Checco, A., Bracciale, L., Loreti, P. et al. AI-assisted peer review. Humanit Soc Sci Commun 8, 25 (2021). https://doi.org/10.1057/s41599-020-00703-8
この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。