2022年に創業20周年を迎えたエディテージ。その最初のお客様である、東京大学生産技術研究所・所長の岡部徹教授に、カクタス日本代表の湯浅誠が、エディテージとの出会いや当時の様子、岡部先生が感じるエディテージの魅力や今後に期待することなどについてお話をうかがいました。20年にわたって、エディテージを信頼し、利用し続けてきたその理由とは。貴重なお話をぜひご覧ください。
聞き手:湯浅誠(カクタス・コミュニケーションズ日本支社代表)
岡部徹教授プロフィール
1965年 (昭和40年)京都市生まれ。ロンドン日本人学校、筑波大学附属高等学校を経て、88年、京都大学工学部冶金学科卒業。同大学院博士課程へと進み、チタンなどのレアメタルの精錬に関する研究で93年に博士号を取得。その後、日本学術振興会海外特別研究員として渡米、マサチューセッツ工科大学の博士研究員として約3年間留学。東北大学素材工学研究所 (現:多元物質科学研究所)の助手として5年間勤め、2001年より東京大学生産技術研究所の助教授に着任し、同研究所の准教授を経て、09年から教授に就任した。19年から21年まで東京大学 副学長に就任。21年から東京大学生産技術研究所 所長。
エディテージ利用歴 20年(創業時~)
時間のない中でも質の高い論文を出そうと思うなら
プロの英文校正サービスは必須
湯浅-お話をうかがうのは、エディテージの創業以来の一番最初のお客様で、東京大学生産技術研究所・所長の岡部徹先生です。最初に、先生が研究をする際に直面する問題や、ご自身の論文などを出版する際に感じる課題をうかがえますか?
岡部-人によっても異なるとは思いますが、私の場合は研究のテーマが難しいこともあり、学生の時から同じようなことをずっとやり続けていますが、課題が永遠に尽きる終わることがありません。また、大学人の場合、研究だけでなく、場合によっては大学のマネジメントや教育もやらなければなりません。私の場合はさらに、産学連携もやる必要があります。ですから、時間がどんどんなくなっていくんですね。
そのような状況の中でも、クオリティの高い論文を出そうと思ったら、英文校正などで論文をさらに磨き上げることが欠かせません。そこをエディテージにお願いすることによって、時間の節約と質の向上の両方を実現することができ、この20年間、本当に感謝しています。
湯浅-ありがとうございます。英文校正を外部に委託することの価値を、先生はどのように感じていらっしゃいますか?
岡部-自分でやるよりも確実に、プロにお願いして英文のクオリティを上げてもらうことができ、なおかつ時間の節約にもなるのは、大きなメリットですね。しかも私の場合、英語論文を書くだけでなく、申請書や推薦状なども英語で書く必要があることがあります。推薦状などは多くの個人情報が含まれるため、なかなか外部に依頼できないのですが、エディテージとは強い信頼関係ができているため、難しい推薦状でもまずはエディテージにお願いして、パワフルな推薦状にしてもらっています。これは非常に便利で、今でもかなり活用させてもらっています。
湯浅-信頼していただいて、ありがとうございます。
岡部-ほかにもエディテージの使い方として、例えば学生が英語の論文を見せてきたとき。何を書いているかわからない場合があるので、まず私に見せる前に、エディテージに校正をお願いしなさいと。そのうえで、日本語で書いたものと、エディテージから戻ってきた英語のものを一緒に提出させて、それを私が添削するようにしています。学生はそこで指摘されたことを英文にして、エディテージに戻すといった流れです。校閲の仕事が増えてしまうので、御社にとっては手間かもしれませんが、学生の教育になりますし、私にとっても質の低い英語を読んでチェックするという苦労から解放され、すごくありがたいです。
20年前、エディテージ設立から6か月
顧客は私ひとりだけだった
湯浅-エディテージを信頼し、非常に活用していただいている岡部先生ですが、そもそもどういうきっかけで、弊社とお付き合いいただくようになったのでしょうか?
岡部-私がこの東京大学生産技術研究所に赴任してきたのが21年前なのですが、赴任してきてすぐに会ったのが、アビシェックさん(現カクタス本社社長)でした。たしか、岡部研の初代の秘書の息子さんがアビシェックさんと仲のいい友達で、ビジネスの相談をしたいと紹介されたのがきっかけだったと思います。私自身は起業などはしていませんでしたが、そういう相談に乗るのは好きだったので、話を聞いたのが最初でした。
当時に私が受けた相談は、Eメールを使って添付ファイルで、Wordに修正履歴が残ることを利用した校閲サービスをしたいということでした。成長するポテンシャルがあるし、ビジネスとして成り立つことは確信したのですが、果たして本当にできるのかと。ただ、インベストメントバンカーをしていた私の父と私、アビシェラックさん、共同経営者の方を会食したときに、ビジネスの目利きのできる父も、とてもいいことなので大いにやりなさいと。そこで、彼の熱意やビジネスプランに対して、みんなで支えていこうと、まずは私が利用しようと約束しました。
湯浅-そこでエディテージの最初のお客様が岡部先生となったわけですね。
岡部-ところが驚いたのが、会社ができて最初の6か月間、顧客は私だけだったんです!。社員3人に対して、最初の顧客である私1人で6か月。この会社、本当に大丈夫か?と思いましたね。私が、他にお客様ができたかと聞くと、まだできませんと正直に言ってくるものだから、これは何とかして支えてあげなければと思いました。
湯浅-それはすごいですね。お陰様で今では業界1位といえるくらいにまで成長しましたが、20年前にはここまで成長するなんて想像できなかったのではないでしょうか。
岡部-まったくできませんでしたね。ただビジネスとしてポテンシャルがあるということは間違いなかったと思います。今ではEメールを使ってのやりとりや、Wordの修正履歴、コメントなども当たり前のように使っていますが、当時にそこに着目したのはすごく偉いと思います。
それと、日本とインドの時差をうまく使おうとしたことですね。
湯浅-インドのほうが日本よりも3時間半遅いので、日本の夜遅い時間でも対応することができます。
岡部-研究者なんて、原稿ができて校正の発注をしたくなるのは、だいたい夜ですからね。自分がやれるだけやって、あとは任せてしまおうと。うまく時差が機能していて、すごいですよね。
顧客が私ひとりだったところから、今では日本国内だけでも何万人もの顧客がいるんですから、やはりアイディアがとてもよかったのだと思います。
顧客の要望に全力で応えてくれる
だから一緒にもっと良いものにしていきたい
湯浅-岡部先生には、フィードバックをいただいたり、ビジネスのアイディアもいただいたりと、一顧客として以上にいろいろとお世話になっておりますが、そこまでしていただける理由は何でしょうか?
岡部-そうですね、私はビジネスプランを提供したり、サービスの改善の指摘をしていますが、エディテージがすごいなと思うのは、そういったことに対して全部、きちんと取り組んでくれることです。先ほどお話しした、推薦状の英文校正とか、学生に対してのツーラウンド・プルーフリーディング(再校正サービス)とか、学生が海外に持っていくポスターを見てほしいとお願いしたこともあります。中にはビジネスにならないものもあるのですが、ものによってはきちんとビジネス化している。
湯浅-なるほど。
岡部-顧客の要望や不平・不満など、こうしてほしいというニーズをしっかりとサービス化していこうという姿勢に、感心するとともに尊敬しています。だからこそエディテージに、もっと仕事をお願いしようということになるんですよね。
湯浅-そのように感じていただいていたんですね。ありがとうございます。この20年間のお付き合いの中で、エディテージをはじめ、カクタス全体のクオリティなどについて、岡部先生が感じる変化などはありますか?
岡部-私はまったく不満はないですね。とてもよくやっていただいていると思います。常に緊張感を持って仕事をしているのも伝わりますしね。たとえば私がクレームを入れると、湯浅社長をはじめ、全社を挙げてすぐに動いていただいている。それがわかります。
湯浅-お客様からの厳しい意見は、何も言わずにいなくなってしまわれるより、断然ありがたいですね。弊社のサービスを利用し続けていただきたいので、クレームはいくらでも言っていただきたい。そこに愛があると思っています。サービスの改善につながるクレームは、今後もどんどん出していただきたいと思っています。
デジタル技術の進化とともに
人が介するサービスの質の向上も欠かせない
湯浅-今後私たちは、さらにビジネスを拡大していきたいと思っていますが、どんなことをやったらいいか、エディテージにどんなことを期待するか、岡部先生の考えをおうかがえいできますか。
岡部-20年前は、英語が苦手な日本人や韓国人、中国人を相手に、Eメールで修正履歴付きのWordでの校正サービス、プルーフリーディングしたときにちゃんとコメントも書いてくれました。おそらくこれで必要十分でビジネスとして成長したと思いますが、今では自動翻訳などのサービスも出てきて、いろいろな判断がAIなどでもできるようになってきました。御社がすべきなのは、よりプレミアム感のあるハイクオリティーなサービスを提供することではないでしょうか。いくら自動翻訳が進んでも、書いている人が満足するレベルにさらに上げていく作業というのはやらなければいけないことだと思います。
湯浅-やはり、人でしかできない部分ですね。
岡部-そうです。たとえば、英語を日本語にするのは、自動翻訳すればだいたいの意味はとれるので、これは人を介さないほうがおそらく楽でしょう。日本語を英語にするのは、そうはいきません。人を介していいものを作り上げていくことが大事だと思います。だからこそ、そこをしっかりと差別化して、クオリティを上げること。エディテージでいえば、クオリティの高い編集者をいかにそろえるかということじゃないですかね。そうすればお客様は結局はそこに頼むことになると思います。
湯浅-なるほど。やはり大切なのは、とにかもかくにもサービスのクオリティを上げて、少しでもお客様のニーズにきちんと応えていくこと。こうした地道なことが一番重要なポイントになるのは、常に変わらないのですね。
岡部-でも20年でここまで成長したのは、本当にすごいと思います。私がうれしいのは、20年前に私か顧客になったとき、「エディテージ」という言葉は誰も知りませんでした。それが今では、例えば私のいる東京大学生産技術研究所でも、英語論文の話になるとエディテージの名前が若手研究者などからもよく聞くようになりました。「エディテージって知っている?」と聞くと、みんな「知っている」と答えますからね。
湯浅-岡部先生の協力のおかげだと思います。
岡部-ただ、「私が創業支援したんだよ」と言っても、誰も信じてくれないんです。また何か言っているよ、といった感じで(笑)
湯浅-コロナが落ち着いて、設立記念イベントなどもできるようになってきたら、岡部先生を主賓としてお呼びして、本当だと証明しないとですね。今後とも末永くよろしくお願いいたします。本日は貴重なお話をありがとうございました。