日本大学医学部ご所属の、鈴木翔先生にインタビューをさせていただきました。世界でもトップレベルの技術力を誇る日本の内視鏡診断と治療をご専門に、経験則ではなくデータと数字に基づく治療法を示したいという信念から、臨床と研究に励む鈴木先生。消化器内科に進んだきっかけや英文校正サービスの活用方法、論文執筆のモチベーション等についてお伺いしました。
※聞き手 近田レイラ(カクタス・コミュニケーションズ株式会社)インタビュー実施日:2018年8月31日
(以下、本文敬称略/肩書、ご所属はインタビュー当時のものです)
実際に私の論文を見てくれて、「それ試してみたらよかったよ」と言っていただくこともあります。
―――先生のご専門は消化器内科ということですが。
(鈴木) はい。一口に言っても、消化器内科は扱っている臓器が最も多いので、胃・腸・肝臓・膵臓・胆道と、臓器がたくさんあります。私が扱っているのは消化管といって胃や腸などの食物が通過する臓器がメインになります。食道や胃、大腸がメインの分野です。
―――食道、胃、大腸をメインに研究されているのですね?
(鈴木) はい。その中でも研究テーマは更に細部に分かれます。胃腸の疾患は分野が広くて、大きく分けると、炎症か腫瘍かになります。腫瘍は分かりやすくて、胃がんや大腸がんなどの、がんのことです。他方で炎症は、例えば潰瘍性大腸炎や、クローン病といった炎症性腸疾患が主になります。私はその中ではがん・腫瘍を専門にしています。私の上司ががんや腫瘍の専門で、早期胃がんの内視鏡治療法を確立した大家なんです。また、上司に出会う前にもがん研有明病院に勤めておりましたので、胃がん、大腸がん、またがんに行く1歩手前の腫瘍やがん発生の予防、発生したあとの治療法…そういったところが専門です。そのがんの診断と治療という中でも内視鏡診断と治療が専門で、それに関する論文が1番多いかもしれません。
―――まさに患者さんや日々の臨床に直結している研究ですね。
(鈴木) そうですね。私たちは病院で働きながらの臨床研究がメインなので、もうまさに実臨床、現場に直結する内容が多いです。例えば内視鏡治療法の手技、やり方の工夫などです。なので実際に私の論文を見てくれて、「それ試してみたらよかったよ」と言っていただくこともあります。
―――この分野に進まれた理由やきっかけはどういったものでしょうか?
(鈴木)先ほども言いましたが、扱う臓器が多いのが最大の魅力で、この科を選びました。ちょうど消化器内科を選んだときに、内視鏡でがんを取るという治療法が日本で確立してきた時期なのです。学生時代になかった治療法に出会って、「画期的だな」「私もこういうのをやれるようになりたいな」と思い、消化器内科の中の消化管がんの内視鏡治療を専門にしたいと思いました。
労力をかけて調べたら、治療法が180度変わる可能性があります。
―――実際に消化器内科に入られてみてからは、いかがでしたか?
(鈴木) 自分の目の前の患者さんに向き合うのはもちろん当然なのですけど、それだけじゃなくて、もう少しマスの目で、病気を治す方法を考えて行きたいと思うようになりました。私は幼少期からずっと陸上部で短距離をやっていたこともあり、数字に絶対的な価値観を持っていました。どの分野でもそうだと思いますが、上司からの教えが真実なのかは分からない。正しいと言うのであれば、数字で示したいという気持ちが強かったことが、研究をやり始めた最初のきっかけだと思います。
―――数字で根拠を示すということでしょうか。
(鈴木)はい。あと、私たちはEvidence Based Medicineといって、それまで主流だったエキスパートの経験則に基づいた治療法ではなく、欧米から論文を書いてデータを出した上で最良の治療法を決めて行こうという方針を学生時代から習ってきた世代でもあります。実際、研修医時代には危険だと言われていた大腸のポリープの治療法が、今では最も安全な方法とされています。たった十年で、治療法が180度変わっているんですよ。それくらい、データに基づかない経験則や人間の感覚がいかに曖昧かということは、たった十数年の医者の人生の中でも実感しています。どんなことでも完全なデータを取ることは難しいですから、当然経験則に基づくことは多いんです。それはそれで大事なことですが、労力をかけて調べてみたら転換するという可能性は多分にあると思います。そういうところを見つけられたら、大げさに言えば真実を探すことになるので、面白いですよね。論文を読む際も、データを出されていても必ずリミテーションがありますから、常に誰かが言ったことには疑問を持って聞くようにしています。客観的なデータが必要ですし、自分が良いと信じたやり方があれば、それを世の中に広めるためにもドキュメントにして出す必要がありますね。
―――そのためにもやはり英語論文を執筆し、海外に向けて発信していく必要がありますね。
(鈴木) そうです。世の中に知見を広めるには英語論文を書くしかないと思います。しかし、その場合に障壁になるのが英語です。論文の質を向上させるために英文校正が重要になります。エディテージさんはもう20回以上は使わせていただいておりますが、特にプレミアム英文校正プラス*が出てからは、ずっとプラスを使っています。*2018年12月にプレミアム英文校正に統合されました。
プレミアム英文校正は再校正をすればする度に、すごく原稿がシンプルになって良くなって行きます。
―――ありがとうございます。プレミアム英文校正プラスが出た当初から、どのような点に有用性を感じていただいておりましたでしょうか。
(鈴木)それまでは1つ下のランクのプレミアム英文校正を使っていました。エディターとレビュアーから来たコメントへのレスポンスについて、そのレスポンスを校閲してもらうという発想がなかったんですよ。でも、エディターやレビュアーの意図が本当に自分の理解でいいのかということは、常々不安を持ちながらやっていました。なのでプレミアム英文校正プラスが出たときに「あ、そこも見てくれるの?」と思って、すぐに使うようにしました。やっぱりレビュアーの意図や査読コメントに対して、本当に自分の理解でいいのかなっていうところまで見てくれるのはいいですよね。今後もプラスを使います。特に最近はフォーマット調整も無料になったんですよね?
―――そうです。追加料金無しで何度でもご利用いただけるようになりました。
(鈴木)自分が査読する側で見ると、途中でフォントが変わっていたりすると、「なんだこのいい加減なやつは」とか「ぐちゃぐちゃだな」という不愉快な気持ちになります。やはり、この論文に対して一生懸命にやっているという思いを示すためにもフォーマットの調整は大事だと思います。
―――ありがとうございます。他に何かサービスに対してご要望はありますか?
(鈴木)これは要望であり、良いところでもあるのですが…プレミアム英文校正は、願わくば1回で済んだら1番良いですね。先輩が使っていた他社さんの英文校正は、単純に英文の単語が変わったり、1文1文が変わるだけでした。しかし、エディテージさんは、最初に使ったときに驚いたのですが、パラグラフを入れ替えたりストラクチャーがダイナミックに変わって、真っ赤になって校正されて返ってきました。自分の言いたいことが分かりやすくなるので、それからずっと使い続けています。プレミアム英文校正は再校正すればする度に、すごく原稿がシンプルになって良くなっていくんですよ。なのでプレミアム英文校正は、正直3回ぐらい再校正に出してやっと満足します。3回くらいでかなり洗練されてくるのですが、それが1回で済むのが理想ですね。
(鈴木)でも、シンプルな表現でインパクトがあって、読みやすい原稿になるには、3回くらいの再校正は必要なんですよ。私の中では2、3回はやらないと満足しないので、そこはもう仕方がないとも思っています。それが、論文においてはスタンダード英文校正ではなくてプレミアム英文校正を選択する理由です。
内視鏡の領域は、日本から知識と知見を世界に輸出するポテンシャルがあります。
―――最近、先生が注目している治療法や研究分野等はありますか?
(鈴木) 最近はむしろ腫瘍から離れて、胃や腸の機能に注目しています。というのは、今までは胃の病気って腫瘍であるがんであったり、また胃潰瘍や十二指腸潰瘍といった内視鏡で発見できるものが中心でした。しかし今は、検査をしても何も見つからないのに、お腹が不調な人がたくさんいます。
―――そうですね。周りにもたくさんいます。
(鈴木) 病院で何ともないと言われるけど不調というのは、胃や腸の動き、消化機能などから来ているのではないかと言われています。がんはある程度治療ができるようになったし、早い段階で見つかれば治るようになりましたけど、その原因不明の不調の原因を突き止めて、診断していくことが、これからの先進国でのニーズだと思います。
―――今は治療法やお医者様の対処もバラバラという状況でしょうか?
(鈴木)バラバラです。ストレスと診断されたりもしますけど、本当にストレスかは分かりませんよね。下痢や胃もたれも、どういう人に症状が出て、どういう人がそうならないのか、明確に診断する基準が乏しいのが状況です。内視鏡はまだがんを見つけることにしか使われてないのですが、今後はそういった不調の診断に、内視鏡を使っていきたいなと思っています。
―――不調の診断に内視鏡を使うイメージがあまりないのですが…
(鈴木)ないですね。今は使用されていないです。だから夢物語ではあります。ただ可能性はあると思います。というのも、現状、医学の新しい知識や治療法はやっぱりアメリカがナンバー1で、アメリカで新しい機械や治療、診断法が開発されて、それを日本が輸入しているというのがほとんどなのです。ただ、消化器内科のさらに細かい内視鏡というニッチな領域では、日本のメーカーは世界シェア90%以上なんですよ。なので、また日本から知識と知見を世界に輸出したり、発表するポテンシャル、余地が残されているんです。なので私たちが論文を書いたり国際学会で発表するチャンスは多いほうだと思います。せっかくの地の利を生かして、やっていきたいなと考えています。
―――最後に今後の鈴木先生の研究の展望について、お聞かせください。
(鈴木)多施設、多国籍な研究を進めています。やはり単一施設で、単一人種での研究は、果たして全ての人口にそのデータが適応できるかどうかは分からないですよね。少なくとも多施設、プラス願わくば国をまたいで共同で前向きな研究するというのが、夢であり目標です。今は病院にはインターネットがあって、メールもスカイプもあるので、20年前と比べたらそういった研究が断然やりやすい環境です。昔は研究のデータはファクスで送ったりしてたのに、今オンラインでクリックで入力できるわけですから。ありがたい時代に生まれていますから、それを生かして研究を続けて行きたいと思います。