「日本の世界的にトップレベルのCTや放射線技師の技術を発信していきたい」中根淳先生(埼玉医科大学総合医療センター 中央放射線部 診療放射線技師)

埼玉医科大学総合医療センターの中根淳先生にお話を伺いました。診療放射線技師として臨床現場で働きながら、CTを使用した医療への貢献について研究をされています。エディテージの英文校正の感想、世界から見た日本の放射線技術の強みや課題点など、丁寧にお話いただきました。

※聞き手:近田レイラ(カクタス・コミュニケーションズ株式会社)インタビュー実施日: 2018年9月20日 (以下、本文敬称略/肩書、ご所属はインタビュー当時のものです)
目次

CTを使用した医療への貢献と、患者さんへの負担を軽減させる使い方の工夫をテーマにしています。

――― まずは先生の専門分野と研究テーマを教えてください。

(中根)私は診療放射線技師として仕事をし、わかりやすく言うとレントゲンを用いた検査を日頃行っています。研究分野は、患者さんの負担軽減を目的とした検査手法など、CTを使用した医療への貢献です。なかでもCTの造影剤といって、点滴のような感じで静脈から薬を入れて病気を見つけやすくするようなお薬があるのですが、その薬の体中での循環動態や、患者さんの精神的・肉体的負担を軽減させるための使い方の工夫などをテーマにしています。

―――造影剤を投与することによって、より病気が発見しやすくなるのですか?

(中根)はい。ただ薬って、普通は病気を治すために使うじゃないですか。でも造影剤って単に、そのとき検査で病気を発見しやすくするためだけに使うんですよ。だから、単純に言ってしまえば造影剤って人体には害でしかないんですよね。薬理作用はないと言われているので、少なければ少ないほど患者さんの負担が少ないんです。なので、せっかくこの用量を使うならよりよく画像化したいとか、あとは、もうちょっと少なくすることで患者さんの負担を軽減できないかなとか、一番はそういったところをテーマにしています。

―――薬の研究をメインにされているというのは少し意外でした。

(中根)もちろん研究内容が造影剤だけに特化しているわけではなく、放射線を普段扱っているので、CT検査の線量調整(被ばく低減)という点と、造影剤をどう活用するのか、その2つを上手く両立し融合させて、1+1が2以上になるような検査の研究をしているという感じですね。

―――ありがとうございます。先ほどおっしゃったように、患者さんの負担をなるべく軽くする研究といったところでしょうか。

(中根)基本的には、そうですね。造影剤は腎臓から排泄される薬なので、腎臓にはダメージのあるお薬と言われています。なので、造影剤を投与する患者さんの負担を軽減するのと、あと、皆様は健康診断でレントゲンの検査を受けても痛みはないですよね。でも、ちょっと放射線を浴びるの嫌だなっていう精神的な負担がありませんか。

―――言われますよね、やはり。被ばくという点では。

(中根)そうなんです。ただ、放射線量をむやみに少なくしてしまうと、CT画像はちょっとざらざらでノイズのような画像、言い換えると診断能の低い画像になりやすいんです。もちろん、放射線量を増やすという手法もありますが、造影剤を上手く使えば病気がしっかりと見えて、放射線量を減らしてもいいのではないかというところもあるので、造影剤と放射線量については上手く天秤にかける必要があります。その辺りを両立して研究しております。

―――よくわかりました、ありがとうございます。

重症度の高い急性期の患者さんには、診療放射線技師に求められる画像検査のニーズがあります。

―――先生のご経歴や、診療放射線技師になろうと思ったきっかけを教えていただけますか。

(中根)子供の時からよく病気をしていたので、X線検査のみならず、MR検査や核医学検査なども行ったことがありました。そのため、将来は医療職に就きたいなと思っていましたが、診療放射線技師になろうとは思っていなかったですね。私は栃木にある国際医療福祉大学という、看護師や理学療法士といった医師以外のメディカルスタッフを養成する学校に通いました。必要な単位を取得することで、診療放射線技師の国家資格を受験する資格が得られるので、それで国家試験に合格することで免許を取得し、実際の臨床現場に出る、という流れで現在に至っています。

―――埼玉医科大学にはどれくらいいらっしゃいますか。

(中根)2006年の4月に入職してから、ずっと在籍しております。埼玉医科大学は医師以外のメディカルスタッフも大学院の医学研究科に進めるので、今は大学院で医学博士を取るために論文を書いており、現在もそれでエディテージさんにお世話になっています。

―――大学を出てすぐ臨床現場ということですが、実際に出られてからいかがでした?

(中根)診療放射線技師は、病院の規模(導入されている機器)で仕事の内容が左右されるのですが、この病院は総合医療センターという名の通り多岐にわたっています。特に重症度の高い急性期の方を見る機会が多いです。ドクターヘリが常駐し、埼玉に限らず、都内や近県からも患者さんが運ばれてきます。高度救急救命センターや総合母子医療センターや、NICUという超未熟児のICUもあります。やはり急性期の患者さんに対しては、診療放射線技師の仕事である画像の検査ニーズがあります。たとえば交通外傷で意識がない患者さんに、「どこぶつけました?」とか聞けないですよね。そうすると、とりあえずじゃあ画像検査をしてどこに病気があるか調べよう、となるわけです。もちろん採血とか心電図とかの情報も大事であるが、時間に差し迫った状態では年々画像診断を必要とする機会が多いと感じます。

放射線というマニアックな専門分野でもしっかりとかみ砕いた校正をしてくれるのはうれしいです。

―――エディテージをお使いになったきっかけを教えてください。

(中根)きっかけは、2013年に国際学会に研究発表をエントリーしたときですね。採択率が3、4割と言われる欧州放射線学会というところに、駄目もとで演題を出したんですよ。その抄録作成のときにエディテージさんをたまたま見つけて使わせていただいたら結果がよくて、そこからずっと使わせていただいています。

―――ありがとうございます。

(中根)あと、私はこの病院では職員なのでいわゆる研究室を自分で持ってるわけでもなく、研究に使う英文校正などは全部自費なんですよ。そこで他社さんだと少量の文章を翻訳する場合でも最低2万円からですよといった価格設定のところが多かったんですけど、エディテージさんの場合は、1語や1ワードで料金設定があるので、個人で費用も含めてやりくりしている人にとっては非常にありがたいです。湯水のように研究費があるわけじゃないので。最初は値段が魅力的で選んだのですが、その欧州放射線学会に演題が通って、そこからエディテージさんに国際学会発表でお世話になってから落ちたのは1つもないんですよ。

―――本当ですか。それは大変うれしいです。

(中根)今まで1つもないです。自分みたいに自費で研究を続けていると、普通そういった国際学会では2、3年や4、5年かけてやっとアクセプトされるというケースが多いというのを聞くのですが、私は2013年からずっと使わせていただいて、全部通ってるんです。

―――もちろん先生のもともとの原稿のクオリティが高いということだと思いますけども…

(中根)いえいえ。なので今の価格でここまでやっていただけるなら、もっと安いところがあったとしてもエディテージさんにお世話になりたいと思います。あときっかけとしてはもう1つ、御社って医学分野の中からもけっこう細かく専門分野を選べますよね。

―――はい、医学・医療系の中でも220以上の専門分野に対応しています。

(中根)自分の場合はラジオロジー、放射線が専門分野なのですが、研究の中ではCTの画像の解析に関することも研究発表しておりまして、そんなの分かる人いるのかな?と思ったんですよ。でもその点もけっこうかみ砕いて校正をしてくれたので、驚きました。自分の研究の放射線自体が分野としてはどちらかというとマニアックだと思うんですけど、その中でももっとマニアックなところを私は研究しているので、その専門分野の論文もしっかり校正してくれるのは、うれしかったですね。

―――校正者もまた増えてもおりますので、ご満足いただいているということで、なによりでございます。

(中根)けっこう、どこの英文校正会社を使ってるのか聞かれるんですよ。海外の学会に全然通らない先生もたくさんいるのに、自分は毎回通ってるので、診療放射線技師の講演会とかで「どこの校正会社使ってるの?」って大体聞かれます。だから、「エディテージです」っていつも宣伝してます。

―――本当にありがとうございます。サービスの中で特に有用性を感じていただけてるポイントはありますか?

(中根)やっぱり論文を書き慣れていない人だとどうしても、複数のジャーナルに投稿せざるを得ないですし、多少権威があるジャーナルに投稿するとなると一番困るのがフォーマット調整です。そこも含めて勉強って言われたらおしまいなんですけど、フォーマット調整って、自分でやろうとしても難しいところがあります。エディテージさんの一番上のサービスだと、フォーマット調整に何回でも対応していただけますよね?あれはすごく助かります。いい意味で楽できるところは楽したいというのはあるので、フォーマット調整と、あとカバーレターを作っていただけるのは助かりますね。

日本のCTや放射線技術は、世界でもトップレベルです。

―――CTや放射線についての研究で、日本と海外を比較した特徴などはありますか?

(中根)CTや放射線の分野は、世界の中でも完全に日本が進んでます。理由としては、CTの装置は保有台数で日本が1番だからです。日本の人口に対して装置があり過ぎるんですよ。

―――それはメーカーのシェアや技術的な話なのでしょうか?

(中根)というより、日本人の性質もあるのではないかと思います。たとえば、どこかをぶつけて「湿布でいいですよ」って医師が言っても、「え、レントゲン撮らないんですか」って言われたり。環境的にも、日本は医療機器がかなり備わっているので、水準は確実に世界レベルです。そこでいうとアメリカは進んでないわけではないのですが、たとえば体が大きい人が多いので、造影剤のような薬もいっぱい使わなくてはいけないし、放射線量も、どかんと上げないと画像ができなかったりするので、分かりやすく言うとどんぶり勘定でいいんですよ。また、日本人は、細かいことを気にして探究するのが好きなんだと思います。そういった日本人の性質や日本の環境が、医療水準や画像診断の水準を高めているので、日本の放射線技術が世界でもトップレベルというのは確実です。ただ唯一、他国と比べるとコミュニケーション能力に欠けてて、それを発信できていないというのがデメリットとですね。

―――中根先生の同僚の放射線技師の皆さんも英語論文は書いてらっしゃいますか。

(中根)いえ、書いてる人はいないですね。そもそも診療放射線技師はそういう風習がないです。一部で頑張ってる方はいますけど、やっぱり日本だと、日本語で研究というのが主流です。ただ海外の学会に行くと海外の研究は日本よりもレベルは低いなというのは、明らかに感じます。こんなの数年前に日本でやってたことだよっていう風に。

―――では本当に、中根先生が積極的に英語論文を書いて海外のジャーナルに投稿する意義がありますね。

(中根)そうですね。最先端医療に関しては、薬事未承認とか、そういう臨床研究の環境は海外のほうが備わってるじゃないですか。そういったところではもちろん海外に分があるんですけど、技術力というのは確実に日本ですね。なのでずっと絶えず、年間で国内では4つ5つ、海外でも1つ2つは学会に参加して研究発表をするようにしています。

日本の放射線技師は研究や論文執筆もしていて、社会的にも認められている。そこを世界に発信していきたい。

―――お仕事をしていて、やりがいを感じるのはどんなときですか?

(中根)やりがいは、あまりないと言ったら失礼なんですけど、私たちって医療職にもかかわらず、病気が治ったという感想は絶対聞けないんですよ。どちらかというと、病気が見つかってしまったとか、いわゆる不安に思わせたりする場面が多いんですね。画像検査をするときって、病気があるかないか調べたり、がんが転移してないかを調べたり、患者さんは常に不安に駆られているところでの検査なので、正直、目の前の患者さんに対してやりがいを感じることは少ないのかもしれないです。あとの経過がどうだったとか、そういう話を聞けるときはやりがいがあるのかなとは思ってますね。

―――研究をする上で大切にしていることはありますか?

(中根)研究で大切にしていることは、いい意味で研究を趣味にすることですね。とはいえ、医療で研究する場合、相手は人なので、自分の私欲を満たすための研究はしないようにはしています。ゆくゆくは患者さんに何かメリットがあるとか、あとは必ずしもメリットがなくてもワークフローが改善したり、誰かしらの負担が軽減したりとか、そういったことにつながらないとあまりやっても仕方ないと思ってるので、そこは大切にしています。

―――ありがとうございます。では最後に、今後、研究者としてどのようなキャリアを積んでいきたいかについてお聞かせいただけますか。

(中根)私は論文を書くこと自体が仕事ではないのですが、先ほども言ったように、やっぱり日本の診療放射線技師のレベルはすごいんです。海外の学会に行くとよく分かりますけど、北米や欧州の学会で放射線の研究発表している人は医師ばっかりで、診療放射線技師が発表するなんて海外じゃまずあり得ないんです。診療放射線技師なんて写真を撮ってるだけのやつじゃないかみたいな、いわゆる地位がすごい低いんですよ。でも日本の診療放射線技師はすごく頑張って研究や論文執筆もしていて、社会的にもある程度認められていますし、メディカルスタッフや医師からも認められている職業なので、やっぱりそれを発信したいなと思いますね。やっぱり研究の成果を出すことが一番なので。それが一緒に働いているスタッフや、あと指導いただいている教員の先生への恩返しにもつながるので、そういったところを大事にして研究を続けていきたいなと思います。

―――貴重なお話、本当にありがとうございました。

お忙しい中ありがとうございました。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

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この記事を書いた人

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