オープンアクセスは科学プロジェクトと科学に対する一般の理解にどのような利益をもたらすか

How open access benefits the scientific enterprise and public understanding of science

オープンアクセスの様々な利点

研究分野におけるオープンアクセスの動きは、ここ数年で勢いを増しています。その主な焦点は、査読済みの科学文献にアクセスできるようにすることでした1。非オープンアクセスジャーナルの場合、読者は購読料を支払う必要がありますが、人々が出版された情報を読んだり、ダウンロードしたり、配布したりするのに金銭的または法的な障壁がない場合、ジャーナルはオープンアクセスとみなされます2

科学的成果を伝えるためのオープンなアプローチは、研究者、研究機関、そして研究そのものに利益をもたらします。

オープンアクセスは研究のプロセスに利益をもたらす

科学的成果を伝えるためのオープンなアプローチは、研究の迅速化、効率化、共同作業を促進することで、研究のプロセスに利益をもたらします。科学者が公開された文献にアクセスできれば、所属機関からアクセスできない論文を探すのに時間を費やす必要はありません。これは、研究がより迅速に、より効率的に進むことを意味します。

さらに、その分野の他の研究者が発表した研究にオープンにアクセスできることで、科学者は潜在的な協力者に連絡が取りやすくなり、研究成果の効率と質を大幅に向上させることができます。

所属機関のライブラリーを通じて購読ベースのジャーナルを読むことができる教員であっても、オープンアクセスにより、購読していないジャーナルの論文に迅速かつ容易にアクセスできるようになる可能性があります。ある調査では、参加した学術関係者の57%が、一部の購読論文の完全なコンテンツに「ほとんどいつも」または「頻繁に」アクセスできないと回答しました3

オープンアクセスはまた、科学者が他分野の専門家を見つけやすくすることで、学際的な研究に取り組むのにも役立ちます。科学的問題の解決には、複数の分野の専門家の意見や技術がますます必要とされるようになっているため、これは特に重要です2。オープンアクセスが科学分野を変革する能力の一例として、参照用ヒトゲノム配列といくつかのモデル生物の完全な配列の解読を目指したヒトゲノムプロジェクトがあります4

誰もが科学的研究の結果に自由にアクセスできるようになれば、品質保証はコミュニティーのプロセスとなり、聴衆である専門家が建設的な批評を提供したり、誤りや盗用を特定することで研究の質を高めることができます5。それと同時に、論文が自由にアクセスできることで広く読まれていれば、研究が盗用される可能性も低くなります6

さらにオープンアクセスは、研究発表のスピードも向上させます。ほとんどのオープンアクセスジャーナルは、合理化された使いやすいオンライン投稿プロセスを採用しているため、迅速な査読と承認が可能であり、その結果、研究結果がより迅速に出版されます。またオンライン出版はスペースの制約がないことを意味し、著者は読者が利用できるように補足資料を提出することができます7

著者や研究者にとってのオープンアクセスの利点

オープンアクセスは、研究のプロセスに大きな恩恵をもたらすだけでなく、研究者やその所属機関にも具体的な利益をもたらします。

オープンアクセスジャーナルに掲載された論文は、誰でもオンラインで自由に入手できるため、その知名度が最大化され、より幅広い人々の関与が促されます8。これにより、研究が最前線で取り上げられ、研究者にスポットライトが当たるため、他のグループが研究者に連絡を取り、共同研究を増やすことができます。

共同研究以外にも、研究成果をオープンアクセスジャーナルに掲載することは、情報を新しい読者に届けるのに役立ちます。幅広い読者がいると、その情報が再利用される可能性が高まり、他の人がその情報を基に研究を進めることができるようになります。これにより研究の影響力が高まり、ますます研究が奨励されます。

オープンアクセスジャーナル論文の知名度が上がれば、結果として研究論文の引用も増えます。例えば、出版社のTaylor & Francisによると、同社のハイブリッド・オープンアクセスジャーナルに掲載された論文の被引用回数は、オープンアクセスで掲載されていない論文に比べて95%多く、ダウンロード回数は7倍以上だったそうです8。また出版社のWileyによれば、オープンアクセス論文は、購読論文に比べて平均60%以上引用されていることがわかりました9

2019年に独自に実施された別の研究も、これらの結果を反映しています。Digital Scienceは、400万件以上の論文のデータセットを使用し、様々なタイプのオープンアクセスによって引用数とオルトメトリックの注目度の両方が増加し、研究のインパクトがより高まる可能性があることを報告しました10

被引用数の増加は、ジャーナルのインパクトファクターを増加させ、その結果、研究者の研究の影響力を評価するための指標であるh-indexを増加させます。h-indexが高いほど、研究者の昇進や終身在職の獲得につながり、研究者のキャリアの成功が後押しされます11

また、オープンアクセスジャーナルで研究を発表することは、研究成果をオープンアクセスで発表することを義務付けつつある研究助成機関の要件を遵守する上でも役立ちます8

オープンアクセスは学術機関以外にも利益をもたらす可能性がある

オープンアクセスジャーナルでの出版には、より幅広い読者にリーチできるという明確な利点があります。出版社のWileyは、調査を通じて、オープンアクセス論文はオープンアクセスでない論文に比べて、平均して約4倍多く閲覧されていることを明らかにしました。また、オープンアクセス論文は、オルトメトリックスコアの測定においても、より多くの注目を集めることがわかりました9

読者層が広がるということは、ジャーナルを購読する資金がなくても、科学の進歩を必要としている人々に研究が届くということを意味します。この最もインパクトのある例は、健康に関する調査や研究にアクセスすることで恩恵を得ることができる患者です。

新しい研究にアクセスすることで好影響を受ける可能性のある他のユーザーには、教育、専門家、実務家、およびビジネス分野のユーザーがいます。生物医学研究アーカイブであるPubMed Centralの利用データによると、1日あたり42万人のユニークユーザーのうち、25%が大学、17%が企業、40%が「市民」、残りが「政府およびその他」となっています1

オープンアクセスジャーナルで発表された研究結果は、ニュースで取り上げられる可能性が高いという調査結果もあり、オープンアクセス研究が一般聴衆に届く可能性が高いことを示唆しています12

ジャーナル論文のオープンアクセスはまた、公的資金による研究に実際に資金を提供している人々、つまり納税者が、資金を提供した研究成果にアクセスできることも意味します13

全体像

研究は、現代社会の基盤となるブレークスルーにつながります。研究の成果を伝えることで、こうしたブレークスルーが、新しい健康法の提供、気候変動に対する解決策の実施、地球温暖化などの問題との闘いを可能にし、社会の人々の生活を向上させていきます14。オープンアクセスジャーナルで研究成果を発表することは、研究者や学術機関に大きな利益をもたらすだけでなく、研究成果を必要とする人々、つまり社会の人々に届けることにつながるのです。

参考文献

  1. Swan, A. Policy guidelines for the development and promotion of open access; 2012. 
  2. What is open access? https://www.openaccess.nl/en/what-is-open-access
  3. A new mandate highlights costs, benefits of making all scientific articles free to read. https://www.science.org/content/article/new-mandate-highlights-costs-benefits-making-all-scientific-articles-free-read
  4. Hood, L. & Rowen, L. The Human Genome Project: big science transforms biology and medicine. Genome Med. 5, 79 (2013). 
  5. Open Access Journals. https://open-access.network/en/information/publishing/open-access-journals (2022). 
  6. 224064@au.dk. Advantages of Open Access. https://medarbejdere.au.dk/en/open-access/advantages-of-open-access
  7. About open access. https://www.springeropen.com/about/open-access
  8. Benefits of open access publishing. Author Services https://authorservices.taylorandfrancis.com/choose-open/publishing-open-access/oa-benefits/
  9. The Open Access Advantage | Wiley. https://authorservices.wiley.com/author-resources/Journal-Authors/open-access/the-open-access-advantage.html
  10. Benefits & Challenges of Open Access. in The ACS Guide to Scholarly Communication (American Chemical Society, 2019). doi:10.1021/acsguide.10502. 
  11. Wang, R. et al. Using the H-index as a factor in the promotion of surgical faculty. Heliyon 8, e09319 (2022). 
  12. Schultz, T. All the research that’s fit to print: Open access and the news media. Quant. Sci. Stud. 2, 828–844 (2021). 
  13. Martindale, D. LibGuides: Open Access: Benefits of Open Access. https://ru.za.libguides.com/c.php?g=174141&p=5161762
  14. Open Access. SPARC https://sparcopen.org/open-access/

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この記事を書いた人

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