エディテージ・グラント2023にて次点に選ばれた寺尾 俊紀さんに、受賞した喜びやご自身の研究について、グラントに応募して感じたことなどを語っていただきました。
寺尾 俊紀さんプロフィール
Toshiki Terao
2016年3月 岡山大学 医学部 医学科 卒業
2016年4月 岡山市立市民病院 初期研修医
2018年4月 亀田総合病院 血液・腫瘍内科 後期研修医
2018年4月 亀田総合病院 血液・腫瘍内科 医員
2022年4月 岡山大学病院 血液・腫瘍・呼吸器・アレルギー内科 医員
2022年5月 岡山大学病院 血液・腫瘍・呼吸器・アレルギー内科 研究助教 (特任)
2023年4月 岡山大学 大学院 医歯薬学総合研究科 血液・腫瘍・呼吸器内科学分野 入学 (講座担当教授 前田嘉信 氏)
一児の父であり、大学では研究や執筆活動、家では子供と戯れ、すぐに子供と寝てしまうなど、なかなか自分の時間が取れない中、マンガを読んだり、ネットフリックスを見たりして息抜きをしている。
受賞した研究内容について
造血細胞移植の有害事象である移植片対宿主病 (GVHD) に関する研究です。
エディテージ・グラント2023次点を受賞して
この度は、エディテージ・グラント2023の次点を受賞でき、誠に嬉しく思います。論文のアクセプトには英文校正は欠かすことができない行程であり、私のような大学院生は自由に使えるお金がありません。次点賞は大切に使わせていただきます。また、今回のグラントへの応募にご協力くださった関係者の方々へ深くお礼申し上げます。
ご自身の研究について
普段はマウスを相手にしており、マウスの細胞や組織で解析をしています。血液腫瘍領域では、マウスで得られた結果が比較的すぐにヒトにも応用可能になる可能性が高く、マウスの研究にも力が入ります。ですが、力を入れたからと言って、マウスが思い通りに結果を出してくれるわけではないので、試行錯誤の毎日です。どちらかというと、七転び八起きです。
血液腫瘍領域では、治療法の進歩が目覚ましい一方で、あらゆる血液腫瘍の根治治療になりうる造血細胞移植は、いまだ発展途上です。造血細胞移植の有害事象のみを抑制することができれば、あらゆる治療法のバックアップ治療として、また、フロントラインでの造血細胞移植も可能になるかもしれません。今は諸刃の剣として扱われることのある造血細胞移植をより安全に使いたいという思いから研究をしています。そして今後は、患者に届く研究や後世に残る研究をしたいと思っています。
普段、若手研究者として感じていること
ビッグラボとそれ以外のラボとの格差がどんどん開いている印象です。最近の解析は外注や試薬の高騰などで高額になりつつあり、それを駆使できるビッグラボが結果を出す一方で、業績のないラボは、グラントなどを獲得できず、研究を拡大できない傾向にあるかと感じています。競争社会ではこのような構造も受け入れられるかと思いますが、それでも業績のないラボに価値がないわけではないので、多くのラボから結果が出るといいなと考えています。また、日本の研究力の低迷もしくは衰退も懸念しており、研究力を上げるという意味でも、より多くの研究者・ラボから結果が出てほしいと考えています。
エディテージ・グラントに応募してみて感じたこと
エディテージ・グラントには、前職場の上司が出してみたらと後押しして下さり、応募してみることにしてみました。応募方法がエッセイという点が一番興味深かったです。エッセイは書いたことがなく、どのように書けば伝わるかということを考えていました。周囲の上司も友達も後輩も、エッセイは書いたことがないという人がほとんどであったため、エッセイをいかに書くかということに苦労しました。
セレモニーは参加することができませんでしたが、応募から受賞連絡までは比較的スムースだった印象です。選考中は、あと数日で結果を出しますという連絡もあり、ドキドキしていましたが、それでも進捗状況を知ることができたのは、良かったです。