エディテージ・グラント2023次点を受賞-沼田 賢治さんにインタビュー

エディテージ・グラント2023にて次点に選ばれた沼田 賢治さんに、ご自身の研究やグラントに応募して感じたことなどを語っていただきました。

沼田 賢治さんプロフィール
Kenji Numata


JA尾道総合病院での研修医を終了後、福井大学医学部附属病院の救急総合診療部に所属。後期研修医のカリキュラムとして小児救急科、集中治療科、総合診療科に従事し、後期研修終了後に緩和ケア科に従事。現在は、聖マリアンナ医科大学病院 救急医学に勤務。救急専門医のみならず内科認定医も取得し、幅広い医療を提供している。聖路加公衆衛生大学院1期生。T&Aマイナーエマージェンシーコースのコアメンバーとして活動している。海外の医療にも強い興味があり、USMLE step 1, 2CK, 2CS, 3 合格し、趣味で中国語を勉強している (HSK 3級取得)。今後留学を予定している。

2021年に第1子、2023年に第2子が誕生し、てんやわんやの毎日を過ごしている。
趣味は釣りとダイビング。離島医療に興味があり、時間があるときには人手が足りない施設を手伝いに行っている。

受賞した研究内容について

私は救急医です。日本は高齢化が進んでおり、高齢者の救急搬送が大幅に増加していることを実感しています。搬送された患者の中には、残された生きる時間が半年未満の方が一定数存在します。彼らに対して侵襲的な治療を行っても救命は難しく、治療の結果、生命の質が低下してしまうことが報告されています。そのため、救急外来で働く医師には終末期医療の知識を持つことが求められますが、その研修の機会は日本では限られています。アメリカには終末期医療の研修プログラムがいくつか存在します。これを日本に取り入れることを考えましたが、日米の文化や治療における差異が存在するため、適切な調整が必要と考えられます。今回の研究の目的は、日米間の終末期医療の違いを明らかにし、アメリカのトレーニングコースを日本向けに調整して導入することです。

ご自身の研究について

普段は救急医としての業務が中心です。臨床で疑問に思うことを研究テーマとして取り組んでいます。例として、新型コロナウィルス感染症の重症患者を多数診察してきました。新型コロナウィルス感染症は新興感染症であり、次から次へと新しい治療法が試される中、その中で「意識下腹臥位療法」という方法が注目されました。これは、新型コロナウィルス感染症で肺炎を引き起こした患者を腹ばいの姿勢にする治療法です。この方法には大きな効果が期待されていましたが、その有効性を示す論文は多くありませんでした。その背景として、新しい薬剤の開発や治療の変遷が影響していると考えられました。そこで、治療法が一定である私の施設と近隣の三次医療機関と連携し、この治療法の有効性を確認しました。

もともと救急医としての業務の中で、私自身が受けたくない治療を患者の命を救うために行うことに、内心での葛藤を感じていました。4年前に緩和ケアの研修を受け、実際にその手法を取り入れることで、患者やその家族の満足度が明らかに上がっていると実感しています。この重要性を他の医師たちにも理解してもらいたいと考え、そのための学びのニーズがあると感じました。より手軽に学べる方法を模索する中で、上記の研究を始めることとなりました。今後は、日本の終末期医療の問題点を詳細に抽出し、解決のための研究を進めていきたいです。また、過疎地域での遠隔診療の発展に向けて、積極的に協力していきたいと考えています。

普段、若手研究者として感じていること

正直なところ、医者としてはもう若手の部類ではありませんが、研究の世界での若手研究者の活躍を強く望んでいます。次世代の医師たちが研究に関心を持ち、積極的に取り組むよう、私自身も彼らをサポートしていきたいと考えています。

エディテージ・グラントに応募した理由

エディテージ・グラントの募集要項を拝見した際、その目的である「自身の研究によって社会にインパクトを与えたいと願う若手研究者を支援する」点に強く共感しました。私の研究テーマはまさにこの目的に合致していると考え、申請を決意しました。

エディテージ・グラントに応募してみて感じたこと

実際にいくつかの助成金プログラムを調査した結果、エディテージ・グラントは非常にユニークであり、その適用範囲や対象とするテーマが広いと感じました。多くの助成金は特定の研究分野やテーマに限定されていることが多い中、エディテージ・グラントはさまざまな分野の研究者が応募可能である点が魅力的でした。また、応募方法や提出する書類の手続きも他の助成金と比較して簡潔でわかりやすかったです。これらの特長から、エディテージ・グラントは自身の研究テーマを自由に展開できる、非常に幅広い助成金の対象であると感じました。

応募の際に最も苦労したのは、自身の情熱や考えを英語で正確に伝えることでした。工夫した点として、このグラントの選考に関わる方々の中には医療の専門家でない方もいるかと思い、医学用語を極力控えめにして、内容が一般の方にも理解しやすいように配慮しました。

受賞が決まり、初めて参加したエディテージ・グラントのセレモニーでしたが、異なる分野の研究者たちとの交流は、私にとってとても刺激的でした。それぞれの研究テーマや取り組みに触れることで、自分の研究への視野が広がり、新しい発想やアイディアを得ることができました。このような機会を提供してくれたエディテージ・グラントに感謝しています。

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この記事を書いた人

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