エディテージ・グラント2023にて大賞に選ばれた三好 裕之さんに、大賞に選ばれた喜びやご自身の研究について、グラントに応募して感じたことなどを語っていただきました。
三好 裕之さんプロフィール
Hiroyuki Miyoshi
東京大学の情報理工学系研究科で修士号を取得した後渡英し、Imperial College London数学科で博士号を取得。現在は東京大学大学院情報理工学系研究科で特任研究員を務める。日本語学者の妻と2人暮らし。趣味は運動で、日々の研究で行き詰まった時はジムで筋トレをしてリフレッシュしている。料理も好きで、最近はパン教室にも通っている。
受賞した研究内容について
超撥水表面を持つマイクロチャネルは流体の抵抗を減らすことが可能ですが、不安定性が指摘されています。この不安定性の原因の一つであるガスの拡散を評価する数学的モデリングを提案し、不安定性を簡単に計算する計算手法を複素関数論に基づくアプローチを用いて開発しました。複素関数論を用いることにより、ガスの拡散を具体的な式で記述することが可能になり、不安定性の評価手法を提案しました。
エディテージ・グラント2023大賞を受賞して
名誉のある賞を受賞することができ、非常に嬉しく思います。海外の研究者と共同研究を行うためには、積極的に国際学会に参加してコミュニケーションを取る必要があるため、本当に助かりました。助成金100万円は、ワシントンで開かれる流体力学の国際学会への参加、またボストンのタフツ大学へ短期で訪問し、共同研究を進めるための資金として使いたいと思います。円安の今、私費でこのようなスケジュールで渡航して共同研究を進めることは困難なので、100万円というお金を頂戴することができて本当に感謝しています。
ご自身の研究について
イギリスでは数学科に所属して、複素関数論の理論とその工学的応用について研究をしていました。情報理工学系研究科に移った現在も、実社会への応用の可能性が高い工学の諸問題に対して、複素関数論を用いてアプローチする研究を行っています。元々は、超撥水表面を持つチャネルにおける流れの速度を計算する手法に関して研究していたのですが、超撥水チャネルが不安定になる原因についても興味が湧き、不安定性も上記と同様の数学的アプローチを用いて解決できることに気づいたことが、現在の研究に興味を持ったきっかけとなっています。
これまで修士課程、博士課程と、多重連結領域における複素関数論の研究を行っていきましたが、今後はそれの工学応用を考えて理論の構築を行っていきたいと思っています。また、多重連結領域そのものも数学的には非常に面白く、数多くの発展が見込める分野であるため、より数学的な側面からもアプローチしていきたいと思っています。
普段、若手研究者として感じていること
研究者の置かれている立場は年々厳しくなっているという声を聞くことが多く、若手の研究者として将来を不安に思うこともあります。ただ、新しい理論を見つけた時のワクワク感は、どのようなことでも置き換えることはできません。日々研究を重ね、サポートしてくださる人たちに恩返しできるよう、また著名な先生に一歩でも近づけるよう、努力を重ねていきたいと思っています。
エディテージ・グラントに応募した理由
エディテージ・グラントは、X（旧Twitter）で情報が流れてきて知りました。昨年の12月頃から指導教官の教授と理論について話し合い、研究内容のディスカッションを進めるにつれて、理論の整合性が取れそうだということが分かってきました。そういった背景もあり、イギリスの大学院を卒業した後もこの研究を進めるため、エディテージ・グラントに応募しました。
エディテージ・グラントに応募してみて感じたこと
他の助成金に応募したことがないので比較はできませんが、英語で志望動機や研究内容を書く点、また面接なども英語で行う点は他の助成金プログラムとは異なるように思います。応募の際は、分野外の人に伝わるように、問題の背景を丁寧に描くことを心がけました。また、数学の言葉で記述される内容をできるだけ一般的な言葉遣いにするようにしました。エディテージ・グラントでは、応募から面接、セレモニーに至るまで、事務の方や先生が丁寧に対応してくださったのが印象に残っています。特にセレモニーに関しては、私はZoomでの参加だったのですが、問題なくセレモニーに参加ができるよう打ち合わせなどをしてくださり、当日も楽しむことができました。感謝しています。
