ほとんどの研究者は、研究の実施から教育、指導、そして研究成果の出版まで、さまざまな専門的なタスクをバランスよくこなさなければならないという課題に直面しています。論文を出版することは、学術的なキャリアを成長させるために不可欠です。新たな研究資金を確保し、将来の共同研究の機会を広げ、その分野の専門家としての評判を高めるのに役立ちます。「出版するか、消滅するか」ということを常に思い知らされるのはストレスになるかもしれませんが、出版に関する適切な慣行を理解し、それに従うことは重要です。
しかし、世界的なジャーナルには何百万もの論文が投稿されていますが、最初の挑戦で成功するのはほんのわずかです。有名ジャーナルに投稿された原稿の90~95%は査読段階を通過せず、およそ50~80%はリジェクトされると推定されています1。その原因の多くは、論文の準備と投稿のプロセスで避けられるはずのミスが原因です。そのため、科学ジャーナルに掲載される方法のニュアンスを理解することは、有名ジャーナルにアクセプトされることを目指す研究者にとって非常に重要です。
ここでは、エラーのない論文を提出し、出版される可能性を高めるのに役立つ、実証済みのステップをいくつかご紹介します。
1. 投稿に適したジャーナルを選ぶ
論文に適したジャーナルを見極めることで、アクセプトの可能性を大幅に高め、適切な読者に確実に届けることができます。とはいえ、2019年7月現在、査読付き英文学術ジャーナルは8万誌を超えるため2、見極めるのはなかなか困難です。適切なジャーナルを見極める最善の方法は、ジャーナルの目的、範囲、重点分野を理解することです。実際にそのジャーナルの要約や論文をいくつか読んで、ジャーナルが興味を持つような研究の種類を把握し、十分な情報に基づいて意思決定を行なうといいでしょう。
2. ジャーナルが指定する著者用ガイドラインに従う
デスクリジェクトの主な理由の1つは、論文がジャーナルの指定する構成や形式に準拠していないことです。例えば、推奨されている構成や形式、その他の要件に論文が合致していない場合、査読に回されることなく返却されてしまうことがあります。ほとんどのジャーナルは、標準的なIMRADの構造に従っており、序論から始まり、方法、結果、最後に考察セクションが続きます。その後、倫理声明、資金計画、謝辞、その他の補足資料を含める必要があります。そのため、投稿論文を執筆・準備する際には、ジャーナルのハウススタイルと投稿ガイドラインを遵守していることを確認し、アクセプトされる可能性を最大限に高めましょう。
3. タイトルと抄録は簡潔で魅力的なものにする
研究論文の最も重要な要素ともいわれるタイトルと抄録は、インパクトのあるものでなければなりません。これらは、ジャーナルの編集者や読者が最初に目にし、研究の妥当性や重要性を評価するための要素となります。したがって、タイトルは、あなたの研究が何に関するもので、なぜそれが読者の興味を引くのかを明確に伝えることができなければなりません。抄録は、研究の目的と範囲、取り組んでいる問題、使用した方法、主な発見と制限、そして最後に研究の意義を要約する必要があります。デジタルへの移行に伴い、より視覚的な要素へとシフトしているため、読者を引き付け、興味を持たせ、数分で研究結果を説明できるグラフィカルな抄録やビデオサマリーを検討するのも良いアイデアかもしれません。
4. 読みやすく要点を押さえたものにする
研究を興味深く、関連性があり、読みやすい方法で発表することも、良い出版習慣の1つです。読者は専門家かもしれませんが、あなたのトピックや研究分野についてあまり知識のない人である可能性が高いことを意識しておきましょう。そのため、論文を書く際には、繰り返しや曖昧さを排除し、研究や発見を正確に伝える、シンプルで明確な言葉を使用してください。編集者は、複雑な専門用語や誇張した表現などの不必要な使用を避けるよう勧めています。また、学術論文はフォーマルでプロフェッショナルなものですから、くだけた言葉やカジュアルな略語、軽蔑的、性差別的、人種差別的とみなされるような発言やコメントの使用は避けるべきです。論文を書く際には、決まった構造に従い、適切な見出しやサブタイトルをつけて、理解しやすいまとまりに分けて書くと効果的です。そうすることで、読者は論文を読みやすくなります。
5. 投稿前に慎重に編集と校正を行なう
英語は、学術出版およびサイエンスコミュニケーションの主要言語として長い間確立されてきました3。しかし、英語は複雑な言語であり、英語を母国語とする多くの人々でさえ、著名なジャーナルに掲載されるために求められる高い基準を満たすことができていません。そのため、英語を第二言語とし、世界中でコミュニケーションを図ったり、自分の仕事を共有したりすることにすでに苦労している人にとって、このプロセスはさらに困難になります。また、翻訳だけでなく、英文ジャーナルに投稿するための校正をプロのサービスに頼るという選択肢もあります。そのための時間やリソースがない場合は、研究者向けのオンラインAIライティングツールを探してみましょう。WordでもWebでも利用できるPaperpalは、学術文書に基づいてトレーニングされており、言語、文法、スペル、一貫性を向上させるだけでなく、より技術的な側面を確認できるオプションも提供しています。
6. 説得力のあるカバーレターを作成する
良い出版慣習のリストの最後の項目は、効果的なカバーレターです。このカバーレターでは、行なわれた研究を紹介し、その新規性、重要性や、なぜその研究がジャーナルの読者にとって興味深いのかを強調します。優れたカバーレターは、ジャーナル編集者が目を通す必要のある何百もの論文の中から、あなたの研究論文を際立たせることができます。うまくいけば、カバーレターは編集者の注意を引くだけでなく、投稿された研究が査読に値するものであり、掲載の可能性が高いことを確信させることができます。
エラーのない、きちんと構成された論文を準備し、査読を受け、最終的に出版するのは大変なことのように思えるかもしれませんが、達成することは可能です。科学ジャーナルに掲載されるにはどうしたらよいかと悩んでいる学生やキャリアの浅い研究者は、今回紹介した6つの重要なステップを踏めば、正しい方向に進み、掲載の可能性を最大限に高めることができるでしょう。
参考文献
- Harzing AW. How to avoid a desk-reject in seven steps. Harzing.com, May 2020. https://harzing.com/blog/2020/05/how-to-avoid-a-desk-reject-in-seven-steps
- Suiter AM, Sarli CC. Selecting a Journal for Publication: Criteria to Consider. Missouri Medicine, Nov-Dec 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6913840/
- Elnathan R. English is the language of science — but precision is tough as a non-native speaker. Nature, April 2021. https://www.nature.com/articles/d41586-021-00899-y