現在、人間を対象とする研究は繊細かつ複雑な問題となる可能性があり、倫理的な研究を実施するためには細心の注意を払う必要があります。とはいえ、昔から倫理面が配慮されていたわけではなく、数十年前までは研究者は被験者から同意を得る必要はありませんでした。そこに変化が起こったのは1947年のことで、医学研究における被験者の権利を保障する「ニュルンベルク綱領」がまとめられました。続いて、ベルモント報告書とヘルシンキ宣言が発表され、被験者の保護の必要性と倫理面に配慮した研究方針に従うことの重要性が強く打ち出されました。今日、人を対象とした生物医学的および科学的研究を実施するには、各国やその規制機関が定めた所定の倫理的研究原則を遵守する必要があります。この記事では、倫理的な研究方針の重要性と、研究者が人を対象とした研究を実施する際にグローバルスタンダードを満たすために留意すべき点について探っていきます。
倫理的研究方針の重要性
倫理的な研究方針は、研究者が被験者の脆弱性を悪用しないようにし、危害を防止するために必要な予防措置がすべて講じられていることを保証するものです。倫理的な研究方針に従うことは、研究者とその所属機関の評判と信頼性を守るためにも不可欠です。
人間の尊厳を守る
倫理的研究の基本原則は、人間の尊厳を守ることです。研究者は、参加者一人ひとりの自主性と個性を認め、敬意を持って接することが求められます。参加者を実験の被験者として非人間的に扱うのは簡単ですが、彼らは人間であり、同意、秘密保持、離脱する権利の確保など、敬意を持って扱われなければならないことに留意してください。
公平な選択を保証する
研究倫理は、個人の相互作用に頼るだけではなく、公正性と正義という組織的な問題にまで及びます。研究者は、潜在的なバイアスを考慮し、参加者の選択に包括性を確保することが期待されます。倫理的な研究の実施のためには、性別、人種、その他の特性による差別がないことが求められます。
参加者の幸福を守る
倫理的な研究実施のためには被験者の幸福を優先し、研究者は潜在的な危害を最小限に抑え、利益を最大化する義務があります。ここでは、厳格なリスク評価とリスク軽減戦略が極めて重要な要素となります。例えば、医学研究に実験的治療が含まれる場合、参加者の健康を守るために慎重なモニタリングと倫理的監視が必須です。
研究の正当性を保証する
倫理的な研究実施のためには、単に倫理だけの問題だけではなく、研究結果の質と妥当性にも関係します。倫理原則が守られれば、研究の信頼性が高まり、科学界や社会全体から信頼され、受け入れられる可能性が高くなります。
社会的信頼を構築する
懐疑論や誤った情報が蔓延する中、倫理的な研究実施への配慮を示すことは、研究者が一般市民や資金提供機関、規制当局からの信頼を獲得するのに役立ちます。この信頼は、科学的知識の継続的な進歩に不可欠です。
研究者のための9つの倫理的研究方針
研究者が倫理的な研究方針を遵守することは、その研究が科学的に正当であるだけでなく、社会的責任があることを保証するためにも極めて重要です。最終的な原動力は、参加者の幸福と権利を確保することであり、これは適切な計画によって達成できます。ここでは、研究者が人を対象とした倫理的研究を実施する際に留意し、従わなければならない重要な専門的、組織的、世界的基準をいくつか紹介します。
１．研究の倫理ガイドラインを理解する
研究者は、米国心理学会（APA）や世界医師会（WMA）などの組織が定めた研究の倫理ガイドラインを理解し、それに従う必要があります。研究者はまた、研究の倫理的側面を評価し、参加者が適切に保護されることを保証する治験審査委員会（Institutional Review Board）から、必要な承認を得なければなりません。
２．参加者の基準を定める
参加者を選ぶ基準は、非常に具体的かつ明確に定められている必要があり、基準に厳密に従わなくてはなりません。この倫理的な研究方針により、研究の結果に影響を与える可能性のある被験者の選択に偏りや逸脱がないことが保証されます。
３．募集と参加者の基準を明確にする
参加者を募集する際、研究者は研究プロセスが実験的なものであることを明確に述べなければなりません。研究者は、参加者が研究の性質と目的、参加のリスクと利点を明確に理解できるようにする必要があり、実験の肯定的な結果を不当に約束することは避けるべきです。参加者は、十分な情報を得た上で、自発的に研究に参加するかどうかを自由に決定できなければなりません。
４．インフォームド・コンセントを確保する
被験者は研究に参加する前に、倫理委員会または治験審査委員会によって審査・承認された正式な同意書に記入する必要があります。これは、研究チームと参加者の認識が一致していることを確認するためです。これらの同意書には、撤回の権利や、研究実験への参加に対する報酬の支払い方法に関する情報も含まれ、虚偽の情報が含まれていたり、同意を強制されることが無いようにしなければなりません。
５．詐称を避ける
研究者が、実施される実験の正確な性質を明らかにする立場にない場合や、被験者が研究の目的を認識していない場合があります。これは研究対象に伝わることで研究結果に影響を及ぼすと考えられる実験で起こるケースです。この場合、倫理的な研究方針としては、事前にこのことを述べ、同様のことを正当化する必要があります。
６．必要な予防措置をとる
実験には、身体的・心理的苦痛や不快感、被験者のプライバシーの侵害など、リスクの要素が含まれる場合があります。倫理的な研究方針を用いて実験を行う場合、研究者はあらゆる予防措置を講じ、参加者への潜在的な危害を軽減するよう努めなければなりません。
７．実験をモニターする
必要な予防措置を講じたとはいえ、実験期間中に被験者の状態をモニターすることは非常に重要です。ここで重要なのは、実験の進行状況を見ると同時に、参加者が何らかの危害や不快感に直面していないかどうかを確認し、可能な限り早い段階でこれらのリスクを軽減するための行動をとることです。
８．守秘義務を守る
被験者の機密性と匿名性を確保することは、重要な倫理的研究方針です。研究者は被験者のプライバシーを保護し、同意なしに個人情報が開示されないようにしなければなりません。これは、データを安全に保管して不正アクセスを防ぎ、仮名やコードを使用して参加者の身元を保護することで実現できます。
９．参加者の離脱の権利を認める
研究者は、人を対象とした実験には、離脱する権利という重要な条件が伴うことを認識する必要があります。この重要な倫理的研究原則により、被験者は研究プロセスのどの段階でも、離脱する権利が与えられます。被験者が研究から離脱することを選択した場合、研究者は、いかなる条件下でも参加を強制したり、圧力をかけたりすることはできないことを理解しておく必要があります。
最後に、倫理的な研究方針はオプションではないことを理解することが重要です。研究者は、研究デザインと方法論が健全であること、潜在的な利益相反が特定され適切に管理されていること、そして研究が公平かつ透明な方法で実施されていることを確認する必要があります。倫理的な研究方針と原則を受け入れることで、研究者は研究に参加する人々の権利と幸福を守りながら、知識の進歩に貢献することができるのです。
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