研究を行う最初のステップは、未開拓の研究分野を特定することです。研究分野で未開拓の分野を選べば、論文を発表できる可能性が高まります。しかし大きな問題は、どの研究課題を研究すべきかをどのように決めるかということです。研究者の中には、追求したい研究課題について明確な考えを持っている人もいます。しかし、特にキャリアの初期段階にある研究者は、独創的で革新的な研究テーマを絞り込まなければならないときに困惑します。そのための最善の方法は、その分野における既存の研究のギャップを特定すること、すなわちリサーチギャップを見つけることです。
この記事では、研究のベースとなる知識のギャップや未開拓分野を特定するためのヒントを紹介します。
リサーチギャップとは
まず、リサーチギャップとは何かを理解することから始めましょう。興味のあるテーマに関する論文や本を読んでいると、さらなる研究の余地があるにもかかわらず、他の研究者が手をつけていない分野があることに気づくかもしれません。言い換えれば、誰もこのようなアイデアを取り上げたり、取り組んだりしていないということです。リサーチギャップや文献ギャップとは、さらなる研究の余地がある、未調査または十分に調査されていない分野を指します。
独自のリサーチギャップを特定することがなぜ重要なのか
あなたが研究作業を完了し、その結果を発表したところ、別の研究者がすでに同様のことを発表していたことが判明したとします。それはどんなに悲惨なことでしょう。そのため、自分の研究分野において、これまで取り組まれてこなかった問題を見つける必要があります。適切なプロジェクトに資金とリソースを投資することができるだけでなく、研究結果が発表される可能性も高まります。
リサーチギャップを特定する際に直面する可能性のある課題
ギャップを見つけ、独創的で革新的なテーマを考え出すのは、様々な理由から難しい場合があります。以下は、選択した研究分野におけるリサーチギャップを特定する際に直面する可能性のある課題のリストです。
1. 膨大な情報を扱う労力:興味のある分野には、未解決の問題がたくさんあるかもしれません。そのため、見つけたリサーチギャップの多さに圧倒され、どれに焦点を当てるべきか混乱してしまうかもしれません。
2. 体系的にリサーチすることの難しさ:収集した情報を整理するのが難しいと感じる研究者もいるかもしれません。きちんと整理しておかないと、アイデアを簡単に見失ってしまいます。
3. 既成の常識に疑問を持つことへの躊躇:研究者の中には、その分野の既存の知識に疑問を呈する自信がなく、他の研究者が主張することに疑問を持つことをためらう人もいます。
リサーチギャップを特定する方法
革新的な研究テーマを思いつくにはどうすればいいのか、疑問に思うかもしれません。既存の知識のギャップを見つけるための明確なプロセスはありませんが、あなたの好奇心、創造力、想像力、判断力がギャップを特定するのに役立ちます。
ここでは、リサーチギャップを特定するための6つのヒントを紹介します。
1. 出版された文献からインスピレーションを得る
- 自分が最も好きなテーマに関する本や論文を読みましょう。これは、自分の分野の研究者による研究の深さを理解するのに役立つだけでなく、リサーチギャップにつながる疑問を持つ機会にもなります。コロンビア大学の経済学教授であるDon Davis氏は「自分の分野で書かれていることを読み、先行文献の貢献を認識しましょう。ただし、それに畏敬の念を抱いてはいけません。すべてに疑問を持ちましょう」と言っています。次のような質問を自分に投げかけてみましょう。
- この文献は、自分の研究、あるいはより広い分野にとってどのような意義があるのか?
- この文献は、自分がリサーチクエスチョンを立てる上でどう役立つのか?
- 著者の主張はさらに明確にする必要があるか?
- 著者が取り上げていない問題や疑問は何か?
- 考慮できる別の視点はあるか?
- 結果に影響を与えた可能性のある他の要因は何か?
- 使用されている方法や手順が時代遅れになっていないか、あるいはあなたの分野ではもはや有効でないと考えられていないか? より最新のアプローチで研究結果を検証する余地はないか?
- 研究論文を読む際には、著者が研究テーマの重要性や、研究を通じて発見し、埋めようとしたギャップを説明している「序論」のセクションに注目するとよいでしょう。また、著者が示したさらなる研究の方向性や提案にも目を向けると、大いに刺激を受けるでしょう。
- メタアナリシスやレビュー論文を読み、自分の好きな分野における長年の研究の発展や傾向について詳しく学びましょう。そうすることで、過去に研究された問題や、自分が興味深いと思うトピックに関するトレンドのクエリを知ることができます。
2. 指導教官に助けを求める
研究のアイデアを生み出すために、指導教官と自分の分野の問題や課題について話し合いましょう。自分のアイデアを明確にし、他の人が何を考え、どんな研究に取り組んでいるかを知ることで、自分の研究分野が明確になったり、自分のアプローチの間違いを発見できるかもしれません。研究対象としておもしろそうな問題があれば、指導教官に相談し、提案してもらいましょう。
3. デジタルツールを使って人気のトピックや最も引用されている研究論文を探す
自分の専門分野で流行しているクエリを把握するうえで、デジタルツールを使うと時間の節約になり、研究のギャップをより広範囲に探すことができるようになります。Essential Science Indicatorのようなウェブサイトは、その分野で最も引用されている論文を、その分野の新領域、影響力のある貢献者、出版物、国とともに特定することができ、どのトピックが重要視されているかを知るのに非常に役立ちます。また、Google Trendsを使って、自分の研究分野に関連する人気のある質問について詳しく知ることもできます。そうすることで、その研究分野で未開拓の領域を探しやすくなります。
4. 影響力のあるジャーナルのウェブサイトをチェックする
著名なジャーナルのウェブサイトには、「key concepts」と呼ばれるセクションがあることが多く、その分野の専門家がその分野の中心的なアイデアを紹介しています。このセクションに目を通すことで、多くの洞察を得たり、新しいアイデアを生み出したりすることができます。さらに、論文の参考文献のセクションにも目を通しておくと、そのトピックに関する重要なリソースにたどり着くことができます。
5. 疑問点をメモする
発表された文献を読んでいて、ふと頭をよぎった疑問はすべてメモしておきましょう。可能であれば、その疑問と根拠となるリソースを対応させておきます。ミシガン大学の行動科学・女性学・ジェンダー研究の図書館司書であるNadine Anderson氏は、「論文、本、章、学位論文など、何かを読むときはいつでも、著者があなたに語ったことや、あなたに浮かんだ疑問を記録しておきましょう」とアドバイスしています。これは、研究論文に意図しない剽窃がないことを確認するのにも役立つと言います。記録を残すためには表やグラフ、写真、ツールなども使用できます。これは、アイデアを研究課題に発展させる際や、論文を書く際にも、長期的に役立ちます。
6. それぞれの疑問を調査する
調査できそうな疑問のリストができたら、それらについて徹底的な調査する必要があります。あなたが抱いている疑問や質問について、より詳しく調べてください。他の研究者が同じような疑問を持っていないか、それに対する答えを見つけたかどうかを調べます。そうすることで、重複作業を避けることができます。
7. AIツールを活用する
R Discoveryは、先行研究を効率的に調査するのに役立つツールで、2億5,000万件以上の研究論文データベースを活用し、ユーザーの質問に関連する論文の概要と要約を提供します。また、参照された研究論文へのリンクが含まれており、ユーザーは必要に応じて詳細を確認することができます。
研究プロジェクトは多くの時間を費やすものなので、自分の興味と情熱をかき立てるものにしましょう。前例のない研究アイデアをまとめる際には、プロジェクトを完了するために利用できる時間や、資金、設備、インフラの有無など、その他の重要な側面も考慮してください。過大なプロジェクトは、時間やリソースの制約から達成するのが困難となりますし、不十分な調査しかできない研究は、資金提供委員会やジャーナル編集委員会の承認を得られないかもしれません。
卓越した研究課題や興味深い研究課題を選び出すための特別な方法はないため、この記事で紹介したヒントを参考にしながら、自分に合った方法を見つけてください。探していた特別な問題を見つけるまで、読み続け、疑問を出し続けましょう。
この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。