教科書を超えて～子供たちに科学を楽しく身近なものにする

2月28日は、学生時代の私にとって懐かしい思い出の一つです。インド出身である筆者の学校は、インドの他の地域と同じく、この日を「 ナショナル・サイエンス・デー」として祝っていました。当日の朝礼は、私たち全員が感嘆するような楽しい科学実験でいっぱいでした。重曹と酢を混ぜて火山の噴火を起こしたり、虫眼鏡で太陽光を集光して木片を燃やしたり、タマネギの細胞を顕微鏡で見たりすることに魅了されたのを覚えています。

今にして思えば、これらの経験が私の科学への興味を刺激するのに大きく貢献したと思います。私は生化学の修士号を取得し、その後4年間研究畑を歩みました。研究者として、研究所が企画した公開日で、学校の子供たちに自分の研究について話す機会がよくありました。このとき、私は自分の持つ力の大きさに気づきました。幼い子供たちへのこうした紹介は、子どもたちの科学への関心を高めるか、あるいは失わせるかの重要なターニングポイントになり得るということを。子供たちに科学をより効果的に伝えるためには、まず、子供たちに科学を伝えることの重要性を理解する必要があることに気づいたのです。

なぜ子供たちに科学を伝えるのか

科学的知識を子供たちと共有することは、子供たちの生活のさまざまな側面にプラスの影響を与える可能性があります。科学的結果やその達成方法を伝えることは、子供たちの好奇心や創造力を高めることができます。これは、分析的思考や批判的・論理的な推論能力を発達させ、最終的には自信を促進するのに役立ちます。こうした重要なライフスキルを向上させるだけでなく、子供たちが将来科学の分野で活躍するための準備を整え、次世代の科学者たちにインスピレーションを与えることもできます。

また、子どもたちへの明らかなプラス効果もさることながら、科学について伝えることで、自分がより良い研究者になれることに気づきました。私の教授の一人は、「子供たちに説明できないようでは、自分の研究を十分に理解しているとはいえない」とよく言っていました。その彼の言葉は私の心に今もずっと残っています。複雑な概念を分解して子供に伝えることで、自分の研究をより深く理解することができ、研究課題に取り組む方法について斬新なアイデアを得ることができました。また、子どもたちは質問をするのが大好きです。子供たちから質問を受けることで、立ち止まって考え、仕事の流れを練り直すようになりました。

子供たちに科学に興味を持ってもらう

子供たちの科学への興味を高めるために、私は科学の世界についてもっと知りたいと思わせるような方法を採用しました。私が子どもたちに効果的に科学を伝えるのに役立った方法には、次のようなものがあります。

・参加者を引き込む
従来のスライドショーによる講義やポスター発表をスキップして、ライブ・デモンストレーションを行うことは、大きな効果があります。私が子供の頃の「ナショナル・サイエンス・デー」の朝礼で最も印象に残っているのは、先輩たちが行った実験の映像です。これらの実験の背後にある科学について知ったのは後になってからですが、何が起こったのかを見たことが私の心に残りました。また、高校の生物の先生が、脳の解剖学の授業のために動物の脳を教室に持ってきてくれたことも鮮明に覚えています。今日に至るまで私が脳のさまざまな部位を覚えているのは、その先生の「見せて教える」という授業のアプローチのおかげです。

・分解して単純化する
子供たちは、科学的な問題や研究方法について、細かいことまで学ぶ必要はありません。不必要な情報や科学的な専門用語に触れると、興味を失う可能性が高くなります。それよりも、子供たちが興味を持ちそうな、つまり彼らに「すごい！」と思わせるような重要な内容に焦点を当てましょう。

とはいえ、コンセプトを単純化しすぎたり、科学的な説明が抜け落ちてしまわないようにすることも重要です。

私は、高校時代に物理の授業に悩まされたことを覚えています。同じシラバスを子どもたちに教える機会があったとき、私は問題を解くためにその概念を使う前に、必ず理論を単純化して説明するようにしました。このように科学の本質を失うことなく単純化することで、子供たちは科学に対する恐怖心を克服し、科学を怖がる必要はないのだと気づかせることができるのだと実感しました。

・アナロジーを使う
子供たちがよく知っているものに題材を当てはめると、つながりを築くのに役立ちます。親しみやすい例を挙げることで、子供たちは科学的メッセージをより理解しやすくなるのです。例えば、昆虫の受粉媒介者を研究している栄養生態学者のRachael Bonoanは、ミツバチの採餌行動（ミツバチが餌を探すために巣から飛び出すこと）を食料品店への買い物に例えて子供たちに説明しています。

・感覚を働かせる
子供たちはさまざまな方法で学びます。誰もが聴覚や視覚で学ぶわけではありません。例えば、前述したBonoan博士はあらゆる感覚を混ぜ合わせ、アウトリーチの実践に子供たちを参加させています。

• 触覚：子供たちに養蜂家の帽子や手袋を試着させます。
• 味覚：さまざまな種類の蜂蜜を試食し、植物の多様性を実証します。
• 嗅覚：バナナの匂いを嗅いで、ミツバチがどのように危険を知らせるかを学びます。
• 視覚：蜂箱を設置し、ミツバチが見える色の範囲を示します。
• 聴覚：事前に録音したミツバチの鳴き声を聞き、彼らのコミュニケーションを理解します。

・手を動かす
実際に手を動かして実験を行うことは、子供たちが楽しく効果的に科学を学ぶのに役立ちます。体験型の学習は、脳が情報をよりよく理解し、保持するのに役立つ神経経路に働きかけます。私は、水が植物の茎の中を上へ上へと流れる仕組みを理解するための実験を行ったことをはっきりと覚えています。青い色の水に白い花の茎を浸し、数時間後に水が上部に達したとき、花が青くなっているのを見ました。

・笑わせる
子供たちは親しみやすい大人が大好きです。彼らが怖がらないように、子供たちのレベルに合わせてコミュニケーションをとることが大切です。楽しい逸話を話したり、ジョークを言ったりすることで、雰囲気が和らぎ、子供たちの関心が高まり、最終的には科学をより効果的に理解できるようになります。

まとめ

個人的には、自分の研究を子供たちに伝えることで、自分のプロジェクトをより深く理解できるようになり、それと同時に、子供たちに科学がもたらす不思議に興味を持ってもらうことができて満足しています。また、学校でのデモンストレーションを通して蒔かれた科学への興味の種は、長年にわたって多くの先生方や教授によって水を与えられ、育てられるものだと実感しています。

子供たちの科学への興味の火種は、しばしば学校レベルで点火しますが、研究者は、自分の研究を魅力的で楽しい方法で伝えることによって、その炎が消えるのを防ぐことができるのです。

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この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。