擬人化(Anthropomorphism):アカデミック・ライティングにおける定義と使用法

Anthropomorphism Definition and uses in academic writing

著者は効果を上げるために様々な文学的手法(パラドックスなど)をよく使用します。そのような手法のひとつが擬人化(Anthropomorphism)です。

擬人化(Anthropomorphism)とは何か?

擬人化(Anthropomorphism)とは、「人間以外の物や事象を人間の特徴に基づいて解釈すること」と定義されています。言い換えれば、怒り、嫉妬、悪意などの人間の特徴を動物、無生物、自然現象などに当てはめることです。

学術論文における擬人化

例えば、実験で期待通りに動かないネズミを「naughty(やんちゃ)」と呼ぶなど、人間以外を人間のように扱うと、多くの混乱を招くことになります。APAマニュアルなどのスタイルガイドで擬人化を避けるよう推奨しているのはそのためです。

このことをさらに理解するために、以下の例を見てみましょう。

  • 避けるべき:husband and wife rats(夫婦のネズミ)
  • 望ましい:male-female rat dyads(雌雄のネズミのペア)

「husband(夫)」と「wife(妻)」という言葉は人間の夫婦に対して使われるもので、それをネズミに当てはめるのは擬人化の一種です。

  • 避けるべき:These findings conclude that…(これらの知見は、…と結論づけている)
  • 望ましい:On the basis of these findings, we conclude that …(これらの知見に基づき、我々は…と結論づける)

「findings(知見)」は何かを結論づけることはできません。研究者は調査結果に基づいて何かを結論づけることができます。

  • 避けるべき:As a result of growing discontent with the new labor regulations, numerous factories in southern Panchpakwanaland went on strike.(新しい労働規制への不満が高まった結果、パンチパクワナランド南部の多数の工場がストライキに突入した)
  • 望ましい:As a result of growing discontent with the new labor regulations, workers in numerous factories in southern Panchpakwanaland went on strike.(新しい労働規制への不満が高まった結果、パンチパクワナランド南部の多数の工場の労働者がストライキに突入した)

工場がストライキを起こすことはできません。工場で働く人々はストライキを起こすことができます。

  • 避けるべき:MRI confirmed abnormalities in the frontal lobe in 87 patients.(MRIにより87 人の患者の前頭葉に異常が確認された)
  • 望ましい:MRI data confirmed abnormalities in the frontal lobe in 87 patients.(MRIのデータにより87 人の患者の前頭葉に異常が確認された)

MRI(技術)はそれ自体では何かを確認することはできません。MRI検査の結果から何かが確認されます。

AnthropomorphismとPersonification

AnthropomorphismとPersonificationはどちらも日本語訳すると「擬人化」ですが、Personificationを使う場合、何かに人間的な特徴を与えることになります。対照的に、Anthropomorphismは、何かが人間的な行動をとることができると想定することです。

  • Personification:the wind is howling(風がわめいている)
  • Anthropomorphism:『ジャングル・ブック』のバルーとバギーラ、『アニマルファーム』のナポレオンとボクサーのようなキャラクター

擬人化は、場合によっては意図的に使用することでメリットが得られることもありますが、全体としては、科学的な出版においては、擬人化は避けたほうがいいでしょう。これは、著者のアイデアと方法、そして結論と提言の明確かつ正確な帰属を確認するためです。


この記事はEditage Insights 英語版に掲載されていた記事の翻訳です。Editage Insights ではこの他にも学術研究と学術出版に関する膨大な無料リソースを提供していますのでこちらもぜひご覧ください。

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この記事を書いた人

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