確証バイアス:科学における客観性への忍び寄る攻撃

Confirmation Bias A Sneaky Attack on Objectivity in Science

研究は本来、客観的であるべきです。しかし、研究者を含め、私たちの心にはバイアス(偏見)が潜んでいます。確証バイアスとは、認知バイアスの一種で、人々(科学者を含む)が以前から抱いていた信念に合致する証拠を探し出し、解釈するように導くものです。

この記事では、確証バイアスが研究においてどのようなものなのか、また、科学者がそれを防止・軽減するために取ることのできる手段を探ります。

確証バイアス:私たちは知っていることを知っている

確証バイアスは、研究者が自分の既存の信念や仮説を確認する情報を無意識に優先し、それと矛盾する証拠を無視したり軽視したりする場合に発生します。これは、文献のレビュー、データ分析の実行、研究論文の執筆中に起こる可能性があります。

確証バイアスが抑制されないと、誤った結論や歪んだ解釈が生じ、最終的には質の低い研究や科学リソースの無駄遣いにつながります。

DarleyとGross(1983)は、確証バイアスがどのように働くかを説明する2段階のモデルを提案しました。まず、誰かが推測をしたり、アイディアを出したりします。次に、彼らは事実に目を向けますが、それは自分たちの考えが正しいように見える方法で行われます。そうすることで、元のアイディアをさらに信じるようになります。自分たちの正しさを証明するために事実を利用しているようなものです。しかし、事実が十分でなければ、バイアスは発生しません。基本的に、DarleyとGrossは、確証バイアスを持つ人は、トップダウンの信念を確認または検証するためにボトムアップの証拠を使うと信じています。

研究における確証バイアスの例 

A博士は、慢性腰痛を軽減するための新しい運動ベースの介入を研究しています。A博士はすでに、過体重や肥満の人はもっと運動する必要があると考えています。そのため、参加者の中に筋肉痛などの介入による副作用を報告する人がいても、A博士はそれが参加者の過体重や肥満によるものだと仮定し、それ以上調査を行ないません。

別の研究で、B博士は脱法ドラッグの使用が認知能力に及ぼす影響について文献レビューを行なっています。B博士はすでに脱法ドラッグに不信感を抱いています。そのため、脱法ドラッグの使用が認知能力を向上させるという研究に出会ったとき、B博士はこれらの研究に欠陥がないか(例えば、統計的検出力の報告がない、交絡因子のコントロールをしていないなど)、非常に注意深く精査する傾向があります。

確証バイアスはどのように発生するのか?

確証バイアスは3つの異なる方法で研究に現れる可能性があります。

・情報の偏った検索:これは、研究者がすでに信じていることを裏付ける情報のみを探す場合に発生します。自分の信念に反する事実を無視したり、見過ごしたりするかもしれません。これは、文献レビューの際や、定性データからテーマを特定する際に発生する可能性があります。

・情報の偏った解釈:ある研究者が、異なる考えを支持しうる結果を得たにもかかわらず、すでに信じていることに適合するようにその結果を解釈してしまうことです。例えば、避妊に反対する研究者であれば、たとえ相関係数が非常に弱いとしても、経口避妊薬の使用とがんの間に見つかった「統計的に有意な」関係を強調するかもしれません。避妊推進派の研究者であれば同じ結果でも、結論は出ておらずさらなる研究が必要だと強調するかもしれません。

・情報の偏った想起:これは、たとえそれが正確でなくても、自分の信念を裏付けるような形で物事を記憶してしまう場合に起こります。過去の出来事や経験を、自分がすでに真実だと思っていることと一致する形で思い出すかもしれません。この種のバイアスは、参加者(被験者)の記憶に依存した研究で発生することがあります。

確証バイアスを軽減・回避するには?

Wilsonら(1996)は、バイアスを修正するために必要な4つのことを述べています。第一に、人は自分が行っているどんな作業にもバイアスがあることを知らなければなりません。第二に、バイアスを修正したいと思う必要があります。第三に、バイアスの大きさとその方向を理解し、正しい方法で修正できるようにする必要があります。第四に、バイアスを修正できるほど自分の考えをコントロールできなければなりません。しかし、バイアスを知り、それを修正したいと思ったとしても、バイアスは完全にはなくならない可能性があります。

研究環境において、確証バイアスに対処するには以下のようなことが必要となります。

  1. 認識:確証バイアスの存在を認識することが、確証バイアスと闘う第一歩です。研究者は、このバイアスの影響を受けやすいことを認識し、研究プロセスを通じて常に警戒し続けなければなりません。
  2. 多様な視点:多様な研究チームを作ることは、確証バイアスを軽減するのに役立ちます。異なる視点により、証拠の批判的な評価が促進されます。
  3. ブラインド化:ブラインド化技術により、研究者が期待に影響されるのを防ぐことができます。データから識別子を取り除いたり、分析前にデータをコード化したりすることで、研究者は結果の解釈に対する先入観の影響を最小限に抑えることができます。
  4. プロトコル:研究プロトコルが事前に確立(公開)されていれば、研究者は特定の結果を無視したり軽視したりする可能性が低くなります。

まとめ

確証バイアスは、研究者が研究プロセスにおいて客観性を保つことを困難にします。しかし、確証バイアスのメカニズムを理解し、その影響を軽減するための戦略を実施することで、研究者は確証バイアスを防ぎ、研究結果の確実性と信頼性を高めるために多くのことを行なうことができます。


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この記事を書いた人

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