メディアセミナー「進化する日本の研究シーンAI利用と海外潮流から見る国際競争力向上へのスリーステップ」が開催されました!

去る2024年4月25日に、カクタス・コミュニケーションズ主催によるメディアセミナー「進化する日本の研究シーンAI利用と海外潮流から見る国際競争力向上へのスリーステップ」が開催されました。

日々、日本の国際競争力低迷が取り沙汰されている中、研究領域(大学や公的研究機関における研究職領域)においても論文競争力は20年前の4位から現在は13位と苦戦しています。このセミナーでは、日本の研究領域における環境の変化と、AIの社会浸透にともなう研究・論文の変化について、カクタスが自社メールマガジン会員、外部組織に所属する研究者計452名を対象に行った「AIツール利用に関するアンケート」の調査結果を紹介しながら、カクタス代表の湯浅誠と、ゲストに慶應義塾大学医学部 特任講師 早野元詞氏をお迎えし、トークセッションを行いました。

トークセッション「AIでどう変わる?国内研究シーンに期待される変化と論文の役割」

■①日本の国際競争力や研究力の低迷と注目分野

湯浅
「現状、日本の国際競争力のランキングは下がっていて、経済成長、人口減少問題など様々な要因が考えられる。そんな中で、研究開発費への投資額は、他国と比較すると下がっていて、大学や研究現場も実感している」

「日本の学術論文数は減っているわけではないが他国と比べると伸び悩んでおり、Top10%の引用論文数(注目度の高い論文数)のランキングは顕著に下がっている」

早野氏
「研究環境で改善すべきと感じるのは、特に若い研究員が研究する時間がないこと。米国の大学では十分な事務員の数を確保しているので、研究者の研究時間は確保されている。そのため、執筆される論文の質が高くなる傾向にあると感じる」

「大学の研究予算について、2007年時点ではスタンフォード大学と慶応義塾大学の研究予算は同程度だったが、今では日本国内の大学の多くは他国の大学に比べて予算が少ない状況になっている。このような事象が続くと、国際的な問題(例:コロナ流行など)が起こった際、国内の臨床実験などが十分にできないこととなり、解決策を出すのに時間がかかり、結果出遅れてしまう」

「バイオベンチャーやディープテック領域において、世の中の課題を解決するような大学発ベンチャーが増えることで大学の存在意義がさらに高まると考える。大学の研究環境で見つかったコロナワクチンが役立ったのも一例として言える」

■②論文の書き手

早野氏
「誰に向けて論文を書くのかという視点が強まってくる。論文があることで投資家に投資してもらいやすくなる」

「米国では博士号を取得した方の就職先は、大学ではなく企業を選ぶケースもあり、研究を大学ではなく、企業側で行う方も増えている」

「日本からも良質な論文が数多く出ているが、“英語の質”が問題となり引用されないことがある。英語力を上げるには、英語を勉強するかAI等を活用するかだと思う。日本は研究費が少ないので、英語専門のライターを雇う資金がない」

湯浅
「書き手と読み手が多様化している。書き手は研究者だけでなく、バイオベンチャー、ディープテック系スタートアップ企業など。読み手も研究者だけでなく、投資系ファンドや政府、企業に勤める方にも広がってきている」

■③AIは日本の研究力改善の救世主となるか

湯浅
「個人的にはAIの使用目的は欲しい情報を抜き出すことにあり、アイディアを見出すのは人間の役割でないかと考えている」

「研究者やAIがそれぞれできることを理解して、AIはあくまでも壁打ち相手として使うことが良いのではと感じている」

早野氏
「研究の中で、AIを組み合わせて研究を進めることや、論文そのものに独創性やアイディアを埋め込むことが求められてくる」

「研究の価値や役割、AIの性能が日々変わる中で、民間側はAIに対して理解力を高めることが必要」

左:湯浅 右:早野氏
左:湯浅 右:早野氏
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この記事を書いた人

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