エディテージ・グラント2024選考委員インタビュー-原山 優子先生

エディテージ・グラントは、自身の研究によって社会にインパクトを与えたいと願う若手研究者に、経済的支援、メンターシップ、キャリアガイドを提供することを目的とした、エディテージの若手研究者支援プログラムです。昨年に引き続き、エディテージ・グラント2024でも選考委員を務めていただく原山 優子先生に、昨年の印象や、今回のグラントに期待すること、選考で注目したいポイントなどをうかがいました。

原山 優子
東北大学大学院工学研究科名誉教授、ISCフェロー

Subject area
経済学 / 教育学 / 工学 / 科学技術政策 / 産学連携 / 高等教育

Researchmap link
https://council.science/ja/profile/yuko-harayama/

1996 年にジュネーブにて教育学博士号取得。1997 年に同大学経済学博士号取得。ジュネーブ大学経済学部助教授、経済産業研究所研究員を経て、2002 年より東北大学大学院工学研究科教授に就任。総合科学技術会議非常勤議員、科学技術振興機構特任フェロー、経済協力開発機構(OECD)の科学技術産業局次長を務め、2013年~2018 年総合科学技術・イノベーション会議常勤議員。理化学研究所の元理事で、国際関係、若手研究者育成、ダイバーシティを担当。東北大学名誉教授。2014年にニューシャテル大学から名誉博士号を授与。2011 年フランス政府レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ受賞。

若手研究者のエキサイティングな研究を応援したい

原山先生には前回に引き続きエディテージ・グラントの選考委員をお願いしていますが、前回のグラントを振り返って、印象に残っていることはありますか?

原山 最近、日本の研究環境が良くないと言われることが多いのですが、前回のグラントの選考をして、選ばれた方はもちろん選ばれなかった方の中にもエキサイティングな研究をしている方がたくさんいました。そういった方たちに光を当て、より活動しやすくすることが大事だと私は考えていて、エディテージ・グラントはそれに最適なイベントだと思いました。研究者の研究に対するパッションを感じることができるのがいいですね。

セレモニーにも出席させていただきましたが、みんなで一緒に祝う感じがとてもよかったと思います。もちろん賞の格式の高さを演出するためにフォーマルな式をするのもいいのですが、賞を授与して終わりではなく、次にどんなことをしようかと参加者がみんなで考えられる雰囲気があるようなイベントもいいですね。エディテージ・グラントのセレモニーはまさにそんな感じで、出席して終わりではなく、他の人がどんな研究をしているかを知り、そこでお互いにインスパイアされるものがあって次につながっていく、非常に楽しい会でした。そのあたりも踏まえて、今回も選考の際はなるべくいろいろな分野の方を選びたいと思っています。

セレモニーに出席した受賞者からも、アットホームな雰囲気が好評だったようです。さて、今年もグラントの募集がスタートしていますが、前回のグラントと比較して、今回のグラントでの期待や変化はありますか?

原山 きっと何回か重ねていくと、変化したほうがいいところも出てくると思うのですが、今は特に変えることなく、まずはこのグラントについてより多くの方に知っていただくフェーズかと思っています。また、もしかすると前回の結果を見て、自分にはちょっと手の届かないものと感じている方もいるかもしれませんが、決まった形は無いので、まずは様々なアイデアでチャレンジして頂きたいと思います。そのためにもエディテージ・グラントがどのようなものなのかを皆さんに知っていただき、その認知度が高まっていくことに期待したいですね。

若手研究者の皆さんは、研究資金を獲得するためにいろいろと動いていると思いますが、これだけ自由度があって、自分の想いをエッセイという形で書けるようなものはなかなかないと思います。自分の研究が社会に対してどんな貢献をする可能性があるのか、そういった視点で考えるのはすごく大切なことですし、そのことがすごく良いトレーニングにもなりますので、エディテージ・グラントにはぜひこの形をしばらく取り続けていってほしいですね。

研究の“伸びしろ”に注目。熱い想いを伝えてほしい

貴重なご意見をありがとうございます。原山先生が選考で注目したいポイントや重視する要素は何ですか?

原山 若手研究者については、“伸びしろ”を見る必要があると思っています。論文を出した実績がないからといって、その人にポテンシャルがないわけではありません。私は「スローサイエンス」という概念を提唱していますが、すぐに結果を出せる研究ももちろんいいのだけれど、もっと時間をかけて深堀してチャレンジすべきものもたくさんあるような気がしています。普段やっている研究とはちょっと軸がずれるけれど、やる意義があるものはどんどんチャレンジしてほしいですね。実際にはやらないにしても、頭の体操的にそういうことを考えるとか、ひとりで考えるのではなくていろいろな研究分野の人と議論しながら考えるとか、すごく大事なことだと思います。実現可能か不可能化は置いておいて、今まで何も研究されていないけれど、やったらおもしろいんじゃないか。エディテージ・グラントでは、若手研究者の皆さんの「チャレンジしたい」という気持ちが伝わってくることを期待しています。そしてこのグラントをきっかけにした研究が、何年か経ったときに「こんなふうになりました!」とフィードバックしていただけたら、とてもうれしいですね。

そう考えると、エディテージ・グラントを長く続けていって、受賞者のその後を見守っていきたいですね。最後に原山先生のほうから若手研究者の皆さんにメッセージをお願いできますか?

原山 研究を仕事にしていると、いろいろな条件に縛られてしまうことも多いと思います。プロジェクトの期限やファンディングの条件、大学からの要求など、枠組みに囚われてしまいがちですが、どこか自分の中で「サイエンティストとしてこれがやりたい!」というのは持っていてほしいですね。それを持たずに仕事として研究しているだけだと、意味付けが希薄になってしまうような気がします。自分がやりたいことの火を消さずに、ぜひ育て続けてください。いろいろな研究分野の人と話したり、リソースを集めたり、ネットワークを作ったり。それをエディテージ・グラントが応援できたら素敵ですね。

エディテージ・グラント2024
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この記事を書いた人

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