優れたアブストラクトを書くためのヒント6選

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アブストラクトとは

研究論文におけるアブストラクト(abstract)は、150~250ワード程度で書かれた論文のショートサマリーです(分野によって、サマリー(summary)やシノプシス(synopsis)などと呼ばれることもあります)。アブストラクトは、タイトルや著者名と共に読者が一番最初に目にする部分(かつ無料公開される部分)であり、言うなれば、映画の予告編のようなものです。

アブストラクトはなぜ重要か

「読者」の中には、論文の価値を査定するジャーナル編集者・査読者だけでなく、自分の研究のための情報収集などを目的とする研究者、純粋な知的好奇心で論文を読む人々などが含まれます。それぞれの読者の目的は異なりますが、共通しているのは、できる限り効率的に論文の内容を把握し、その先を読むかどうかを速やかに判断するために、まずはアブストラクトを読むケースが多いという点です。したがって、より多くの人々に研究成果を届けるという使命を持つ研究者にとって、アブストラクトはきわめて重要な役割を担っているのです。

たとえば、膨大な数の投稿論文の処理に追われているジャーナル編集者は、アブストラクトを基に論文をスクリーニングします。アブストラクトが基準に達していないと判断すれば、その時点でリジェクトしてしまうこともあるでしょう。また、膨大な数の論文の中から効率的に必要な情報だけを収集したい研究者は、まずはアブストラクトを読んで自分に必要な情報が含まれていそうか否かを判断します。必要な情報が含まれていそうだと判断した場合は、論文全体を読み、その論文を新たな知見を生み出すきっかけとして活用していくでしょう。

このように、アブストラクトは論文の重要な要素ですが、アブストラクトの書き方、あるいは優れたアブストラクトの書き方を意識することなく、単なる論文の要約と考えて書いてしまう研究者も多いのではないでしょうか。この記事では、アブストラクトの基本的な書き方も含めて、優れたアブストラクトを書くためのヒントを紹介します。

優れたアブストラクトを書くためのヒント

1.アブストラクトを書くタイミング:
アブストラクトは論文を書き終えてから書くようにしましょう。アブストラクトは、限られた文章の中で簡潔明瞭に論文の魅力を読者に伝えられるものでなければなりません。すでにストーリーが完成している論文から核となる要素だけを抽出することで、流れがスムーズで一貫性のあるアブストラクトを効率的に書くことができるでしょう。

2.構成とバランス:
論文のアブストラクトの書き方は分野によって異なることもありますが、自然科学系の論文のアブストラクトの構成は、論文と同じくIMRAD形式に則っている場合がほとんどです(ジャーナルによっては各セクションに見出しをつける場合もあります)。また、各セクションの最適なバランスは、イントロダクション25%、方法25%、結果35%、結論15%と言われています(ワード数に換算すると、それぞれ40~60ワード、40~60ワード、50~90ワード、20~40ワード程度)。

3.含めるべき情報:
限られたワード数で研究結果をすべて伝えることはできません。したがって、すべての結果を羅列するのではなく、とくに重要なもの、意義のあるものだけを抜き出すようにしましょう。また、アブストラクトは論文の要約なので、本文に書いていない情報を含めることはできません。本文に書いてある情報だけを抜き出しましょう。

4.略語・頭字語の扱い:
一般的に浸透しているものか、アブストラクトで何度も使用するものでない限り、略語・頭字語の使用は避けましょう。何度も登場する用語には初出時に正式名称や意味を表記・定義し、それ以降の使用時に略語を用いるとよいでしょう。また、アブストラクトで定義した略語でも、本文での初出時には改めて正式名称を表記する必要があります。

5.図表・参考文献:
これらの要素は詳細情報であり、ワード数が限られるアブストラクトの中に組み込む必要はありません。アブストラクトの役割はあくまで、本文中のこれらの詳細情報を見たい、読みたいと読者に思わせることです。

6.長さ:
何度も述べているように、アブストラクトには長さの制限があり、150~250ワード程度で収めなければなりません。したがって、冗長な表現は避け、簡潔明瞭に論文を要約しましょう。ただし、長さは分野やジャーナルによっても異なるので、ターゲットジャーナルのガイドラインで制限ワード数を確認すると同時に、先述した略語・頭字語の扱いやフォーマットなども併せてチェックするようにしましょう。

以下の記事では、アブストラクトの種類や分野による書き方の違いなどが詳しく解説されているので、ぜひ参考にしてみてください:

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この記事を書いた人

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